第五十四話 ログハウスを拠点とした貿易開始
ログハウスを建てた俺は、ひと息ついたのも束の間、早速作戦を開始する。
その中身は、あの狐ちゃんがいったように、収入源の確保。
それはズバリ、貿易だ。
借金30億円を返済するには、やっぱり何かしら大きく稼ぐ仕組みが必要だよな……といろいろ考えた末、エルフ村と洞窟村を行き来する行商人になるの。
ウルフが「ガウ!」と元気よく吠え、ゴーレムは変わらず無言でドッシリ佇む。
うん、どちらもやる気があるのかないのか分からんけど、とりあえず賛成ってことでいいよな!
それぞれの村には特産品がある。
そこに俺のDIYと地球アイテムを掛け合わせれば、魅力的な商品を作れそうじゃん? かつて地球で培った(?)工作スキルや、【ショップ】で買った加工道具なんかもあるから、割と本格的にできそうだ。
「よし、具体的には洞窟村とエルフ村の双方から素材を仕入れて、新しい加工品を作る……うん、ビジネスとして面白いんじゃね?」
ウルフは「ガウガウ!」としっぽブンブン。ゴーレムは相変わらずモノアイを光らせてるだけだけど、なんとなく「いいんじゃない?」って言ってる気がする。
洞窟村のドラゴンたちは偏食が多いし、しっぽミートだらけの食生活っぽいから、そこをどうにか改善できれば買ってくれるかも。
エルフ村特産のハーブや穀物を組み合わせて、新しい加工食品を作ってみることにする。
「しっぽミートとハーブを混ぜたソーセージ……いや、スモークミートがいいかも?」
ログハウスの隣で、【ショップ】で買った地球式の燻製器を持ち出し、ドラゴン向けにスモーク加工を施す。
ウルフが「ガウッ!」と煙に反応してクシャミしてるが、慣れてくれ……これが美味しくなる秘訣なんだ。
「おお、いい香り!」
よし、これで行こう!
一方、エルフ村には洞窟村で見つけた石材や彫刻を運び込むことにした。
洞窟村には大理石っぽい素材があるし、ドラゴンの彫刻技術で作ったオブジェもあるから、それを少しDIYで磨いたり装飾を足せば、一気に高級感が増すんじゃないかって算段だ。
「この彫刻、エルフ的にどうかな? なんか森っぽい装飾を施せばウケそうじゃね?」
少しだけ持ってきていた彫刻のいくつかを、見ながら検証する。
ウルフが「ガウガウ!」と首を傾げて、ゴーレムは重い石材をズシッと運んでくれる。
俺は【ショップ】で買った研磨用具を使ってキュイーンと磨き、隙間に木彫りの小花モチーフをはめ込む。ちょっとアートっぽくなったぞ!
実は俺は絶対に行商人には向いている。
なぜかというと、「ショップ」の収納機能を使えば、いくらでも持てる。
労働力が飛躍的に軽減されるし、行商人としてはめちゃ有利だ。
「大きな石材もスモークミートも、何でも収納……最強か」
俺はウルフをなでつつ、ゴーレムを横目で見て「なんかごめん、せっかくお前運ぶ係なのに。ま、でも広い世界を移動するには楽な方がいいよな」と心の中でつぶやく。
ウルフは「ガウガウ!」と尻尾を振り、ゴーレムはモノアイをちょっと青く光らせている(気がする)ので、多分許してくれてるんだろう。
こうして、両村の需要と供給を把握しながら俺の商売は回り始めた。
エルフ村に足りないものは洞窟村から、洞窟村に足りないものはエルフ村から仕入れて加工し、再び卸す――自給自足するだけでなく、仲介ビジネスもやっちゃうわけだ。
「よーし、この流れで借金30億円返済も射程圏内……かは分からんけど、近づくはず!」
まずはエルフ村へ向かう。
※ ※ ※
森を抜け、村の入り口に入ると、リリアーナと偶然はちあった。
「まあ、ソータ様。またお越しになられたのですね」
「そりゃまあ、貿易のためだからな。今日は洞窟村の特産品を持ってきたぞ」
俺がバッグから彫刻や磨いた石材を取り出すと、リリアーナの目が輝いた。
「まあ! これは素晴らしいですわね! 洞窟村にはこんな美しい石材があるのですか?」
「そうなんだよ。しかもこれ、ちょっと加工してみたんだ。ほら、こうやって木の装飾をつけたりな」
「まあ、これならエルフの住居や装飾品にピッタリですわ!」
リリアーナが満面の笑みを浮かべながら、興味津々に品物を眺める。
「ふふ、さすがソータ様ですわね。では、こちらもぜひ貿易品としてお持ちくださいな」
リリアーナはエルフ村特産の香草や穀物、さらに保存の効く食材を手渡してくれた。
「助かるよ、これがあれば洞窟村の食生活をもうちょい豊かにできる!」
「ええ、ソータ様が築かれるこの貿易の道、エルフ村も心待ちにしておりますわ」
俺はリリアーナと笑顔で別れ、次は洞窟村へ向かった。
※ ※ ※
洞窟村に入ると、早速エンバーが駆け寄ってきた。
「ソータ様! また来てくださったのですね!」
「おう、今日はエルフ村の食材を持ってきたぞ」
俺がしっぽミートと香草を組み合わせたスモーク加工品を取り出すと、エンバーは目を輝かせた。
「わあ! これはとってもいい香りですね!」
「食べてみろよ。ドラゴンたちの偏食をちょっとは改善できるかもしれないぞ」
試しに一口かじったエンバーは、感動したように目を見開いた。
「すごい……しっぽミートの旨味が、香草の風味で引き立っています!」
「だろ? これなら洞窟村の食卓にも合うんじゃないか?」
「はい! 皆に広めます!」
俺はエンバーの活き活きした表情を見ながら、洞窟村のドラゴンたちへと品物を卸していった。
こうして、エルフ村と洞窟村を繋ぐ俺の商売は本格的に回り始めたのだった。




