第五十話 ふたたびのベースキャンプ
興奮がとまらん。
だって、3メートルの巨人が俺になついてるって、すごくない?
ゴーレムはゴウンゴウンと関節を動かして応えてくれている……気がする。
こうして俺は異世界での新たな仲間を手に入れた。
スローライフする予定がいつの間にか魔導ゴーレムまで仲間に加わって、もう何が起こるかわからんけど……まあ、面白いからよし!
これが俺の異世界流ライフってやつだ。
※ ※ ※
てな感じで、ゴーレムが仲間になったはいいものの。
このでっかい人、どうやって一緒に帰ろう……?
とりあえず、高台の遺跡探索は一区切りした。
なので、ひとまずいつものベースキャンプである小川のほうまで帰りたいんだけど……。
帰りの道のりがまた一苦労なんだよなー。
だってさ。
「ずしん……ずしん……って、重すぎるだろ、お前!」
目の前をとぼとぼ(?)歩く魔導ゴーレムを見上げながら、思わず嘆いてしまう。
足音が地響きレベルだから、地面がわずかに揺れるのを感じるほど。
ウルフが「ガウ?」と小首をかしげてゴーレムの足元をスタッとくぐり抜けていく様子がなんか可愛い。
おい、ウルフは小回り効くし軽快なのに、ゴーレムは真逆なんだよなー。
「ええと、もう少しペース上げられないのか?」
もちろん返事はない。ゴーレムくん、しゃべれないからな……。
ただ黙々と歩き続ける姿がロボット感満載で、困るっていうか。
「遺跡からベースキャンプまで、ちゃんとたどり着けるかな……うーん、怪しいぞ」
ウルフは「ガウガウ?」と不思議そうな顔で俺を見るけど……いや、ホントにこれ大丈夫なのかね。
うちの新戦力(?)が、こんなに歩くの遅いとは。まあ、スローライフってことでヨシとするか。
とはいえ、高台からの下山がいちばんの難所だった。
崖に近い急な傾斜やら、ゴツゴツした岩肌やら、魔導ゴーレムには試練が多すぎる。
自立歩行してるけど、絶対転びそう……って思った瞬間――
「おいおいおい、ゴーレム! そっちは危ないって!」
俺が焦って声を上げたその直後、案の定ゴーレムは足を滑らせて「ズシャア!」と大の字で転倒。
そのまま坂道をゴロゴロゴロ~ッと盛大に転がっていく。
「おおおおお!? マジかよ!」
思わずウルフと一緒に叫ぶ。
勢いがついたゴーレムが転がるたびに、ガッシャーン、ボキバキッとかヤバそうな音が響き、腕や脚がバラバラに外れて飛んでいくんですけど!?
「……やっぱりこうなるよな」
呆然と見守るしかない俺。
ゴーレムは見る見るうちにパーツが散乱して、まるであちこちに落ちたプラモデルの部品みたいな有様だ。
ウルフは「ガウガウ!」と吠えて、なんだか慌ててる。
「か、完全に壊れちまった……どうしよう……」
と思っていたら、
周囲にもや~っと魔導エネルギーらしきオーラが漂い始め、それを合図にパーツが自動的にシュピピピッと集まりだした。
「おおっ、勝手に復活するのかよ!」
まるでマグネットでピタッとくっつくように、本来の位置に再装着されていく。
どうやら自己修復機能が標準搭載なんだな。
やがてゴーレムは何事もなかったかのように立ち上がって、また黙々と歩き出す。
「便利っちゃ便利だけど……そのたびにドキドキさせるのやめてくれって!」
それに、魔導エネルギーをけっこうつかったみたいで、魔導バッテリーの減り具合がけっこうやばいことになっている。
もうすでに、半分くらいまでゲージが減ってしまっているのだ。
うーむ、困った。
ともあれ、なんとか小川のベースキャンプに戻ると、俺は思いっきり肩の力を抜いた。
ゴーレムがドスンと止まるのに合わせて、地面が微かに揺れる。もう勘弁してくれよ、長い道のりだったなあ。
「まあでも。これで高台の遺跡探索はひとまず終了だな」
ゴーレムパーツを集める作業に夢中だったけど、その合間に化石を掘ったりもしてた。
「おかげで博物館の化石コーナーも充実してきたし、けっこう収穫はあったな」
ウルフが「ガウガウ!」と嬉しそうに吠え、ゴーレムは無言で立ち尽くす。
まあゴーレムは喋らないし、表情もないけど、なんだか仲間が増えた感じがして悪くない。
「よし、休憩するか」
俺はゴーレムを小川のほとりに誘導し、ウルフと一緒にのんびり腰を下ろす。
静かな水の流れと、涼しい風が心地いい……やっぱりスローライフはこうでなくちゃ。
ゴーレムは相変わらず無表情で、ただそこに立ってるだけ。
でもその巨体がちょうどいい影をつくってくれるんだよな。
なんだこれ、めっちゃ便利じゃん。パラソル代わり?
「お前、意外と役に立つじゃん」
ウルフは川の水をペロペロ飲みながら、チラッチラッとゴーレムを見上げている。
おそらく「俺にもその日陰を少し分けて?」的なアピールか?
ゴーレムに伝わってるかは謎だけど。
俺も水筒からゴクゴクと水を飲み、ふうっと深呼吸。
「こうやってのんびりする時間も悪くないな……」
なんだか心が落ち着く。
ここまで騒がしかったし、ゴーレム転落事件もあったし、ちょっと癒やされたい。
ウルフのぬくもりとゴーレムのどっしり感が相まって、妙に安心感があるのが不思議だ。
ところが、その静けさを破るように、近くの茂みがガサガサッと揺れる。
まさか魔物か?
そして、茂みの奥から姿を現したのは――俺が予想もしなかった新たな来訪者だった。




