第四十九話 魔導ゴーレム、ゲットだぜ
【博物館】にやってきた俺は、化石標本エリアに足を踏み入れた。
ここは広々としていて天井が高く、ヒンヤリした空気にほんのりロマンが混じっている。しーんと静まり返っているのに、妙な高揚感を覚えるのはなぜだろう。
ウルフが「ガウッ」と軽く吠えて「早く行こうぜ」とでも言いたげに尻尾を振っている。
「さて、いよいよだな……」
奥へ進むと、木製の看板に「古代文明コーナー」と書かれていて、その先にはワイヤーフレームでできた未完成の魔導ゴーレムのスペースがある。
他のモデルは、まだブラックアウトされており、パーツを一つでもみつければ、おぼろげな姿がワイヤーフレームで表示される……という仕組みのようだった。
ゴーレムはむき出しの線だけで構成された、いかにも未来っぽいシルエットが浮かび上がっている。なんだかワクワクするじゃないか。
「よし、さっそく、集めたパーツを全部展示していくか」
ウルフに声をかけると、「ガウガウ!」と尻尾を勢いよく振りまくり。うん、そっちもやる気満々でなにより。
古代文明コーナーのブースに立って、俺は魔導ゴーレムのパーツをすべて取り出した。
遺跡で汗だくになりながら集めたヤツだ。
【博物館】機能に登録してみると、それぞれのパーツが光の筋になってシュワワ……っと飛び出し、ワイヤーフレームの特定の位置に吸い込まれていく。
おおおっ、毎度ながらこの演出はテンション上がる。
「おお……!」
思わず口に出してしまう。スーッとした光のエフェクトに合わせ、フレーム上にパーツがビジュアル化されていくのが何とも神秘的。
腕部の岩っぽい質感、金属光沢めいたの胸部、脚部のジョイント部分……次々とリアルな形状に変わっていくのを見てると、まるでCGモデルが3Dプリントされてるみたいだ。
「シュゴゴゴ……」
ウルフが「ガウ?」と訝しげにこちらを見た。
あ、いまのセリフは俺が効果音を表現しているんだ。つまりオノマトペってやつ。
ウルフも乗ってくれよ。
「シュゴゴゴ……」
やがてパーツが全身を覆うようになり、ゴーレムの骨格が完全に形作られる。
【魔導ゴーレムが復元されました】
ドーン! そんな文字がウィンドウに表示されると同時に、目の前に3メートル級の巨体が姿を現す。
これは……!
見上げるだけで首が痛い!!
くらい、めっちゃすごい!!
「きたあああああああ……!」
その威風堂々たる姿に、息を呑むしかない。
ウルフも「ガウガウ!」と騒ぎ立てて、「でっか!」とか言ってるように見える。
改めて全身を観察すると、全高は3メートルほどあり、胴体は厚みのある金属プレートで覆われている。
表面に古代文字のような彫り物があって、四肢の関節部分にはゴリッとしたギアがむき出し。
そこからほんのり蒸気がシュウシュウ立ち上る演出……って、めっちゃカッコよくない? なんだか軍事用ロボ感あるぞ。
頭部には単眼のような赤いモノアイがピカッと光り、胸部中央には丸いコアみたいなのが埋め込まれている。
そのただならぬオーラに、思わず背筋がゾクッとする。何この威圧感。ガチで動かれたら逃げ場なくない?
「すごい……これが魔導ゴーレムか……」
もちろん、現時点ではピクリとも動かない。まぁそうだよな。
もし急に動いて襲いかかってきたら、心臓止まりそうになるわ。
すると、目の前に「ポップアップウィンドウ」が表示された。
電池マークが出てきて、明らかに空っぽを示すレッドのメーターが描かれている。
あ、なるほど。
これはつまり、
「エネルギーがないってことか……」
おそらく、魔導的なエネルギー不足ってわけだと思う。
たぶん、電気とかそういうのじゃなく、不思議パワーが必要なんだろうな。
つまり。
ここまでは、予想通り……ということになる。
俺は、おもむろに【ショップ】機能を展開し、ついこの間、偶然掘り当てた『あのアイテム』を取り出す。
【魔導バッテリー】。
「これを……こうか?」
リロードしたバッテリーを、背伸びしながら両手で高く掲げると、
シュウウン、と新たな光の筋が現れて、なんと、胸部コアにカチッとはまっていった。
「おお!」
すると、ウィンドウ上のレッドメーターがじわじわ青く変わっていく。
まるで充電が始まったような感じだ。
「すげえ! 珍しく、俺の読み通り!」
ウルフも「ガウガウ!」と尻尾をブンブン振りながら左右にキョロキョロ。
そわそわ感がすごいな、お前。
俺の胸も高鳴ってきて、なんか心臓ドキドキだぜ!
魔導ゴーレムが胸部からシュウウ……と蒸気を放ち、関節がギギギ……と重そうな音を立て始めた。
「おおおおおお、ききき、きたー!」
ずしん、ずしん、と地鳴りのような振動を伴って、その巨体が立ち上がる。
そして、
「お、俺のほうに向かってくる……」
ガシャガシャ歩いてくるもんだから、そりゃもう怖い。
近づくたびに空気がピリピリして、思わず身構えちゃうよ。
やばい、めっちゃこわい。
デカい岩の化け物が、ずしんずしんとこっちに歩いてきてみろ。
誰だって、いまにもちびりそうになるって。
無理だって。
威圧感すごすぎて死にそう……。
ゴーレムは、赤いモノアイがにらみを利かせてて、今にもレーザーでも撃ちそうな雰囲気。
ここでもしゴーレムがぐあっと、俺をぶんなぐりでもしたら、俺は紙くずみたいに吹っ飛んで間違いなく即死だと思う。
てか、これ、まさか、絶対俺を敵だと思ってるやつじゃね……!?
殺される!?
いやマジで待って待って!
「おおおおお、俺は敵じゃない! アンタを復活させただけの一般人です!」
俺は両手を挙げてよくわからない白旗アピール。
ウルフも「ガウッ! ガウッ!」と俺の周りをグルグル回って落ち着かない感じだ。
どうしようかと思ったその瞬間――赤いモノアイが青色に変わった。
「……え?」
急にゴーレムはスッと膝をつき、巨大な手を俺のほうに差し出してくる。
えっと……これはなに?
まるで騎士の忠誠?
それとも手の平で俺をすくい上げるつもり?
「ピピピ……」
機械音が耳元で鳴って、ウィンドウが表示された。
『【魔導ゴーレム】とおともだちになりました』
「おおおお! これは!!」
友達認定! 来た!
これってつまり、ゴーレムが仲間になったってこと……だよね?
これで襲われない! どころか、なんか強力なパートナーを見つけた気がする!
思わず拳を握りしめる。
するとウルフが「ガウガウ!」と吠えながら、足元でポンポン跳ねて喜んでいる。
さあみんな、準備はいいか!
くるっとまわってぇ~~~~。
「魔導ゴーレム、ゲットだぜ!」
「がうがう!」




