第四十七話 異世界パン作り
俺とウルフはゴーレムのパーツを集めるために本格的な発掘作業を開始した。
朝日の中、スコップを手に持ち、ウルフと共に瓦礫の山を掘り起こしていく。
パーツ集めはひたすら地道な作業だ。
ウルフが「ここほれワンワン!」と土を掘り返し、俺がそれをさらにスコップで深掘りする。
大抵は、はずれで、【古代遺跡の壁の破片】とか【古代遺跡の像の破片】とかである。
もちろんこれらも貴重なものなのだろうが、今は目的のものではない。
だいたい、10回掘って、ひとつゴーレムパーツの当たりを引く、くらいだろうか。
あと残すパーツは400弱……つまり、4000回くらいは掘らないと、すべて集まらない計算となる……。
まじ?
俺、できるかな……。
うう……ただ、ここでやる気をなくしても仕方ない。
目の前の道を一歩一歩進むしかないんだ。
辛い状況ではあるが、でも、こうも考えられる。
俺がブラック企業に勤めていた時は、高い山と言える目標もなく、しかも一つ一つ目の前の仕事をこなしても、やりがいのようなものはなかった。
「これを少しずつこなせば、ちょっとずつ前に進んでいける」というようなものは皆無な仕事だったのだ。
だから病み始めていたんだよな、俺。
それに比べたら今のこの、「途方もないが、ただ成果はきちんと見える」作業は、俺に向いてるかもしれない。
だから、DIYとかソロキャンとかも好きだったのかな。
とか、そんなことを考えながら、地道に発掘作業に精を出す。
どれくらい時間が経っただろうか。なかなか当たりを引けなかった中から、
ガツッと、いい感じの感触を得た。
「おっ、これは……【魔導ゴーレム】の左腕の関節部分、だってよ!」
「がうう!」
「きたー! いいね、この調子でいこう!!」
「がうがう!」
こうして発掘を繰り返し、遺跡の周囲を少しずつ掘り進めていく。
「よしウルフ、今日はこのエリアを重点的に行くぞ!」
ウルフが元気よく尻尾を振り、鼻を地面に押し付けて走り回る。
※ ※ ※
「おっと、もうこんな時間か……」
空を見上げると、太陽が天頂を越えていた。
なんとなくだけど、午後1時くらいかなぁ。
てか、そろそろ時計も【ショップ】で購入しないとな……。
のんびりスローライフも最近はスケジュールも出来始めてきたから、時計が欲しくなってきたぞ。
「がう」
「OK、ウルフ。昼ごはんにしよう」
「がうがう」
で、昼メシについて。
本来であれば、簡単に食べられるものをササッと摂取して、引き続き発掘に勤しむのがいいと思うのだが、
「急ぐ旅でもないからな」
ちょっと、案があるんだよな。
そのために、小川のベースキャンプをこの高台に移動させてたってのものある。
「さて、昼はパンを焼いてみるか!」
「がう?」
ウルフが小首を傾げる。
ふふふ……。たまには気分転換に焼き魚じゃないメシを食べたいだろう。
せっかくだから、ソロキャンプで培った知識を披露しながらパンを作ってみようかな。
※ ※ ※
順番に設営していくか。
まずは何より、潤沢に水が必要だ。これは、DIY作業台で鉱石を加工して作った水瓶に、小川で溜め込んだ水を【収納】して持ってきた。
調理するための器、ボウルも準備OK。金属製じゃなくて木製だけど、全く問題なし。
今回は一人と一匹分だから、そこまで大容量の容器はいらない。
俺はまず焚き火を起こす。
そして、パンの材料……小麦粉、塩、砂糖、そしてドライイースト――などなどを取り出す。
これらはもちろん地球アイテムとして購入したものだ。
女神エリシアのぼったくり価格かと思ったら、意外と食料品系は安かった。
そこだけは気を利かせてくれたのかも。助かった。
焚き火にセットした鍋で沸かした沢水を、人肌程度に冷ます。
そしてドライイーストをそのぬるま湯に溶かし、金属皿に小麦粉、塩、砂糖を入れたところへゆっくり加えていく。
「よし、こねるか……」
作業台については、木材を使って簡易的に作成した。
初めての作業に少し緊張したが、意外と生地は素直にまとまってくれた。
手のひらで押し込み、折り返し、さらに押し込む。
指先に伝わる弾力がなんとも楽しい。
これが本当にパンになるのかと思いつつも、体を動かしていると余計なことは考えない。
火のそばで、ゆっくりとこね続ける時間――これが思いのほか癒やしだと気づく。
「がうがう」
え? 腹へったって?
う、確かに昼過ぎからパン作りというのも時間かかりすぎるか……。
仕方ない。
「ちょっと、この焼き魚で誤魔化しておいてくれ」
「がう!」
この隙に、どんどん進めていくぞ!
生地がまとまりはじめたら、できるだけ丸めて表面をきれいに整える。
ほんの少し表面に油を塗って乾燥しないようにする。
「さて、ちゃんとふくらむかな……」
今度はテントの中に入る。
テントの床にビニールシートを敷き、その上にボウルを置く。
さらにタオルをかけて、寝袋を部分的にかぶせて保温。
これで30分から1時間ほど待つ。
その間、焚き火の火力を調整したり、水筒野水を飲んだりして過ごす。
チュンチュンと鳥の声が聞こえてきた。
そろそろ様子を見てもいいかな、とテントに戻ると――
「おお、ふくらんでる……!」
生地は一回りも二回りも大きくなり、指でつつくとふわふわしている。
まるで生き物みたいだ。イーストの力はやっぱりすごい。
発酵した生地を外に持っていき、丸太の作業台に広げる。
ここでパンを成形する。
初心者の俺は薄めにのばしてしまう方が安心だ。ちぎって小さい円盤状にしてもいい。
そして、焚き火の上にセットした鉄板へ――そっと置く。
ジュッとした音はしないが、ほのかに熱が伝わっているのがわかる。
火力が強ければ遠火に、弱ければ炭を足す。
俺はちょっと離れた場所に鉄板を置き、じっくりと熱を通す作戦をとった。
ほどよいところで裏返すと、ぷっくりと膨らんだ生地にこんがりと焼き色がついていて、もう見るからにうまそうだ。
「うわ、めちゃくちゃいい匂い……」




