第四十五話 コツコツと化石集め
【博物館】に入り、足を進める。
入口から吹いてくるひんやりした空気と、なんとも言えない神秘的な雰囲気が相まって、いつ来てもワクワクする場所だなーと思う。
ウルフもポカンと口を開けてキョロキョロしている。
「さて、化石標本エリアはと……」
一人つぶやきながら、歩いていく。
ウルフが「ガウッ」とひと吠えして「早く飾ろうぜ」みたいに尻尾を振ってる。
はいはい、わかったよ。急かすなって。
お、ここだな。
手元の化石を【博物館】機能に登録すると、それぞれが淡い光を放ち始めた。
「おおっ……!」
思わず声を上げてしまった。
すると光の筋がスーッと天井に伸びていき、あらかじめ決められたのかのように展示スペースに集まっていくから不思議だ。
ウルフは「ガウガウ?」と不思議そうに首をかしげている。
光の筋がワイヤーフレームみたいな形をつくり始め、それぞれが立体的なモデルとして完成していく。
この演出には何度見てもウットリする。
やっぱり【博物館】機能ってスゲェ。
アップデートで追加される理由もわかったぜ。
けっこうつくるの大変そうだし。
文句言ってごめん、女神。
登録された化石標本は、
ギガントサウルス(歯)
エルダースネーク(頭骨)
シェルドラゴン(甲羅の破片)
トリロバイト(全身)
ジャイアントクラスト(貝殻)
アンシェントファーン(全体)
メガバグ(翅)
ストームフィッシュ(骨格)
って感じだ。
「いやぁ、そろっていくの、楽しみだなぁ!」
思わず口を押さえて見入ってしまう。
「ん? これは……」
中でも、ジャイアントクラスト、アンシェントファーン、メガバグはこれひとつで化石として全体模型のようだった。
ステータスに【化石模型が完成しました。復元されます】と表示されている。
「おお、まさか……!」
単なる化石から、シュワワワワと淡い光を放ち、「キラリン☆」みたいな効果音が出たと思ったら、
実際に生きていた当時の姿を取り戻した!
「おお、これが復元ってやつか! めっちゃいい! 感動する!」
ウルフも「ガウウウ!」と吠えながらトテトテ走り回ってる。おいおい、テンション上がりすぎて展示ブースにぶつかるなよ?
すげえ、この生き物たちが、この異世界のもりの大昔には、生きて動いてたんだな……。
生命の神秘を感じで見入っている俺だが、
「あ、でも【復元】はされたけど……さすがに【復活】はしない……のか?」
みたところ、生きた時の姿を取り戻したはいいものの、たとえていうならば精巧な標本といったところで、動き出しはしなかった。
「ま、さすがにそうか」
ただ、それでも十分に神秘的だ。
まるで何千年も昔の姿をここに再現してるんだもんなー。異世界のスケールってホント、侮れない。
「やるじゃん、女神! 見直した!」
なんて、心の中で半分茶化しながらも、本音ではめちゃくちゃ感謝している。
こういう機能があると、集める楽しさが何倍にもなるよな。
しかも復元された生き物たちはとにかくデカいし、迫力満点だ。
古代にこんなヤツらが闊歩してたとか、想像するだけで鳥肌モノである。
ウルフは「これ強そうだな……」みたいに首をかしげているが、正直、同感だ。
「あ、そうだ」
こいつら、売ったらいくらになるんだろ(守銭奴)。
よこしまな考えが脳裏に浮かぶ俺。
展示をひと通り眺めたところで、ふと【ショップ機能】を開いて売却価格をチェックしてみる。
すると……
「……!」
それぞれが1万クルナを超える高額表示。
いいねぇ!! これはいいですねぇ!!
これから、どんどん発掘して、化石を完成させて金持ちを目指すぞ!
ウルフが「ガウ?」と不思議そうにこっちを見てるが、まあ気にするな。
「まあ、そりゃそうか。貴重な化石だもんな」
軽く独り言を漏らしながら、しかしここで売っちゃうのは惜しい気がする。
苦労して発掘してきたロマンの塊を、即金でサヨナラなんて……。うーん、モヤモヤ。
「せっかく飾ってるんだし、もうちょっとだけ置いとこ。売るのはいつでもできるしな」
こういうふうに収集物が飾られているのを眺めるだけで、なんというか満たされるんだよな。
ウルフも「ガウガウ!」と元気良く吠えて賛同してくれている(と勝手に解釈)。
※ ※ ※
博物館で化石の展示を終えたあと、俺は高台をさらに先へ行ってみようと決意。
ロマン好きにゴールはない!
「今度は、もうちょっと奥のほうで発掘してみるか」
ウルフと一緒に高台の奥のほうにトコトコ進んでいると、見慣れない光景が目の前に広がった。
「な、なんだ……これ?」
崩壊した建物の残骸があちこちに散らばり、石造りの壁や柱が倒れて地面に埋もれている。
苔むした石の表面には古代文字や模様が彫られており、かつての文明の痕跡を感じさせる。
ガレキがゴロゴロしていて足元は不安定だが、どこか荘厳な雰囲気が漂っている。
「これって……昔の文明の遺跡か……?」
こんなところに?
と思ったが、化石がたくさんあるような、昔の地層がある場所だから、おかしくはないのかもしれない。
ウルフが「ガウ?」と首を傾げながら慎重に歩き回り、崩れた石の隙間を嗅ぎ回っている。その姿を見ながら、俺は足を取られないよう慎重に進む。
「この異世界のもりの文化とは、かなりかけ離れた印象だな……。あの発掘機と同じ匂いを感じるぜ……」
目の前に広がる光景はまさに古代文明の遺跡そのもので、壁の一部には精巧な彫刻が残されている部分もある。
長い時を経て朽ち果てたとはいえ、その美しさには息を呑むものがあった。
近づいてみると、石のブロックには古めかしい文字みたいな模様が彫られている。
妙に芸術的だけど、崩れてるから全貌は分からない。
でも、なんだか胸がドキドキする。こういう遺跡って、絶対何か秘密が眠ってるパターン……!
「すごいな、これ……」
辺りをキョロキョロ見回していると、ウルフが「ガウガウ!」と鳴いてなにかを伝えようとしていた。
「どうした?」
ここほれワンワンの要領で、ウルフが、地面に落ちているなにかをしきりに前足でつっついている。
「……これが気になるのか?」
それをそぉっと手に取ると、脳裏にウィンドウがパッと現れた。
【魔導ゴーレムの腕】
「……は?」




