第二十八話 生み出された最終兵器
「ソータ様、次は一体何を!?」
「さっきの毒煙スプレー、あの成分が巨大バチにかなり効果的なことはわかった」
だから、やることは決まってる。
俺は【ショップ】をウィンドウ表示して急いで目的のものを探す。
「なら、あの成分をもっと大量に用意して、さらに効率的に使えるようにする」
「え……!?」
よし、これだ。
俺がショップ画面で選択したのは、
『背負式除草タンクと散布ノズル』。
くっ……。
その価格は……。
「……5万円……くぅううう、厳しい!! 厳しいが……やるしかない!!」
ためらいながらも、これが今必要な最善の選択だと自分に言い聞かせる。
5万円、つまり10万クルナを用立てするために、今まで採取したものも加工したものも、エルフの村でもらったものも、ほぼ全てを売却。
売却ボタンをひとつ押すたびに涙が流れそうになる。
くううううううう、身を切る思いとはこのことだ……!
借金が、全く返せない!!
辛い……というか痛い!!
心が痛すぎる!!
そんな断腸の思いを乗り越えて、涙で霞む視界の中、無事にタンクを購入。
そして購入したタンクとスプレーを合成!
生み出された最終兵器は……。
『背負式毒殺放射器:広範囲に毒煙を撒き散らし、持続的に効果を発揮する。大型生物や飛行系の群れにも有効』
「これだ……これなら完全に制圧できる!」
手にした放射器を見て、俺は笑みを浮かべた。
「エンバー、ウルフ、これで勝負を決めるぞ!」
※ ※ ※
祠から俺は威勢よく飛び出す。
自殺行為とも言えるその意外な俺の行動に、むしろ面食らったのか、ヴェノムホーネットの群れはすぐには襲って来なかった。
様子を伺うように俺を取り囲む。
やはりそこそこの知能もあるようだ。
俺は、ゴクリと生唾を飲み込みながら、周囲を見回す。
あたり一面に、夥しい数のヴェノムホーネットがいる。
その凶暴な顎をギチギチと不気味に鳴らしている。
ブブブブ……と羽でホバーするその姿もおぞましい。
なにより、腹部から突き出た鋭利で太い毒針。
あれが魔熊10頭を抹殺する恐るべき凶器である。
一斉に襲いかかる号令待ちって感じだ。
あと数秒でそれも行われるだろう。
つまり、俺の命もあと数秒。
……なんて、そんなことさせてたまるか!
「待たせたな! お前らの天敵様の登場だ!!」
俺は、背中に装着した背負式毒殺放射器、そこからホースで伸びる射出ノズルを構えた。
しかも両手で。ダブルノズルだぜ!
「ギィイイイイ!!」
ヴェノムホーネットが号令をかけた。
俺目掛けて何百匹という巨大バチが迫る。
「いけえええええええ!!」
俺は射出ボタンを押すと、2本のノズルから同時に濃密な紫色の煙が勢いよく吹き出す。
「ダブルノズルだ!」
ブッシャアアアアアアアアア!!
2本のノズルから対巨大蜂専用の毒液が火炎放射器の如く噴出される。
その毒液に触れた途端、巨大バチは次々と撃ち落とされるようにバタバタと地面に倒れていく。
どうだ!! こうかはばつぐんだろう!!
思わず俺の口から笑い声が溢れ出す。
「わははははは、わははははははははは!!!」
その快声はハリウッドのスーパーヒーロー映画に出てくるアイアンスーツの社長のような雄叫びそのものだった。
わはははははは!!
ブッシャアアアアアアアアア!!
わはははははははははは!!
ブッシャアアアアアアアアア!!
わはははははははは!!!
…
……
………
…………。
気づけば、ヴェノムホーネットたちは全滅していた。
あたり一面、ものすごい数の巨大バチが地面に倒れている。
「やった……俺はやったぞ!!」
ダブルノズルで決めポーズ!!(韻を踏んでます!)
万感の思いでその場に立ち尽くしながら、俺は自分の勝利を噛み締める。
しかし、ふと横を見ると、エンバーとウルフが微妙な表情で俺を見ていた。
「……何?」
「ソ、ソータ様、少し……怖かったです……」
エンバーがおずおずと言い、ウルフも「クゥーン」と小さく鳴く。
「あ、悪かった……」
俺は苦笑いしながら放射器を背負い直した。
「とにかく、生き延びたな……」
こうして、この場を切り抜けることができたのも、合成の際にスズメバチ用スプレーと魔結晶の特性を的確に組み合わせたおかげだ。
アイデアがうまくハマった。
「工夫次第でどんな状況も乗り越えられるもんだな……」
やっぱ、DIY最高!




