第二十五話 ヴェノムホーネットがあらわれた!
※ ※ ※
ざっとおさらい。
初日からの探索を総合的に判断すると、この森はかなり広い。
俺がベースキャンプとした小川を、仮に『中心』と位置させると(本当はそうじゃないんだろうけど、まあ暫定で)、エルフの村は南西に位置していて、このドラゴンの洞窟村は真東って感じだ。
東にまっすぐすすむと、絶壁があることもわかった。その壁にある洞窟がドラゴンの村ってわけ。
そしてそのドラゴンの村から、さらに壁伝いに南東に進んだところに、振動音の発信源と崖がある……らしい。
わかったかな? みんな。
ちなみに、方位については地球アイテムである羅針盤を購入して後で調べた結果だ。
ようやくだが、俺は地図作りにも着手していた。
エルフの村で羊皮紙はゲットしていたので、ドラゴンの村で鉛筆を購入した。
手にした鉛筆で、羊皮紙の上に慎重に線を引いていく。少しでも間違えたら、地図としての意味を失いかねない。
「ここがドラゴンの村で、こっちがエルフの村……と」
考えながら、地形をなるべく正確に描こうとするが、やはり情報が少ない。
森の道は入り組んでいて、踏み固められた道とそうでない道が混在している。
「まいったな……もう少し基準になるポイントが欲しい」
こんな地図でも、いざという時には命綱になる。そう考えると、作業の価値が一層感じられる。
……そろそろ、この【ショップ】機能にもマッピングデータ反映があってもいいんじゃないのか?
頼むぜ女神。
利益重視じゃなくて、運営するアプリの開発改善にも先行投資をお願いしたい。
ユーザーリクエストとしては、セーブ&リロード機能と、アルバム機能、ファストトラベル機能もな。
地球のお友達との通信モードも欲しい。
ただまあ、これが実装されたら向こうにとっては完全にホラーだな。
死者からの電話ってことになるわけだから。
ともあれだ。
そんなことを考えながら目的地に向かって森を進んでいると、しばらく歩いたところで小川のそばに到着した。
へえ。ここにも小川が。
もしかしたら、俺がベースキャンプとしている小川まで繋がってるのかもしれないな。
こっちが上流になるみたいだ。
「エンバー、ウルフ、ここで少し休憩しようか」
「はい!」
「ガウ!」
エンバーが嬉しそうに頷き、近くの岩に腰を下ろす。
ウルフもその場に座り込み、喉を鳴らしている。
俺は荷物から焼き魚を取り出し、エンバーに差し出した。
「これ、食べてみろよ。村のみんなに提供しなかった、最後の一匹」
「えっ、いいんですか?」
エンバーが驚いたように目を見開く。
「いいって。焼き魚なら、食べられるんだろ?」
「はい、もう血は出てませんので……」
「はは、了解。ちゃんと塩も振ってあるから、うまいぞ」
エンバーはおずおずと受け取り、一口かじる。
「……美味しいです!」
にっこり笑うエンバーに、俺も思わず笑顔になった。
「だろ? 焼き魚はやっぱり王道なんだよな」
「ガウガウ!」
隣でウルフも嬉しそうに尻尾を振っている。
※ ※ ※
休憩を終えて、再び森の中を壁沿いに進む。
すると……。
突然、頭上から不気味な羽音が響いた。
「……ん? なんだ、この音?」
俺が見上げると、空中に大群のハチが現れていた。しかも、見るからにヤバそうな異世界のハチだ。
「エンバー、あれ、なんだよ!」
ドラゴンは、青ざめた顔をして、悲壮と共に声を張り上げた。
「……あれは『ヴェノムホーネット』です!!」
……名前からして、めっちゃヤバそうじゃん。




