表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンクジャズ  作者: 林広正
97/102

第10話 1

   第10話



 あの日から、世界はまた狂い始めた。突発的な攻撃が増えたんだよ。テロなんて言葉で表現されているが、俺には意味がわからない。テロ行為は卑劣で残忍だと言われているんだ。そんなの当たり前だろ? これは戦争なんだ。卑劣で残忍じゃない戦いなんてありえない。明日どこそこに攻撃をします。いついつから地上戦を始めましょう。確かにそんな戦いをした記録も残っているようだが、それってどういうことなんだ? 実際に戦っている連中の都合というより、机上で口論している奴らの言い分だろ? つまらないよな。体裁を気にするなら、そもそも戦争なんてしなけりゃいいんだよ。戦争のための協定や条約なんていうのは、ただの言い訳だろ? 戦争ってのは、そもそもはテロ行為の連続であり、テロ行為のぶつけ合いなんだよ。まぁ何度も言うが、それがいいと思っているわけじゃないんだがな。

 俺たちの世界は、テロで溢れてしまっている。俺の国でも、隣の国でも同じだ。毎日どこかで人が殺されている。しかも、突発的にな。俺だって危険に晒されたことは何度もあるし、常に危険を感じながら生きている。それって、決していい世界じゃないよな? そうも思うが、そうじゃないとも言えるんだよ。まぁ、実際に多くの無関係な国民が大勢死んでいる現状では、これが平和だとは言い切れないが、俺たちが生まれた当時より、人は人らしく生きている。なんていうかな、抑制されていない生活ってのはいいもんだ。俺たちは、長い間抑圧されていることに気がつきもせず生きてきたんだよ。それを俺が、音楽が、文化が開放をしたんだよ。俺の罪は大きいが、功績だって大きいだろ?

 テロの犠牲には、一般市民が多く巻き込まれている。それって悲しいよな。戦いになんて興味のない人が、なんの前触れもなく生き途絶えるんだ。けれどな、それって、今のこの世界では通用しないんだ。戦いは自分とは関係のない外で行われているって考えが、今では消滅している。例え直接的に関係はなくても、この街に、この世界に生きている以上、責任は平等なんだよ。戦いは、全ての人間に関係しているってことだ。例え、生まれたばかりの赤ん坊だとしてもだ。まぁ、その赤ん坊は親が当然守ろうとするんだがな。普通はな。

 まぁいいよ。この戦いには、部外者なんて存在しないってことだ。俺たちはこういう世界で生きている。俺には多くの家族がいるが、犠牲になった家族も多いよ。まぁ俺は、自分自身も戦っていて、間接的には多くの犠牲者を生み出している側でもあるんだけどな。

 俺はあの日以後も、慰問公演は続けている。まぁ今では軍人っていう肩書きは捨てちまっているよ。あの日の後、治らない恐怖と怒りをはけ出すフリーコンサートを開いたんだ。まぁ、偉く怒られたよな。なんせ俺は、それをアメリカ軍の基地の中で行ったんだから。各国の多くのファンを引き連れてな。俺は非国民って言われることが多々ある。そんなのはどうでもいいことだ。国って概念を、そろそろ無くしてもいいと思うんだよな。勘違いするなよ。以前のような一つの世界とは意味が違う。国がどうのこうのという前に、俺は俺ってことだ。つまりはお前はお前ってことだよ。誰になにを言われてもいいんだ。自分らしく生きようってことなんだよ。

 フリーコンサートは、思いの外うまくいったよ。批判は多くとも、賛同も多い。まぁ当然だよな。俺たちの音を聞いていれば、誰だって楽しくなる。俺は知っているよ。あの日、世界中の人間が踊っていた。あの日のあの瞬間、戦争は止んだ。当然、誰一人死なない時間だった。事故や戦争だけでなく、病気での死も存在しない、歴史上でも貴重な瞬間だったんだ。俺たちの音楽だけが、世界に響いていた。俺はいつの日か、この音楽を宇宙全体に、もしくは、その外側にさえも届けたいって考えているんだよ。

 コンサートは三時間。長いって反応は全くないが、体力的には限界点だな。それは俺たちだけじゃなく、観客にとっても同じだ。俺たちのショウは、そりゃあ盛り上がる。なんせ俺は、その日の感情を全て出すからな。当然みんなも同じようにさらけ出す。観客も含めてな。疲れるが、気持ちいい。まるでセックスだっていう奴もいるが、俺はちょっと違うと思う。ハッピーになれるウィスキーや薬とも違う。なんせ、俺たちのショウは、子供でさえ、赤ん坊でさえ楽しくなれるんだからな。

 俺の愛するスティブっ子は、可愛い孫を沢山作ってくれたよ。作るなんて言い方に反応しないでくれよな。俺は一度注意されたんだが、意味がわからなかったよ。作るって表現がいやらしいとか言われたな。授かるとか、恵まれるとか、そういう言い方をしろってさ。どうしてだ? 子供ってのは男と女で作るもんだろ? それが現実だし、それって素晴らしいことだろ? 神様にお願いをしたって、結局はやることをしなけりゃ生まれないんだよ。まぁ、その作業を機械的に行っている連中もいるが、俺は好きじゃないな。色々な理由があってそうしている奴らもいるが、それこそいやらしいと感じるんだ。今ある自分を、現状を受け入れるって、大事なことじゃないのか? それを変えるためにする努力は認めるが、なんだか最近はやりすぎ感が強いような気がしてならない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ