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パンクジャズ  作者: 林広正
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7

 あまりにも悲惨な現実ってのは、そう何度も経験するものじゃないよな。この日もまた、俺にとっては何度目かの悲惨な一日だった。二度目か? 三度目か? まぁ、この日から悲惨な日常が増えたことには間違いはない。今では毎日のように何処かの国で多くの誰かが殺されている。

 俺がしたことは間違っていたのかも知れないって思うことがある。そりゃそうだよな。俺が戦争を始めた訳ではないが、俺の言葉や音楽、その行動が戦争のきっかけになっていることは間違いがないんだからね。今なら思うよ。きっと、違う方向に導くこともできたんだってな。しかしまぁ、そうはしなかった。俺は、戦うことを悪いとは感じていないんだよ。戦うってことは、先に進むことだと考えている。現に俺は、そうやって前に進んできた。この世界だってそうだ。昔に比べれば、確かに前に進んでいる。俺はそう信じているよ。ただちょっと、やりすぎだと感じることが多すぎはするんだけどな。この日はまさに、そんな日だった。

 俺はいつものようにステージを楽しんでいた。大きな音を出し、大きな動きを見せる。観客も大きな声と動きで反応をしてくれる。最高の瞬間が続いていた。ずっとずっと続くはずだったんだよ。しかし、俺たちが奏でる音が突然遮られたんだ。爆撃機ってのは、とてつもなくうるさいんだよ。飛行型スニークの仲間ではあるが、その機構がまるで違うんだよ。戦争用スニークってのは、特別なんだよ。陸上用も海上用もある。スニークは廃止されても、戦争用だけは今でも存在しているんだ。その形はスニークに似ているものもあるが、やはりどれもが戦争用に特化した形になっている。その中でも、飛行用のそれは、特別に異様な姿をしている。それが十数代かそれ以上集まっていたんだ。ロックショウなんてまるで葬式だって感じるほどの騒々しさだったよ。爆撃には当時から今でもそうだが、転送装置は使用しない。当然だよな。そいつはかなり危険な行為だよ。まぁ、ちょっとおかしな連中がたまに、転送で爆弾を送ることはあるが、タイミングを間違えると自らが死んでしまうこともある。そんな事故はざらだよ。本気の場合はやはり、爆撃機に限る。

 爆撃機ってのは、まぁ普通はプロペラ機を使用するんだ。頭の天辺で四枚の長い板がグルグル回転しているあれだよ。ヘリコなんていうニックネームもあるが、その由来はわからない。まぁ、謎ってことは、大抵は文明以前の名をいただいているって意味なんだけどな。

 ヘリコは最強の爆撃機だよ。移動速度は速くないが、空中で停止できるのが最大の特徴だな。巨大な爆弾も搭載できる。しかもかなりの量をだ。軍人だって詰め込めば十名以上は乗せられる。俺は最強の爆撃機だと感じている。まぁ、現実にあの光景を見た者なら、そう感じて当然だよな。

 あまりの騒音に俺たちの音楽は掻き消された。俺でさえ、歌うことを止めてしまったよ。どんな雑音があっても止められなかった俺が、その声を消されてしまったんだよ。どれほどのものだったかが計り知れるだろ?

 集まったヘリコは、一斉に爆撃を始めた。なんの合図もなしにだ。そりゃあ驚いたよ。辺り一面があっという間に煙に包まれた。灰色の煙が、黒く変色していく。その中に、赤い炎が顔を覗かせ始めた。けれど、俺たちのいた場所には、爆弾は落ちてこない。舞い上がる煙も、こっちには流れてこなかった。その理由は後になってわかったよ。炎も当然、暑さを感じたりはしなかった。全ては俺たちの外での出来事であり、別世界での出来事だったってことだよ。俺たちは守られていたんだ。いいや、それはちょっと違うな。コマーシャルな存在として、利用されたってところだな。

 爆撃をしたのは、アメリカの軍隊だ。俺たちはその日、スコットランド軍の依頼で慰問公演を行なっていたんだが、なんだか途中から様子がおかしいことに気がついたんだ。確かに戦場以外の場所では、敵対する軍人同士が仲良く生活したりすることは珍しくはない。しかし、俺たちがいた場所は、あくまでもアメリカに敵対する連合軍の集まる宿舎だったんだ。そこでの慰問公演にしては、その観客の層は不可解すぎたんだよ。連合軍の兵士はそりゃ多かった。ベトナム国民もそれなりに集まった。しかしなぜか、アメリカ軍兵士の数が多すぎたんだ。それはまさに、不自然な光景だった。当時も俺たちはアメリカでの公演を続けていたが、集まる客にアメリカ人は半分くらいで、大抵はアメリカに暮らす余所者どもだったんだ。この日はまさに、そんな感じだった。アメリカ相手の戦争をしているっていうのに、半分くらいがアメリカ人だなんて、異様な光景だよ。まぁ、ある意味では理想の光景でもあったんだがな。その理由さえ知らなければな。

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