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パンクジャズ  作者: 林広正
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6

 俺はスティブっ子の長男を半ば無理矢理連れ出したんだ。スティーブでの映像なんかより、生の現在を見てみろと言ったんだ。戦場ってのは、あってはならない場所かも知れないが、そこはまさに人間としての生きる力に溢れた場所でもあるんだよ。死が身近にあるからこそなのか、みんなが活気に満ちている。って言ってもそれには限界が存在していて、正気を失うような、まさに狂気なんて戦場も存在はしているが、当時のあの場所は、そうじゃなかった。考えてもみろよ。流石に狂気に満ちた戦場に家族を連れて行くはずはないだろ? まぁ、その時点ではの話なんだがな。

 俺はスティブっ子と街を歩いた。戦時中だってのに、街はいたって普通なんだよな。そこに驚きなんてないよ。世界中どこに行っても同じだからな。戦場は確かに悲惨だが、そのすぐ近くの街ってのは、人が多く集まり、普段よりも賑わいを増す。まぁ確かに、危険な市街地戦もあるんだけどな。当時は珍しいことだった。戦争ってのが、一種のビジネスになり始めていたからな。色々と約束事を決め、その範囲で戦争をするんだ。まぁ、あの事件をきっかけにそれも崩れてしまったんだけどな。戦争はまた、感情のままの状態に逆戻りだ。ビジネスでの戦争はいいことだとは思わないが、軍人以外の市民に危険は少なかったんだ。武器を作るって作業は金になるしな。軍人の給料もいい。死んだとしても家族に金が残る。おかしな時代ではあったが、以前よりはマシだった。当然、今よりもだ。

 俺とスティブっ子は、大通り沿いの喫茶店に入った。自分で言うのもなんだが、俺は超がつく有名人だ。けれどあの国では、誰も俺をちやほやしない。俺のことに気がついていないって訳ではなさそうだったが、有名だろうがなんだろうが、同じ人間には違いないって考え方が浸透しているように感じられたよ。ニューヨークの他人に無関心なのとはわけが違う。店員の女の子は普通に名前を呼び、普通に接客してくれる。まるで常連客のように俺たちを扱ってくれたよ。有名人扱いされないってのは、嬉しいもんだ。しかも、それとなく気がついていることだけを知らせるなんて、最高だよな。最初はその店員だけが特別だとも思ったが、そうではなかった。まぁ、違う意味でその店員は特別な存在になったんだけどな。俺のスティブっ子が、そうさせたんだ。

 君のことが好きなんだ。と、何度目かに店員の彼女がやってきたとき、スティブっ子がそう言った。それまでにも仲良く話しをしていて、俺にはその感情が充分伝わっていたよ。けれど彼女に対してどれほどに伝わっていたのかは計り知れなかった。スティブっ子には、自信があったようだな。想いが通じていて、いい答えが返ってくると疑っていなかったんだと、後になって聞いたよ。確かにその通りだった。あの二人は父親の目の前だっていうのに、抱き合い、キスしだしたんだからな。

 俺は会場に戻り、スティブっ子は、彼女の仕事を待ってから戻ると言ったんだ。招待してもいいでしょ? なんていうから、家族ごと招待すると言い返したよ。結果として、それはとてもいい判断だったようだ。

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