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パンクジャズ  作者: 林広正
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 ショウの死は、当然俺以外にも影響を与えている。ショウは、なんて言うか、ちょっと違うんだよな。ショウの言葉には力がある。しかも、ちょっと脅迫的な力だ。こうなる予感はしていたんだ。ショウはきっと、いつの日か、神になるんだよ。すでにもう、その布石が打たれている。ショウを崇拝する動きが、始まっているんだ。俺は見たんだよ。日本で。神の社と名乗り、その神の名をノーウェアと名付け、その偶像がショウによく似ているのをな。ショウはいつの日か、その言葉通りにクリストを超えるんだよ。絶対にな。

 俺たちは、たった一度だけ過ちを犯したことがある。ライクアローリングストーンとしての過ちだ。まぁ、したくてしたんじゃない。そうせざる終えない時代だったんだ。もしもそうしていなければ、どこかの誰かにきっと、殺されていたんだろうな。このことは、上辺だけなら世界中が知っているが、真実を知っている者は少ない。こうやって話をするのは初めてだしな。スティーブでさえ、知ってはいるが知らなかったことにしているんだよ。

 戦争が始まって、ショウが死んで、十年は過ぎた頃だ。スコットランド人は、疲れ始めていた。戦争ってのは、案外は客観的なんだが、ある日突然主観的に変化をする。どういうことかわかるか? 戦争ってのは国が勝手に軍隊を作り、軍人を集めて戦うんだ。しかし、戦争が長引けば当然、死者が増え、軍人が足りなくなる。そんなときどうするのかはわかるだろ。今はもう廃止になったが、徴兵制度を導入するんだよ。無理矢理に軍人を作り出すんだ。そのやり方は様々あるが、この国は意外にも公平なんだよ。だから俺たちも選ばれたんだ。

 年齢男女別に割合を決め、後はランダムにくじを引く。拒否することは許されない。いかなる理由があってもな。まぁ、国によっては色々あるが、この国ではどんなお偉いさんでも拒否はできないってことになっている。もちろん俺も、従わざるをえなかった。

 しかしまぁ、国だってバカじゃない。俺をそのまま軍人として送り込もうとは考えなかったようだ。偶然だと国は言うが、メンバー全員が同じ時期に徴兵されることになったんだ。そんなわけはないよな。きっと俺だけが先に選ばれ、利用しようって考えたんだろうな。他のメンバーは、俺の犠牲になったってわけだよ。まぁ、これは誰もが知る噂ってやつだけどな。

 そして俺たちは、世界中で戦っているこの国の軍人たちを慰問する旅に出されたんだ。もちろん、軍人としてだ。演奏するときも、軍服だ。なんだかおかしな気分だったが、意外と楽しめた。まぁ、軍服なんてのは途中で脱ぎ捨てちまうからどうでもいいんだ。とにかく俺たちは、世界中を回り、軍人を楽しませたんだ。途中で起きた哀しい現実は、正直思い出したくもない。しかしまぁ、忘れてもいけない出来事なんだよな。

 俺たちは、東南アジアと呼ばれる地域に足を運んだ。あの辺りには複雑な事情を抱えた国が多い。温暖な気候で、色々と恵まれているんだ。アメリカは、戦争の混乱に乗じて東南アジアの国々を奪おうと試みていたんだ。まぁ、表向きは別の理由をつけていたが、誰が見ても明らかな行為だった。見かねた他国が集まり、アメリカから守っているんだ。まぁ最悪な戦争だよな。多くの国が多くの犠牲者を出した。俺も危うく死ぬところだった。あの経験から俺は、戦争を嫌うようになった。どんな理由をつけたところで、戦争ってのは結局のところ殺し合いなんだ。しかも、国同士の利益最優先だ。実際に戦い血を流す軍人とは別に、部屋の中でドーナツを食べている連中が戦いを指示している。最悪だな。

 ドーナッツってのはオランダ人が考えたお菓子だよ。名前の由来はよく分からないが、小麦粉で作られているのは知っている。なんて言うか、不思議な食感なんだよな。色んな種類があるんだけど、輪っか型が主流だな。俺もまぁ、好きでよく食べているんだが、食べ過ぎると太ってしまうのが難点だ。体型を維持するためのタブレットを飲んではいても、結局は抑制しかしてくれないんだ。許容を超えて食べ過ぎればダメだってことだよ。だから見てみろよ。軍人にデブはいないが、支持している奴らはデブばかりだ。抑制の効かない奴らが戦争を支持しているなんて、笑い話としても滑稽過ぎる。

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