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パンクジャズ  作者: 林広正
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 音楽の文化が世界に溶け込むと、不思議なことに、世界は少し、暴力的になったんだ。溢れた笑顔の裏には、当然怒りや哀しみが存在する。まぁそういうことだ。音楽によって、内に篭っていた感情が露わになったんだよ。音楽は世界を変えた。それはいい意味でもあり、悪い意味でもあるってことだ。

 この世界の歴史上、戦争が始まったのは初めてのことだった。俺はまさか、そんな未来がすぐ先に待っているとは思っていなかったよ。平和とは言い難かったが、争いも確かにあったが、戦争にはならなかった。世界という枠の中で、それぞれの国が共存していたんだ。

 人の感情ってのは、恐ろしくもあるが、俺としては当然であり、なくてはならないものだと思っている。長い間抑えられていた感情が、音楽をきっかけに爆発した。俺たちは、ようやく人間に戻れたってことだ。

 戦争は、哀しい。けれど、戦うことは、生きるためには必要なんだ。不思議だが、戦争をきっかけに、世界中で、街の治安はよくなっている。どこにぶつけたらいいのかわからなかった怒りの矛先を見つけたからだろう。心にたまった不満の正体を知り、戦ってもいいんだと心が理解をした。感情ってのは、内にこもったままではダメなんだ。外からの感情を知ることで、この現実を理解する。周りがなにを感じ、なにを考えているのかを知らなければ、どんな感情も独りよがりで終わってしまうからな。音楽ってのは感情のぶつけ合いだ。人が成長するのにはもってこいなんだよ。聞く側も聞かせる側も同じようにな。しかしまぁ、今ではちょっとおかしな音楽も存在する。俺がいうのもなんだけど、音楽は金になるんだ。そのシステムを作ったのはノーウェアマンだけど、俺もたっぷりとその恩恵を受けている。まぁ、生きるために金は必要だから、俺はラッキーだったと思っているよ。感謝もしてるいし、金なんていらないとは言わないな。だがな、金のために音楽を楽しむことはできない。金ってのはあくまでも結果なんだよ。金がチラついた音楽は、聞いていてつまらない。そんなおかしな音楽が、今では世界に溢れている。まぁ、この国はまともな方だ。ノーウェアマンのいた国は、異常なほどにそんな音楽で溢れている。まともな奴らを探すのが難しい。ゼロってわけじゃないんだけどな。

 金のための音楽はクソだが、それを喜ぶ連中がいるのも事実だ。こんな時代だからなのか? クソみたいに金の匂いしかしない音楽に夢中になり、自分もまたそんな金目当ての音楽を始めようと憧れる。つまらない輩が溢れているんだ。仕方がないか。今の時代、教師も医者も政治家も、警察官だって金目当てだからな。金を目的としないでなにかに従事しているのは、俺たちくらいなのかも知れないな。なんてことを散々稼ぎまくった俺がいうと嫌味でしかないよな。しかしまぁ、それは事実だ。俺たちは、一度も金を欲した事はない。金のために音楽を奏でたことなんてただの一度もないんだよ。

 タブレットで音源を発表したときもそうだ。当初は金なんて取らなかった。地下室でのライヴも同様だよ。俺たちは少しも要求していない。聞いた人間が、自らの意思で金を落としていくんだ。俺がいくらいないと公言をしても、金は集まってくる。だから俺は、全ての音源やライヴに対してではないが、集まった金の全てを寄付することをよくしている。俺は残念なことにバカでも無責任でもないからさ、そういった団体を通しての寄付なんてしない。自分の目と足で確かめるんだ。自らの手で寄付金を届けるようにもしている。周りを信用していないとか、目立ちたいとかの理由じゃないのはわかるだろ? 俺は金と一緒に、この心を届けたいんだよ。そのためにはやはり、顔を出す必要があると思わないか?

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