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パンクジャズ  作者: 林広正
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第6話 1

   第6話


 俺たちはなんていうか、近所の知り合いやらそのまた知りやらが集まってバンドを始めたんだ。ミカンは俺の家の向かいに住んでいた。四つばかり年上だが、気持ちの上での上下関係は一切ないな。生まれたときから知っている。家族と言っても間違いはないだろうな。

 ミカンの器用さは周知の通りだ。俺たちの楽器は、例外なくミカンの手作りだ。まぁ、写真からのモノマネだけじゃなく音を聞いてからのモノマネもあるんだけどな。

 楽器に感動をした俺だけど、何故だろな。俺は歌うことに楽しみを覚えてしまった。声だって楽器になる。六弦を弾いていて感じたんだ。その音を口で奏でると、気持ちが弾む。そこに言葉を乗せると、心が跳ねたんだ。だから俺は、歌い手になったってわけだ。楽器も弾くけど、あいつらの奏でる楽器の上で自由に踊るのが俺は好きなんだよ。

 ミカンの知り合いとしてやってきた二人が、ジョニとアンティだ。ミカンの通っていた学校の先輩と後輩だよ。ミカンは結構なエリートでさ、家は金持ちだし、頭もいいし、おまけに色男ときた。正直俺は、ミカンには嫉妬しっ放しだ。ミカンはバンド一のモテ男だからな。

 今の世界では、子供は学校で教育を受けることになっている。俺の時代も同様だ。その学校で基本的なことを学ぶんだ。スティーブについての技術も学ぶ。この世界での文明につても学ぶし、数字や言葉、文字の勉強もする。歴史の勉強もするが、少しばかりの違和感を覚えるのはなぜだ? もちろん、光技術の勉強は欠かせない。この世界、光エネルギーがなければスティーブさえ動かないんだ。

 スニークを動かすにも光エネルギーは必要だ。機械的な動きを自動に変換するのが光エネルギーだよ。転送にも使うんだ。赤ん坊を生むにも、光エネルギーを使っている。

 ジョニとアンティは、六弦を演奏する。二人ともが同じ楽器を選んだとき、俺は正直イラッとした。どうして四弦を触ろうともしない? 二人はそのときは一台しかなかった六弦を奪い合うように何度も交代でその音を試していた。その様子を見て、俺は驚いたよ。同じ楽器なのに、二人はまるで別の音を出すんだ。なんていうかな? 弾き方が違うんだ。リズムの取り方が違う。俺はすぐに、二つの音が重なればと想像した。それって凄いんじゃないかってイメージが湧いたんだよ。

 ミカンはすぐにもう一台の作製を始めたよ。元々そのつもりで材料は揃えていたんだ。俺が見た本の中にも、同じバンド内で二人がそれぞれ別の六弦を演奏している姿が写っていたからな。

 ジョニはミカンの先輩だ。小学校が同じだったようだ。この国では学校が三段階に分かれている。小中大だよ。まぁ、常識だな。生まれてから十年間が小だ。そこから八年間が中で、残りの四年間が大だ。義務教育だから、誰でも平等に通わなければならない。しかし、飛び級制度のおかげで早く教育を終わらせることはできる。まぁ、逆はないんだよな。どんな馬鹿でも、年数をこなせば卒業できてしまう。といっても、そんな馬鹿が生まれないほどに厳しい教育をするんだけどな。俺は幸い、飛び級組だ。十六年で教育を終えたよ。ミカンは二十年かかっている。最後の年で俺と同級になっている。

 ジョニはもっと頭が悪い。二十二年間、フルに教育を受けている。ミカンとは一年間一緒に過ごしたそうだよ。

 アンティは真の天才だな。たった十年で卒業ってのは、ありえないんだよ。アンティの偉業は、世界に発信されてもいる。アンティは俺たちが有名になる前から、一人だけ有名だったんだ。ミカンの後輩ではあるが、ミカンもあっという間に追い抜かれているからな。

 そんなアンティが誘いをかけたのが、サミだ。サミとアンティは同い年だ。親戚だとか言っていたな。家は少し離れているが、スニークを使って三十分ってとこだ。サミは俺と同じで十六年間教育を受けた。まぁ、まともな方だな。普通に通えば、その程度なんだよ。ミカンは勉強好きでね、趣味が多くて時間が足りないって感じだった。頭は悪くはない。どちらかというといい方なんだよ。あいつの二十年間は、誰よりも濃密だったんじゃないかって思うよ。

 俺たちの世界の学校では、単純に勉強だけをする奴と、専門的な勉強を進んで選ぶ奴とがいる。俺は前者だが、ミカンは後者だ。言っておくが、ほとんどの奴が前者になる。専門的な勉強を選ぶのは、ごく一部だよ。まぁ、アンティもそうなんだけどな。あの二人は頭がいい。俺はあの二人のおかげでわがまま放題を許されているんだよ。

 サミは四弦を演奏する。サミは特別上手ってわけじゃない。だがな、あいつの音は最高なんだよ。柔らかいっていうか、胸に響くんだよな。そのフレーズも独特だ。誰もサミを真似できない。いまだにな。ノーウェアマンのそいつを真似する奴は多いよ。まぁ、そいつはサミと違って歌いながらベースを弾くんだけどな。今いるバンドのほとんどが、そいつのベースを真似している。リズムが身体に染み込むラインを弾くんだよ。

 俺たちライクアローリングストーンでは、アンティの六弦がその役割を担っている。もちろん、ミカンの打楽器もだ。その二人で俺たちの音楽を支えている。まぁ、二人ともときには自由にはしゃぎまくるんだけどな。俺たちは、全員が自由な音楽を楽しむんだ。

 ジョニの六弦は、サミとは違った色のフレーズを奏でる。しかも、これまた独創的だ。なんていうかな? 転がる石のように不特定なんだよ。俺はジョニの六弦を、トンボの散歩と呼んでいるよ。サミの四弦は女神の気紛れだな。

 俺の歌は、まぁ下手くそだよ。今となっては、俺のように歌う奴は一人もいない。というか、俺以外が俺のように歌えば、それは下手くその証拠になっている。正直言うけど、俺の歌がこんなにも受け入れられたのは、俺たちがただ単にオリジナルだったからに過ぎない。

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