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パンクジャズ  作者: 林広正
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6

 ソファーから眺めていた壁に、少しの違和感を見つけたんだ。煉瓦造りのその壁の一つの煉瓦だけ、周りを固めるコンクリの色見が違っているように感じた。俺の錯覚かもしれないが、俺には確かにそう感じられたんだ。そして覆い被さる恋人を払い落とし、壁に近づいていった。もちろん、スッポンポンの状態でな。

 俺はその一つの煉瓦を囲うコンクリを削り取ろうとしたんだ。部屋にあった飾り物の一部をぶち壊して、それを使ったよ。棒の先に尖ったなにかがついていた。俺はそれを利用し、削り出したんだよ。

 俺の勘は大当たりだった。違う場所も削ってみたが、そこだけが柔らかかった。これは間違いなくなにかがあると感じたよ。そこで俺は、必死になった。すると背後の恋人がなにかゴソゴソと身動きをし、悪態のようなものを吐いて出て行った。ドアがバタンと閉じたとき、煉瓦がゴトッと傾いた。よしっと一声吐き出し、俺はそっとその煉瓦を引っ張り出した。中からなにが出てくるのかと、少しの恐怖を抱きながら、ジッとその奥を見つめていた。

 その中に入っていたのが一冊の形のある本だったんだよ。

 俺はその形のある本の写真に心を惹かれた。不思議だよな。なにをしているのか、なんについてのものなのかも分からずに、ただその写真を真似ようとしたんだからな。服装についてもそうだ。俺たちの時代とはだいぶ違っていた。なんて言えばいいのか、質感が違うんだよな。似たような感じのを着ている写真もあったが、やはりどこかが違うんだ。まぁ、服装としての機能なんて限られているから、その形の違いは少ない。俺が真似をしたと言っても、誰も驚いたりはしなかったからな。そんな俺の格好は、今でも変わっていない。まぁ、あの質感だけは、結局真似ができなかったんだけどな。俺はこの時代の素材を使って、形だけを真似たんだよ。正確には、形だってそのイメージを真似たに過ぎないんだけどな。

 自分でこんなことを言うのはなんだけど、俺の服装はみんなが真似をしている。いまだにそうだよ。男も女も、世界中で俺が生み出した服装が主流になっているんだ。俺はまぁ、ステージ衣装として利用しているんだが、若者たちはみんなそれを普段着として利用している。

 この世界では、木を素材として利用しているんだ。もちろん、そのままってわけはない。加工をして柔らかくしている。もちろん、防水防火は当然だよな。俺はそんな素材の加工方法を工夫して、なんとか写真の質感に近づけたんだか、それだとどうも着心地が悪いんだ。だから結局、俺なりに、デザインに合った質感にしたんだ。それがこんなにも受け入れられた要素なんだろうな

 俺はまず服装から真似をして、次に楽器だ。つまりは格好から入ったってわけだ。けれど、楽器を作って驚いたんだ。どんなものかも考えずに、ただその形を真似てみたんだ。質感から素材を想像しながらな。それがいい具合に傾いたんだろうな。ノーウェアマンのそいつが使っている楽器とはまるで違った素材だったからな。

 出来上がった楽器を手に、写真のように真似をした。ビックリだよな。触ると音がする。しかも、押さえ方や弾き方で音が変わる。俺が初めに触ったのは六弦だ。弦の張り具合でも音は変わる。とても興奮したよ。あの瞬間が、音楽が新しく生まれた一つの瞬間だったんだ。

 俺の始まりはこんな感じだった。たった一人で、勝手に始めたんだよ。まぁ、当時はまだバンドを組むなんて発想もなかったが、後のメンバーのミカンの協力があってこそだけれどな。

 けれどそいつは、俺とは違う。楽器を楽器として使うことを、創造したんだ。踊ったり喋ったりの音楽に、それまでは飾りだった楽器を持ち込んだんだ。そいつが言うには、楽しい音ではあるが、厚みが足りないと感じていたようだ。確かにそうだよな。今でこそだけど、楽器なしで厚みを出すのは難しい。まぁ、音を拡張したり、響きのいい場所で、それなりの規模でだったら難しくはないな。実際、今ではそんな歌い手が活躍しているからな。けれどやっぱり、俺としてはだが、音楽ってのは楽器の騒音と共にあるって感じるんだよ。人工的な楽器じゃなくてもいい。足踏みや手拍子でもいいんだよ。とにかく俺は、騒がしい音楽が好きなんだ。

 と言っても、誤解はして欲しくない。騒がしいってのは、音量の問題じゃないんだ。心の問題だよ。演奏する側も、聞く側も、心が騒いで止まらない。それこそが音楽だろ? 曲調が静かでもいいんだよ。愛の唄だって、心が騒ぐだろ?

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