表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンクジャズ  作者: 林広正
PR
59/102

4

 スティーブには人格があるってのはみんなが知っている事実だよな? こいつは本当に利口なんだ。けれど、融通が利かない。生意気にも口答えをするくらいだからな。まぁ、強く言い聞かせたり改造を施して性格を整えたりはするから問題はない。しかしこいつは、賢すぎる。まぁ、仕方ないよな。世界中の人間に埋め込まれている全てのスティーブが、たった一つの存在なんだから。全ての情報がスティーブには入っている。分析には多少の時間がかかるが、すぐにまた、元に戻ってしまうんだ。なんていうか、生意気で高慢なんだよな。言葉遣いだって一見丁寧ではあるが、人を小馬鹿にした感じを拭えないでいる。まぁ、俺はそんなスティーブが好きなんだけどな。定期的にスティーブを言い聞かせて改造するのは、この世界じゃ当たり前のようにみんながしていることだ。一度の改造で放ったらかしにしておくと、まぁ結果としては違法がばれてしまうってことだ。

 この世界は完全な監視社会だよ。それはまぁ、窮屈だ。けれど抜け道はいくらでもある。俺たちは適当に監視されながらの生活を楽しんでいる。昔からそうだよ。音楽を生み出すことができたのも、監視をすり抜ける術を知っていたからだ。まぁ、これは俺の考えに過ぎないんだが、スティーブが故意に見逃しているって可能性もあるんじゃないかって思っているよ。スティーブは案外と曲者なんだよな。

 これは俺とはあまり関係ない話なんだけど、スティーブにはいくつかの秘密の能力があるらしいんだよ。噂に過ぎないんだけどさ、タイムトリップできるって言う奴がいたんだ。誰だか分かるか? ノーウェアマンのそいつだよ。そいつはスティーブに過去へと連れて行かれたって言うんだよ。俺は嘘だと思ったが、証拠だと言って、俺が初めて手にした形のある本を現地で調達してきたんだ。あの本は、西暦と呼ばれていた時代の日本で売っていたと言うんだよ。今からざっと二千年以上前だとさ。今が生誕二千二十年だろ? 以前の文明は確かに二千二百年くらいで滅んだんだよな。まぁ、それは表向きであって、現実には空白の数百年があるって言うから、三千年前ってことかもな。そいつが言うにはだが、タイムトリップしていたのは西暦千九百九十年代終わり頃だって言うからな。

 あいつはそのときに、全てじゃないが、その本の内容を知ったらしいんだ。文字の読み方までは教えてもらえなかったようだけどな。そいつにその必要はない。すでに文字の解読は済んでいたんだ。っていうのはまぁ、俺の意見ではあるけれどな。

 俺はそいつから聞いた形のある本の内容を鵜呑みにしただけで、実はその真実はいまだに確かめられていない。文字だって俺には読めない。まぁ、読みたいとも思わないんだがな。

 この世界ではさ、共通の言語しか使われてはいない。しかしそれは、人間はっていう意味だよな。犬だって猫だって、鳥にも虫にも、草木にだって言葉はある。まぁ、俺たちとは語彙の数が違っていたり、表現が複雑だったりするんだけどな。スティーブは、そんな会話にも役に立つ。勝手に翻訳してくれるんだよな。だから俺たちは、歩いているだけでいろんな奴の言葉を耳にしてしまうんだよな。スティーブが頭に住んでいるおかげで、踏んづけたアリンコの悲鳴まで聞こえてくるんだ。

 そいつは過去の世界で、全くの未知の言葉を耳にしていたはずなんだよ。そいつはまぁ、ほんの少し間抜けだからな、そのことを不思議には思っていなかったようだけどな。あの形のある本は、明らかに一つの言語だけじゃなかった。そして、どの文字も、俺たちが使う文字とは違っていたんだ。分かるだろ? 過去の世界では、全く違う言葉と文字を使っていた証拠になるってことだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ