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パンクジャズ  作者: 林広正
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3

 当時の俺はまだ、音楽を発表する前だった。形のある本は手に入れていたし、楽器も製作中ではあったが、まだまだ楽しめる音を生み出してはいなかった。

 だから俺は、死んでもいいとは考えもしていなかった。周りが自殺行為だと笑う言葉にも意味が分からず、不思議にさえ感じていたんだ。俺の方が笑いたい気分だった。スティーブでさえ、それは危険だと答える始末だ。

 けれど結果はご存知の通りだ。俺は生きているし、数百人全員が少しの異常もなく転送に成功している。その日からだな。世界が急速に変化をし出したのは。

 転送に必要な装置は小型化が進み、今では腕輪型が一般的だ。もちろん携帯もできる。きっといつの日か、コンタクタがその代わりになるだろうって俺は考えているんだ。しかし当時は箱型で、しかも設置式だ。転送先も設置された箱型になる。当たり前だよな。箱から箱への転送が常識だったからな。しかし今では違う。腕輪があればどこにいても、好きな場所を選んで転送できる。この世界で腕輪を持っていない奴なんてどこにもいないはずだ。まぁ、場所や相手によって転送をブロックできるように制御されているから、本当の意味でのどこでもとは違うんだよな。真の意味での自由だと、少しばかり困ることもある。だってそうだろ? 知らない奴が突然転送を使って自分の家の中に現れたらどうする? 俺だったらきっと、そいつを蹴り飛ばすだろうな。それからすぐにそいつを北極の深海にでも転送してやるよ。

 俺たちはライヴで転送を使ったパフォーマンスをよくするんだ。今では他の連中も真似しているが、元祖は俺たちだよ。ライヴ中に転送して客席の通路に現れたりさ、なかなかに楽しいんだよな。数カ所のライヴハウスでの同時公演も俺たちのアイディアだ。転送しながらの演奏は正直辛いが、あれは本当に面白かったよ。音だけは常に全ての会場に流れるけど、肝心の演奏者が出たり消えたりするんだ。まぁ、この歳ではもうごめんだけどな。転送には体力がいるんだ。一度だけならいいが、連続でってのは身体がついていかないんだよ。

 ライヴ会場では、俺たちだけが転送できるように設定しておく。観客が勝手に転送しまくったら大変だからな。幾つかのバンドを集めての祭にも転送は役に立つ。一日で世界を回って演奏することができるんだからな。

 転送は確かに便利だ。けれど、俺はやっぱり好きじゃない。なんて、今まで散々利用し、金儲けにまで使っている俺が言うのもおかしな話だよな。

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