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パンクジャズ  作者: 林広正
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第4話、1


 今の世の中は本当に便利だよな。ナオコは故郷のエジプトを中心に世界で活躍している。娘達には俺の意思が伝わったようで、俺とはまるで畑違いの世界で暮らしている。長女のナオミは、月にいる。文明以前から人間は宇宙に飛び出そうとしていたって噂だが、どこまでの技術があったのかは謎だよ。残念なことに、地上にはあらゆる痕跡が残されているらしいが、宇宙にそれらしい痕跡は一つもない。地球の軌道に物体をのせるなんてこと、今は学校の授業ですらやっているからな。それに加えてこの世界には転送装置がある。転送装置ってのは、宇宙でも利用可能なんだよ。まぁ、

無闇矢鱈に行けるってわけではないけれどな。宇宙への転送には特別な許可が必要なんだ。もしも許可なしで行けば大変なことになる。なんせ宇宙空間はこことは違うからな。きちんと許可を取って、安全な日に、安全な格好で、安全な場所に転送する必要があるってことだ。呼吸もできずに破裂するなんて嫌だからな。

 ナオミは月で、ハンバーガーショップを経営している。ハンバーガーは今や地球食だからな。全世界のソウルフードだ。噂じゃこれも文明以前からあるらしいが、食べ物の起源を辿るって行為ほど無意味なものはない。食べ物の創作っていうのは、どれも似たり寄ったりだからな。いくつかのパターンに別けてしまえば、それでお終いだろ? まぁ、味付けは無限大だったりするけれどな。俺は正直、食には疎いんだが、食べ物なんて身体に入ってしまえばそれまでだ。美味しいって感じさえすればなんでもいいんだよ。って言うのはまぁ、俺個人の意見だ。身体に吸収される儚さを、一瞬の輝きで散っていく花火に例える奴もいるくらい食を尊重する趣きもあったりするんだがな。俺には理解できない。ハンバーガーは好きだが、普段の俺は栄養クッキーしか口にしないからな。あれは本当に便利だろ? 口に入れるだけで必要な栄養を賄える。味だって悪くないしな。なんせ一番の魅力はその手軽さだ。時間もかららないし、口を動かす必要もない。ただそれを口に入れるだけだ。後は勝手に溶け出し、身体中へと栄養が巡っていく。俺は自分で学校に通うようになってからはずっとそのクッキーを利用させてもらっているよ。俺はしたことがないが、クッキーなら、歌いながらでも食事ができるからな。

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