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パンクジャズ  作者: 林広正
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 ウツヨキから帰るとすぐ、俺は曲を作った。まぁ、表現したって言った方がいいよな。楽しい時間だったよ。これは俺の考えだが、音楽ってのは身体の内側から溢れてくるものなんだよな。本来ならな。しかしこのときは違っていた。俺は外側からの音楽を感じ、表現できたんだ。不思議な体験だったよ。俺はあの日以来、そんな体験を多くしてきた。

 外側から感じたままを表現すると、一つの問題点が浮上する。分かるだろ? 俺が感じた音楽は、俺以外の奴も感じているんだからな。当然、他の誰かが騒ぎ出すんだ。何処かで聞いたことがある。誰かの真似をしたのか? そうじゃないことは明らかだろ? 俺はただ、感じたままを表現しただけで、誰かを真似なんてするはずもない。って言うか、できるはずがないんだよな。俺が表現した曲は、あくまでも俺がそう感じたってだけで、それが他人と共有できたってことは、俺の感覚と表現力が優れていたってだけのことだ。つまりは俺の作品なんだよ。俺が表現した曲が、実際にその景色の中に流れていたわけじゃないからな。俺の曲を聞き、何処かで聞いたことがあると感じたってことは、俺の表現力が客観的だってことだ。

 俺が始めたこの表現方法は、なかなかに面白いものなんだが、至極つまらないものでもあるんだよな。俺以外の多くの誰かも真似をしているが、耳触りはいいんだけど、それだけなんだよ。その景色を知っている者や、感受性があれば聞くだけで景色を想像できる。けれど、その先がないんだよ。すでに完成されちまってるいんだよな。正直、すぐに飽きてしまう。まぁ、つまらないってことだ。俺はすぐに、そんな表現方法をやめにしたよ。

 転送装置が一般的になる以前の世界だったなら、そんな音楽にも意味があったのかも知れない。知らない世界を感じることができるからな。しかし今は違う。いつでもどこにでも行ける。その音を感じたければそこに行けばいいんだ。自然の音楽を楽しむことができる。俺が表現した曲なんて、所詮は偽物だと気がつくんだよ。

 とは言ってもまぁ、今でもそんな音楽が、ヒーリングなんて呼ばれながらももてはやされている。正直、俺はまるで癒されていないんだけどな。

 俺たちの音楽だって、多くの心を癒している。って言うか、音楽っていうのはそもそもそういうことなんだよ。繰り返しになるが、楽しむって、そういうことだろ?

 サリとの出会いは俺をあらゆる面で変化させてくれた。息子が生まれたことは当然として、音楽的だけでなく、俺の内面が変化をしていく。

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