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パンクジャズ  作者: 林広正
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 俺は一時期、音楽から言葉を排除したことがある。と言ってもまぁ、完全に発しなかったわけじゃないんだけどな。この声を、楽器として、この言葉を、音程として発したんだよ。まぁ評判は悪かった。評価は高かったのにな。

 ウツヨキの景色が、俺をそうさせたんだ。あそこに辿り着いた瞬間、俺の頭に音楽が流れた。ウツヨキの街は、音楽で溢れている。俺はそう感じたんだよ。まぁ、実際に誰かが演奏をしているとか、風のざわめきが音楽を奏でるとか、そういう意味じゃない。現実として、俺には聞こえたってことだよ。

 俺にだけ聞こえているんだって、始めは思っていた。とんだ思い違い野郎だよな。ウツヨキの景色は、俺だけのものじゃない。当然聞こえてくる音楽も、俺だけのものじゃないってことだよ。まぁ、俺のように聞こえてきた音楽を客観的に表現できる奴は他にはいなかったんだがな。

 ウツヨキから聞こえてくる音楽を、言葉で表現するのは意味がないんだ。だってそうだろ?母親の胎内で聞く音楽を言葉に表してなんの意味がある? それってさ、感じるものであり、伝えるものじゃないんだ。だから俺は、ただ単純に、感じたまでを表現したに過ぎないんだよ。

 俺が始めた表現は、ヒーリングなんて言われたっけな。ふざけた話だよな。言葉の意味は分かるだろ? 俺にそんなつもりは全くなかった。って言うか、そんな言葉になんの意味がある? 音楽ってのは、楽しめなきゃ意味がない。まぁ、その楽しみ方は色々なんだけどな。心が癒されるってのも、楽しむってことの一部だろ? 意味の分からない音楽のジャンルわけが俺は嫌いなんだよ。

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