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パンクジャズ  作者: 林広正
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 爺さんの家の地下室は、俺にとっては憩いの場だった。俺は子供の頃からよく通っていたよ。なにかがあったときはもちろん、なにもなくても顔を出す。あんまり綺麗な部屋じゃないんだが、埃だらけのソファーが俺の定位置だ。いつ行ってもそのソファーには埃が被っていたな。部屋の中には俺の知らない飾り物やらなにやらが溢れていたよ。まぁ、どれもが埃が被っていて、俺は触ったこともないんだけどな。蜘蛛の巣だっていっぱいだよ。気味が悪いっていう印象しか残っていない。まぁ、それも魅力の一つだったりしているのが不思議だけどな。

 爺さんの家は、少しばかり遠かった。俺の家は賑やかな街中にあったんだけど、爺さんの家は山の麓の荒地にあったんだよ。小川の流れる自然だらけの場所だったな。子供の頃の俺は三十分かけて走って行った。学生時代には、乗り物を使い、大人になってからは転送している。全く便利な世の中だと思うよ。今では子供だって転送できるんだ。乗り物の価値が減っていくのは残念だけど、いずれ消えゆく運命なんだ。仕方がない。乗り物の事故で死んだ人の数は、たったの五十年でこの文明が始まって以来の病死者の数を超えたって噂だよ。まぁ、それは大袈裟かも知れないが、それほどまでに多くの人が事故で死んでいるんだ。病気とは違って、ある日突然なんの前触れもなく罪もない大勢が死んでいるってことだ。病気っていうのは、生活習慣を変えたり薬を服用すれば直すことも不可能じゃない。どうしようもない病気も存在するが、それはある種あがなえない運命のようなものだ。けれど乗り物での事故は違う。無茶な運転をする奴は別だが、巻き込まれる側はたまったもんじゃない。それを運命と呼ぶ奴を、俺は許さない。だからまぁ、事故が減っているこの現状は、喜ぶべきなんだよな。

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