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パンクジャズ  作者: 林広正
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 そいつは運が良かった。というか、俺も同じだが、なにかに導かれているんじゃないかって思うことがある。運だけで人生が進むっていうことは、そういうことだろ? 俺たちの人生が仮に誰かが書いた物語だとして、その誰かが人生を導いているのと同じことだ。現実を生きている俺たちだって、そういう見えないなにかに導かれるように生きていくってことだよ。

 なんて言うけどさ、俺は俺だ。俺らしく生きてきたらこうなっただけだ。そいつも同じだろうな。運が良かったとか、なにかに導かれたとか、そんなこと言われても困るだろうな。

 音楽について書かれた形のある本を、そいつは店で拾ったんだ。前に座っていた客が忘れていったなんて、俺の国じゃありえない話だ。まぁそこが闇の店だってのがポイントだけどな。いくらあの国でも、普通の店に形のある本を置いていくバカはいない。スティーブに見つかれば大事だ。

 それでもやはり、俺の国ではありえない。形のある本だって、俺が手に入れたのは物凄い奇跡なんだ。俺の国にだって闇はあるが、形のある本が転がっているなんてありえない。

 ウークっていうのは、噂だとあんたの国の名前らしいよ。そいつがそう言っていた。そんな国、聞いたことがない。学校でも習わないし、スティーブだって教えてくれない。ただ、そのUKの文字を知っているだけだ。この国はスコットランドだろ? 俺がそう言うと、そいつは笑う。それはそうだけど、そうじゃないとも言えるんだよ。あんたの国は確かに文明以前からスコットランドだ。けれど、ウークっていう別名もあったんだよ。俺の国がアジアって呼ばれていたのと同じじゃないかな? そいつはそう言うが、ちょっと違うんじゃないかって俺は思う。アジアっていうのは地域の名前だろ? この辺はヨーロッパと呼ばれているんだ。ウークなんて聞いたこともないね。

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