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パンクジャズ  作者: 林広正
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 保育園での音楽フェスは、大人も子供も楽しめるってのがコンセプトだそうだ。まぁ、それって当たり前だろとは思うが、現実としては難しい。どちらかに偏ってしまうのが現実だ。大きなフェスに子連れが集まることはあるが、大抵は親の付き添いだったりする。   子供向けだとその逆だ。だからこそ、会場が保育園なんだな。なかなかいい選択だよ。大人も子供も無理せずに楽しめるからな。音楽以外の展示も子供目線で楽しかったよ。そしてなにより、そこの園長が面白かったな。あれはまさしく変人だ。俺と同じ匂いがする。

 俺が驚いたのは、園長がメインになっての不思議な講演会のような催しだ。幾つかの楽器が置いてある音楽ルームというか、ちょっと広めの談話室って感じの部屋だったよ。まぁ、椅子なんてなく、机も隅に二つあるだけだったけどな。その部屋で園長が始めた音楽と保育についての話は、俺には退屈だったが、熱心に耳を傾ける母親が大勢いたよ。俺が楽しめたのは、後半になってからだ。部屋にある置物やらおもちゃを一つ一つ手にとっては音を鳴らす。そしてそれを観客に手渡していく。まぁ観客といっても、ステージもなにもない教室で決められた場所もなく床に散らばっているんだけどね。園長が手拍子をし、みんなで音を鳴らす。手に持つなにかがない者には、床や壁を叩けと言う。心地良い音が、部屋を占めた。俺も一緒に床を叩いたよ。あれこそが音楽の始まりって感じだったよ。そこにいるみんなの気分が高まったとき、園長はおもむろに壁に立てかけてあったギターを手にしたんだ。ギターはわかるだろ? 俺はまぁ、それを六弦と呼んでいるんだけどね。園長が持っていたのは、俺が手作りしたタイプの物ではなかったからな。ノーウェアマン式だったんだよ。

 園長がギターを掻き鳴らすと、空気が一変する。楽しい気持ちが更にもう一段階高まるんだ。すると観客の中の一人が立ち上がり、部屋の隅に鎮座していたドラムセットに向かい、立ったまま演奏を始めた。するとまた一人が立ち上がり、今度は踊り始めたよ。なんとも楽しい光景だったね。音楽っていうのはそういうことなんだ。俺たちが始めたことは、確実に今に繋がっていた。そして未来にも繋がっていくんだと確信したよ。

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