20/102
3
この前俺は、孫を連れて小さな音楽フェスに顔を出したんだ。そこで嬉しい光景を目にしたよ。俺たちがやってきたことは、確実に未来に繋がっている。そう感じたな。言っておくが俺は、孫の付き添いで顔を出しただけで、演奏はしていないよ。そのフェスは、保育園で行われていたんだ。メインホールは普段は給食やお遊戯会にも使うそうだよ。大きな保育園でさ、音楽室やらアトリエやら、実験室とかおままごと室とかもあったな。中庭を囲む建物はぐるっと一周できるようにもなっていた。庭なんてまるで森だよ。自然が溢れる保育園ってのがコンセプトのようだ。俺がそこに行ったのは初めてだが、孫は毎日通っている。一緒に来て欲しいってうるさくてね、俺はお忍びで出向いたってわけだ。
大した変装なんてしなくても、帽子をかぶれば誰にも気づかれない。俺なんてそんなもんだ。まぁ、気づいていたとしても、ああいう場で無闇に話しかけてくる奴は少ない。俺は孫との時間を楽しんでいるんだ。邪魔する奴は、普通じゃないね。実際にその日、俺を見つめる奴はいても、誰も話しかけてはこなかった。俺が嫌味な雰囲気を出していたわけじゃない。俺はいたって普通の日常を楽しんでいただけだからな。




