↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/80

第40話(後編) :あと三日

第40話後編です。


ラグノ村へ辿り着いたエリックたち。


そこには。


盗賊たちが、どうしても守りたかったものがありました。


病に苦しむ村人たち。


そして。


エリシアが動き出します。


果たして、ラグノ村に何が起こるのか。


それでは、第40話後編をお楽しみください。

夜の街道を。


馬たちが駆けていく。


レイナの後ろで。


エリックは。


黙って村を見ていた。


やがて。


丘の下にある村へ到着する。


「……。」


村の中は。


静まり返っていた。


だが。


いくつかの家から。


明かりが漏れている。


「こっちです!」


ダガンが。


拘束を解かれた腕を押さえながら。


村の奥へ案内する。


一行が。


大きな建物へ入る。


「……。」


エリシアが。


足を止めた。


広い部屋。


その中には。


大勢のドワーフが寝かされていた。


ベッドは。


足りていない。


床には。


毛布を敷いただけの者もいる。


「……こんなに。」


エリシアが。


小さく呟く。


誰もが。


苦しそうに息をしている。


その周囲では。


まだ元気なドワーフたちが。


水を運び。


汗を拭き。


懸命に看病していた。


子供のそばには。


母親らしきドワーフが座り。


何度も額を撫でている。


「……。」


エリシアが。


その光景を見つめる。


「皆さん。」


看病していたドワーフたちが。


一斉に振り返る。


「この方は――」


ダガンが。


言いかける。


「エリシアです。」


エリシアが。


静かに名乗った。


「今日は皆さんを助けるために来ました。」


「……。」


誰も。


すぐには答えなかった。


「まずは。」


エリシアが。


一人の患者へ近づく。


額に手を当てる。


「……熱い。」


患者は。


苦しそうに目を開けた。


「……すまねぇ。」


「謝らないでください。」


エリシアは。


優しく微笑む。


「少しだけ、楽にします。」


エリシアが。


魔力を流す。


淡い光が。


患者の身体を包んだ。


しばらくすると。


荒かった呼吸が。


少しずつ落ち着いていく。


「……楽だ。」


患者が。


小さく呟いた。


周囲のドワーフたちが。


驚いたように顔を見合わせる。


エリシアは。


次の患者へ視線を向ける。


そして。


部屋を見渡した。


「……。」


床。


毛布。


桶。


濡れた布。


窓は閉じられている。


空気も。


少し重い。


エリシアが。


静かに口を開く。


「窓を開けましょう。」


「はい!」


すぐに。


近くのドワーフが動く。


「使った布は分けてください。」


「分かった!」


「水も新しいものに。」


次々と。


村人たちが動き始める。


エリシアは。


それを確認してから。


エリックを見る。


「エリックさん。」


「ん。」


「病気を調べてもらえますか?」


「うん。」


エリックが。


患者の前へしゃがみ込む。


そして。


静かに鑑定する。


「……。」


しばらくして。


エリックが。


口を開いた。


「鉱熱病。」


エリシアが。


息を呑む。


「やはり……。」


エリックは。


患者を見る。


「特効薬は。」


一拍。


「ヒエリオ草。」


「……薬草ですか?」


「うん。」


レイナが。


エリックを見る。


「その薬草……。」


何かを思い出したように。


眉を寄せる。


「魔境の森で鑑定した時、薬になる植物があったよな?」


エリックが。


頷く。


「あった。」


「同じ名前だっただろ?」


「うん。」


レイナは。


エリックを見る。


「……リシェルなら知ってるかも。」


エリックが。


少し考える。


「聞いてみる?」


「それがいい。」


エリックは。


転移魔法陣を描くため。


杖を取り出した。


エリックは。


子供たちを見る。


「……。」


苦しそうに眠っている。


そして。


自分のGペン型の杖を見る。


軽く振る。


「……。」


やはり。


まともに反応しない。


エリックは。


周囲を見渡す。


近くにあった棒を拾う。


地面に。


一本の線を引く。


「……。」


描ける。


だが。


エリックは。


その線を見て。


少しだけ眉を寄せた。


「……。」


そして。


レイナを見る。


「レイナ。」


「なんだ?」


「剣、貸して。」


「……剣?」


「うん。」


レイナは。


自分の剣を見る。


そして。


エリックを見る。


「……何に使うんだ?」


「描く。」


「何を?」


「魔法陣。」


「……。」


レイナの顔が。


引きつる。


「おい。」


「ん?」


「それ、剣なんだぞ。」


「知ってる。」


「武器だぞ?」


「うん。」


「……嘘だろ。」


レイナは。


渋々、剣を抜く。


そして。


エリックへ差し出した。


「……ほら。」


エリックは。


剣を受け取る。


地面へ。


剣先を当てる。


――バチッ!


青白い火花が弾けた。


「……。」


エリシアが。


思わず目を瞬かせる。


「大丈夫ですか?」


「うん。」


エリックは。


気にせず剣を動かす。


――バチッ!


――バチバチッ!


鋭い剣先が。


地面へ深く入り込む。


そのたびに。


小さな火花が飛び散る。


それでも。


エリックの手は止まらない。


円。


線。


術式。


一つ一つを。


正確に描いていく。


レイナが。


その様子を見つめる。


「……。」


しばらくして。


エリックが。


手を止めた。


「できた。」


魔法陣は。


何の問題もなく完成している。


レイナが。


魔法陣を見る。


「……本当に描けてる。」


「うん。」


エリックは。


剣を返す。


「ありがとう。」


レイナは。


剣を受け取る。


刀身を確認する。


「……。」


傷はない。


だが。


どうにも納得できない。


「……。」


エリックを見る。


「お前……。」


「ん?」


「さっきの棒より、こっちの方が描きやすかったのか?」


「うん。」


「……。」


レイナが。


頭を抱える。


「私の剣だぞ……。」


エリックは。


少し考える。


「棒より、まし。」


「はぁ!?」


エリシアが。


思わず口元を押さえた。


エリックは。


魔法陣へ向かって声をかける。


「リシェル。」


しばらくして。


『はい。エリック、何かあったのですか?』


「起きててよかった。」


『たまたま月光浴をしてました。』


「月光浴?」


『はい。エルフにとっては――』


「そんなことより。」


『……はい。』


エリックは。


患者を見る。


「ヒエリオ草。」


『……ヒエリオ草?』


「知ってる?」


少しの間。


『知っています。』


リシェルの声が。


少し真剣になる。


『昔、一緒に冒険していたドワーフの方から教えてもらいました。』


「薬になる?」


『実が薬になります。』


一拍。


『ただし、葉は毒です。』


エリックが。


ダガンを見る。


「……。」


『それと。』


リシェルが続ける。


『ヒエリオ草の実は、朝にしか実りません。』


「朝?」


『はい。夜には実がありません。』


「……なるほど。」


エリックは。


患者たちを見る。


そして。


ダガンを見る。


「明日の朝。」


ダガンが。


顔を上げる。


「……俺たちが?」


「うん。」


ダガンは。


しばらく黙っていた。


そして。


強く頷く。


「……分かった。」


「行く。」


『エリック。』


魔法陣の向こうから。


リシェルの声がする。


「ん?」


『採るなら、実だけにしてくださいね。』


「うん。」


『葉には触らないように。』


「分かった。」


エリックは。


魔法陣を見る。


「ありがとう。」


『いえ。』


「じゃあ、明日の朝。」


『はい。』


通信が。


静かに途切れた。


エリックは。


魔法陣を見つめる。


「……。」


レイナが。


横から尋ねる。


「しかし、なんでリシェルはそんなことまで知ってるんだ?」


エリックは。


少し考える。


「ドワーフと冒険してたから。」


「……なるほどな。」


ボルグは。


黙ったまま。


魔法陣を見ていた。


「……。」


やはり。


何度見ても。


理解が追いつかなかった。


ダガンたちが。


魔法陣の光に包まれる。


その姿が。


一人ずつ消えていく。


最後の一人が消えると。


魔法陣の光も。


静かに消えた。


「……。」


ボルグが。


魔法陣を見つめる。


そして。


エリックを見る。


「おい、坊主。」


「ん?」


「何故、お前は行かんのじゃ?」


エリックは。


少し考える。


「……。」


その時。


エリシアが。


口を開いた。


「昨夜、私が止めたのです。」


ボルグが。


エリシアを見る。


「お嬢ちゃんが?」


「はい。」


エリシアは。


ダガンたちが消えた魔法陣を見る。


「彼らには。」


「これから仕事が必要です。」


「……仕事?」


「はい。」


エリシアは。


村へ視線を向ける。


「薬を作ることができれば。」


「この村の仕事になります。」


「ヒエリオ草だけではありません。」


「上手くいけば。」


「ポーションなども作れるでしょう。」


ボルグは。


黙って聞いている。


「それに。」


エリシアは。


続ける。


「リシェルさんに頼めば。」


「ダンジョンへ行くこともできます。」


「魔物を倒して。」


「魔石を手に入れることも。」


ボルグが。


ゆっくりと頷く。


「……。」


「薬を作る。」


「魔石を採る。」


「それを仕事にする、ということか。」


「はい。」


エリシアは。


頷く。


「彼らが自分たちの力で生活できるようになれば。」


「この村は変わるかもしれません。」


ボルグは。


村を見る。


病人がいる家。


畑。


そして。


先ほど魔法陣へ入っていったドワーフたち。


「……。」


しばらくして。


ボルグが。


小さく息を吐いた。


「なるほどのう。」


そして。


エリックを見る。


「だから、お前は残ったのか。」


「うん。」


エリックは。


村を見ながら答える。


「こっちにいる。」


ボルグは。


少しだけ笑った。


「……お主らしいのう。」


その時。


村の方から。


苦しそうな咳が聞こえた。


エリシアが。


すぐにそちらへ振り向く。


「……。」


「患者さんを見に行きましょう。」


エリックが。


頷く。


「うん。」


二人は。


村へ向かって歩き出した。


ボルグも。


その後を追った。


しばらくして。


ラグノ村を離れ。


一行は。


丘の上へ戻っていた。


馬の背に揺られながら。


しばらく。


誰も口を開かなかった。


やがて。


ボルグが。


ふと村の方へ目を向ける。


「……患者たちの熱も。」


「下がっておったのう。」


エリシアが。


頷く。


「はい。」


「本当によかったです。」


エリックは。


レイナの後ろで。


黙って馬に揺られている。


「それにしても。」


ボルグが。


小さく息を吐く。


「ダガンの奴。」


「えらく張り切っておったのう。」


レイナが。


苦笑する。


「薬の村にする、とまで言っていましたね。」


「うん。」


エリックが。


ぽつりと答える。


「いろんな薬、作れるようになるといいな。」


「そうじゃな。」


ボルグが。


頷く。


「村の者たちが自分たちで作れるようになれば、よい。」


「はい。」


エリシアも。


静かに頷いた。


しばらくして。


レイナが。


自分の剣を見る。


「……。」


「しかし。」


レイナが。


ぼやく。


「私の剣。」


「最近、ろくな使われ方しかしないんだが。」


エリックが。


後ろから剣を見る。


「普通。」


「「どこがだ。」」


レイナとボルグの声が。


見事に重なった。


「……。」


エリックは。


少し考える。


「魔法陣、描いただけ。」


「それが普通じゃないんだ!」


レイナが。


振り返る。


「剣だぞ!?」


「うん。」


「武器だぞ!?」


「知ってる。」


「薬を作る魔法陣まで描く道具じゃない!」


「……。」


エリックは。


少しだけ首を傾げる。


「便利だった。」


「そこじゃない!」


レイナが。


深いため息をつく。


「……。」


ボルグは。


二人を見ながら。


小さく呟いた。


「じゃなぁ。」


馬たちは。


そのまま。


丘の上へ向かって進んでいった。


待っていた仲間たちと。


合流する。


「エリシア様!」


「ご無事で何よりです!」


エリシアが。


小さく微笑む。


「はい。」


「ありがとうございます。」


「それで、村は?」


エリシアが。


答える。


「患者さんたちの熱も下がり。」


「薬も手に入りました。」


「もう心配はないでしょう。」


「それは良かった。」


仲間たちが。


安堵する。


ボルグが。


前方へ目を向ける。


「さて。」


「あと三日ほどで。」


「鉱山都市タグルムじゃなぁ。」


その瞬間。


ボルグの口元が。


ほんの少しだけ緩んだ。


「……。」


ミーナとルチアが。


顔を見合わせる。


「嬉しそうです。」


「ですね。」


「怪しいですね。」


二人が。


小声で。


「女の匂いだよ。」


「だよね。」


「やらしい。」


「ですね。」


「聞こえとるぞ!!」


ボルグが。


振り返る。


「何の話じゃ!」


「タグルムです。」


「……。」


ボルグが。


ため息をつく。


「古代の扉を開ける仕事じゃ。」


「仕事……。」


ミーナが。


ルチアを見る。


「なるほど。」


「女じゃないですね。」


「だから最初からそう言っとるじゃろうが!」


レイナが。


一号車へ向かう。


「ほら。」


「行くぞ。」


エリックたちも。


後に続く。


一行は。


一号車へ乗り込んだ。


馬車が。


丘を下りていく。


タグルムまで。


あと三日。

ラグノ村での出来事も、ひとまず一段落。


病に苦しむ村人たちを救い、

新しい仕事まで見つけたエリックたち。


そして一行は――


鉱山都市タグルムへ向かいます。


そこでは。


ボルグが楽しみにしている「あの仕事」が待っています。


果たして、タグルムでは何が起こるのか。


次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。