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Ep48. 初めての後悔

後悔は、無意味だ。


 前世の俺は、そう切り捨てていた。


 過去は変わらない。

 結果は戻らない。

 終わったことを悔やんでも、生産性はない。


 だから、振り返らなかった。


 失敗も。

 人間関係も。

 死んでいった患者も。


 必要以上には考えなかった。


 合理的だった。


 ……そのはずだった。


「ルーク?」


 オリヴィアが、俺の顔を覗き込む。


 近い。

 慣れた距離。


 その瞬間、ふと前世の最後が脳裏をよぎった。


 冷えた研究室。

 焦げた臭い。

 暴走する術式。


 そして——誰もいなかった。


 当然だ。


 俺が、全部切り捨てたから。


 助手も。

 同僚も。

 患者も。


 必要以上には近づけなかった。


 感情は邪魔だったから。


 ……だが。


 今、オリヴィアが目の前にいる。


 笑っている。

 俺の名前を呼ぶ。

 会いに来る。


 それを思った瞬間、胸の奥に鈍い痛みが走った。


 ……もし。


 前世の俺が、少しでも人を拒絶しなかったら。


 最後は、違ったのか。


 その考えが浮かんだ瞬間、呼吸が止まりそうになった。


 ——後悔。


 理解した瞬間、強い嫌悪感が走る。


 無意味だ。


 過去は変わらない。

 今さら考えても遅い。


 その通りだ。

 完全に。


 なのに、胸の痛みは消えない。


 もし、誰か一人でもちゃんと向き合っていたら。

 誰かを、“特別”にしていたら。


 あの最後は、少し違ったのか。


 ……わからない。


 だが今の俺には、その可能性を笑えなかった。


「ルーク?」


 オリヴィアが、不安そうな顔をする。


 俺は、気づけば手を伸ばしていた。


 服を掴む。


 温かい。


 そこにいる。


 その感触だけで、胸の痛みが少しだけ和らぐ。


 ……異常だ。


 完全に、他人に救われている。


 前世の俺なら、絶対に認めない。


 だが今の俺は、否定しきれない。


「へへ」


 オリヴィアが笑う。


 その笑顔を見ていると、胸の奥が静かに温かくなる。


 ……後悔。


 前世では、必要ないと思っていた感情。


 だが今なら、少しわかる。


 後悔とは——


 “本当は欲しかったもの”に、気づいてしまうことなのかもしれなかった。

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