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Ep47. 変わってしまったもの

人間は変わらない。


前世の俺は、そう思っていた。


性格。

価値観。

本質。


表面は取り繕えても、根っこは変わらない。


だから俺は、自分にも期待していなかった。


どうせ同じになる。


傲慢で、孤独で、誰も必要としない人間に。


そう決めつけていた。


……だが。


「ルークー!」


オリヴィアの声。


それだけで、胸の奥が熱を持つ。


安心する。

会えた、と自然に思ってしまう。


——異常だ。


前世の俺には、なかった。


誰か一人で、こんなにも世界の色が変わる感覚。


「今日ね、パン焼くの失敗したの!」


オリヴィアが笑う。


失敗したのに、笑っている。


前世の俺なら理解しない。


失敗は失敗だ。

価値はない。

改善すべき対象。


それだけだった。


だが今の俺は、その失敗談を聞きながら、笑っている顔を見ている。


内容より、表情を。

声を。

そこにいることを。


……変わった。


本当に、少しずつ。


前世なら切り捨てていたものを、今は大事だと思っている。


非合理。

無意味。

非効率。


そのはずなのに、胸の奥はそれを否定しない。


むしろ、必要だと感じている。


「ルーク?」


オリヴィアが、俺の頬をつつく。


柔らかい指。


以前なら煩わしかった。

境界を侵される感覚が、不快だった。


だが今は、その感触に安心している。


……終わっている。

完全に。


そこで、ふと気づく。


前世の俺なら、今の自分を軽蔑している。


他人に依存して、感情に振り回されて、弱くなっている。


そう断定しているはずだ。


……だが。


今の俺は、本当に“弱くなった”のか?


前世の俺は、確かに傷つかなかった。


だが、誰も近づかなかった。


誰も名前を呼ばなかった。

誰も、帰ってこなかった。


静かで、冷たくて、空っぽだった。


今は違う。


怖い。

苦しい。

落ち着かない。


でも、温かい。


笑い声がある。

待つ時間がある。

会いたい相手がいる。


——それは、本当に弱さなのか。


答えは、まだわからない。


だが少なくとも。


前世の頃より、“生きている”気がした。

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