Ep31. 初めての独占欲
欲望は、増殖する。
ひとつ許せば、次が生まれる。
◇ ◇ ◇
前世の俺は。
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それを知っていた。
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だから。
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最初から切る。
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欲しがらない。
執着しない。
期待しない。
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その方が安全だった。
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……だが。
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今の俺は。
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すでに、ひとつ許してしまっている。
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オリヴィア。
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その存在を。
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“特別”として認識している。
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——危険だ。
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理解している。
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だからこそ。
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次に生まれた感情を。
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俺は、強く否定した。
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「オリヴィアー!」
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知らない声。
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子供。
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同年代くらいの男。
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オリヴィアが振り返る。
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「あ、トム!」
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笑う。
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いつもの笑顔。
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だが。
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向けられている相手が、違う。
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……その瞬間。
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胸の奥が。
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ざわついた。
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不快。
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明確に。
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理由は?
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分析。
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オリヴィアは、他人と話している。
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それだけ。
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問題はない。
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当然の行動。
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制限する権利など、俺にはない。
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なのに。
◇ ◇ ◇
なぜ。
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こんなにも、不快だ。
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「今日ね、一緒に遊ぼって言ってたんだ!」
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オリヴィアが笑う。
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その言葉。
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胸の奥が、重くなる。
◇ ◇ ◇
……理解した。
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これは。
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独占欲だ。
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——最悪だ。
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完全に。
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前世の俺が、軽蔑する感情。
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他人を、自分のもののように扱う。
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愚か。
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醜悪。
◇ ◇ ◇
非合理。
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……なのに。
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否定しても。
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感情は消えない。
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むしろ。
◇ ◇ ◇
強くなる。
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オリヴィアが笑うたび。
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知らない男の方を見るたび。
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胸の奥が、ざわつく。
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——面倒だ。
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本当に。
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面倒だ。
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「ルーク?」
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呼ばれる。
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オリヴィアの声。
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俺は、反応しない。
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いや。
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できない。
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感情の整理が追いつかない。
◇ ◇ ◇
「……あれ?」
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オリヴィアが近づく。
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それだけで。
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少し、軽くなる。
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……確定だ。
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完全に。
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影響されている。
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しかも。
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極めて幼稚な形で。
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前世の俺なら、笑っていた。
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他人に嫉妬するなど。
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弱者の感情だと。
◇ ◇ ◇
だが。
◇ ◇ ◇
今の俺は。
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笑えない。
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実際に。
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起きているからだ。
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「ルーク、どうしたの?」
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オリヴィアが顔を覗き込む。
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近い。
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だが。
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今は、それでいい。
◇ ◇ ◇
むしろ。
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離れる方が、不快だった。
◇ ◇ ◇
——危険だ。
◇ ◇ ◇
完全に。
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依存が、形を変えている。
◇ ◇ ◇
独占欲。
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執着。
◇ ◇ ◇
期待。
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前世で切り捨てたものが。
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次々と、生まれている。
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なのに。
◇ ◇ ◇
俺は。
◇ ◇ ◇
もう。
◇ ◇ ◇
完全には、戻れなかった。




