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Ep29. 特別という異常

人間は、平等ではない。


 そんなことは、前世の頃から理解していた。


   ◇ ◇ ◇


 才能。

 環境。

 容姿。

 知性。


   ◇ ◇ ◇


 生まれた瞬間から差はある。


   ◇ ◇ ◇


 だから。


   ◇ ◇ ◇


 平等を語る人間は嫌いだった。


   ◇ ◇ ◇


 現実を見ていない。


   ◇ ◇ ◇


 あるいは。


   ◇ ◇ ◇


 見ないふりをしている。


   ◇ ◇ ◇


 ……だが。


   ◇ ◇ ◇


 “特別”という感覚は。


   ◇ ◇ ◇


 もっと厄介だ。


   ◇ ◇ ◇


 平等ではない。


   ◇ ◇ ◇


 明確に。


   ◇ ◇ ◇


 差をつける。


   ◇ ◇ ◇


 そして。


   ◇ ◇ ◇


 無意識に。


   ◇ ◇ ◇


 優先順位を変える。


   ◇ ◇ ◇


 ——危険だ。


   ◇ ◇ ◇


 極めて。


   ◇ ◇ ◇


 前世の俺は、それを避けていた。


   ◇ ◇ ◇


 特別を作るな。


   ◇ ◇ ◇


 期待が生まれる。


   ◇ ◇ ◇


 執着が生まれる。


   ◇ ◇ ◇


 失った時、壊れる。


   ◇ ◇ ◇


 だから。


   ◇ ◇ ◇


 距離を均一に保っていた。


   ◇ ◇ ◇


 誰にも近づかない。


   ◇ ◇ ◇


 誰も特別にしない。


   ◇ ◇ ◇


 そのはずだった。


   ◇ ◇ ◇


「ルークー!」


   ◇ ◇ ◇


 声。


   ◇ ◇ ◇


 聞こえた瞬間。


   ◇ ◇ ◇


 視線が動く。


   ◇ ◇ ◇


 身体が反応する。


   ◇ ◇ ◇


 ……もう。


   ◇ ◇ ◇


 否定できない。


   ◇ ◇ ◇


 これは。


   ◇ ◇ ◇


 “特別扱い”だ。


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアの声だけ。


   ◇ ◇ ◇


 優先順位が違う。


   ◇ ◇ ◇


 反応速度が違う。


   ◇ ◇ ◇


 影響が違う。


   ◇ ◇ ◇


 ——最悪だ。


   ◇ ◇ ◇


 完全に。


   ◇ ◇ ◇


 前世の禁忌に触れている。


   ◇ ◇ ◇


「今日ね、転んじゃったの」


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアが膝を見せる。


   ◇ ◇ ◇


 擦り傷。


   ◇ ◇ ◇


 浅い。


   ◇ ◇ ◇


 問題ない。


   ◇ ◇ ◇


 治癒魔術すら不要。


   ◇ ◇ ◇


 自然回復で十分。


   ◇ ◇ ◇


 前世の俺なら。


   ◇ ◇ ◇


 そこで思考終了だ。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 今の俺は。


   ◇ ◇ ◇


 視線を止めている。


   ◇ ◇ ◇


 傷に。


   ◇ ◇ ◇


 赤く擦れた皮膚。


   ◇ ◇ ◇


 わずかな出血。


   ◇ ◇ ◇


 ……不快だ。


   ◇ ◇ ◇


 見ていて。


   ◇ ◇ ◇


 妙に。


   ◇ ◇ ◇


 落ち着かない。


   ◇ ◇ ◇


「ちょっと痛かった」


   ◇ ◇ ◇


 笑っている。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 完全に平気ではない。


   ◇ ◇ ◇


 声が少しだけ弱い。


   ◇ ◇ ◇


 ……理解した。


   ◇ ◇ ◇


 これは。


   ◇ ◇ ◇


 “心配”だ。


   ◇ ◇ ◇


 ——ありえない。


   ◇ ◇ ◇


 前世の俺は。


   ◇ ◇ ◇


 他人の軽傷など気にも留めなかった。


   ◇ ◇ ◇


 自業自得。

 注意不足。

 それだけだ。


   ◇ ◇ ◇


 なのに。


   ◇ ◇ ◇


 今は。


   ◇ ◇ ◇


 違う。


   ◇ ◇ ◇


 傷を見ると。


   ◇ ◇ ◇


 落ち着かない。


   ◇ ◇ ◇


 治るとわかっていても。


   ◇ ◇ ◇


 不快感が消えない。


   ◇ ◇ ◇


 ……厄介だ。


   ◇ ◇ ◇


 これが。


   ◇ ◇ ◇


 特別、か。


   ◇ ◇ ◇


 理解した瞬間。


   ◇ ◇ ◇


 強い拒絶感が走る。


   ◇ ◇ ◇


 危険だ。


   ◇ ◇ ◇


 ここから先は。


   ◇ ◇ ◇


 前世で、絶対に避けてきた領域。


   ◇ ◇ ◇


 失えば壊れる。


   ◇ ◇ ◇


 その可能性が。


   ◇ ◇ ◇


 現実になる。


   ◇ ◇ ◇


 だから。


   ◇ ◇ ◇


 止まるべきだ。


   ◇ ◇ ◇


 距離を取るべきだ。


   ◇ ◇ ◇


 今なら、まだ間に合う。


   ◇ ◇ ◇


 ……なのに。


   ◇ ◇ ◇


 俺は。


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアの膝から。


   ◇ ◇ ◇


 視線を外せなかった。


   ◇ ◇ ◇


「ルーク?」


   ◇ ◇ ◇


 呼ばれる。


   ◇ ◇ ◇


 俺は。


   ◇ ◇ ◇


 無意識に。


   ◇ ◇ ◇


 手を伸ばしていた。


   ◇ ◇ ◇


 傷の方へ。


   ◇ ◇ ◇


 触れる寸前で、止まる。


   ◇ ◇ ◇


 ……何をしている。


   ◇ ◇ ◇


 理解不能。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 そこで。


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアが、笑った。


   ◇ ◇ ◇


「だいじょうぶだよ」


   ◇ ◇ ◇


 その言葉に。


   ◇ ◇ ◇


 俺の胸の奥は。


   ◇ ◇ ◇


 少しだけ。


   ◇ ◇ ◇


 軽くなった。


   ◇ ◇ ◇


 ——確定。


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアは。


   ◇ ◇ ◇


 もう。


   ◇ ◇ ◇


 “その他”ではない。


   ◇ ◇ ◇


 特別だ。


   ◇ ◇ ◇


 そして。


   ◇ ◇ ◇


 それは。


   ◇ ◇ ◇


 前世の俺が。


   ◇ ◇ ◇


 最も恐れていた状態だった。

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