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Ep28. 優しさの定義

優しさとは、何だ。


 前世の俺なら、即答していた。


   ◇ ◇ ◇


 “余裕”だ。


   ◇ ◇ ◇


 力がある者が。

 持っている者が。

 損をしない範囲で与える行為。


   ◇ ◇ ◇


 つまり。


   ◇ ◇ ◇


 本質は自己満足。


   ◇ ◇ ◇


 そう定義していた。


   ◇ ◇ ◇


 だから。


   ◇ ◇ ◇


 信用しなかった。


   ◇ ◇ ◇


 優しさは、簡単に裏返る。


   ◇ ◇ ◇


 余裕がなくなれば消える。

 見返りがなければ終わる。


   ◇ ◇ ◇


 実際、何度も見てきた。


   ◇ ◇ ◇


 だから俺は。


   ◇ ◇ ◇


 “優しい人間”を信用しなかった。


   ◇ ◇ ◇


 ……なのに。


   ◇ ◇ ◇


「ルーク、やさしいね」


   ◇ ◇ ◇


 その言葉が。


   ◇ ◇ ◇


 頭から離れない。


   ◇ ◇ ◇


 誤認識。


   ◇ ◇ ◇


 評価ミス。


   ◇ ◇ ◇


 俺は優しくない。


   ◇ ◇ ◇


 その事実は変わらない。


   ◇ ◇ ◇


 花を捨てなかった?


   ◇ ◇ ◇


 だから何だ。


   ◇ ◇ ◇


 ただ捨てなかっただけだ。


   ◇ ◇ ◇


 そこに善性はない。


   ◇ ◇ ◇


 ……はずだ。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 問題はそこではない。


   ◇ ◇ ◇


 なぜ。


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアは、そう判断した。


   ◇ ◇ ◇


 基準が違う。


   ◇ ◇ ◇


 前世の俺と。


   ◇ ◇ ◇


 根本から。


   ◇ ◇ ◇


 価値観が違う。


   ◇ ◇ ◇


 ……面倒だ。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 無視できない。


   ◇ ◇ ◇


 俺は。


   ◇ ◇ ◇


 花を見る。


   ◇ ◇ ◇


 少しだけ萎れている。


   ◇ ◇ ◇


 当然だ。


   ◇ ◇ ◇


 切られた植物は枯れる。


   ◇ ◇ ◇


 生命活動の停止。


   ◇ ◇ ◇


 ただの現象。


   ◇ ◇ ◇


 ……なのに。


   ◇ ◇ ◇


 少しだけ。


   ◇ ◇ ◇


 残念だと思った。


   ◇ ◇ ◇


 ——最悪だ。


   ◇ ◇ ◇


 感情移入。


   ◇ ◇ ◇


 非合理。


   ◇ ◇ ◇


 価値の低いものに対する執着。


   ◇ ◇ ◇


 前世なら、切り捨てている。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 今は。


   ◇ ◇ ◇


 そう簡単に割り切れない。


   ◇ ◇ ◇


「ルーク?」


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアの声。


   ◇ ◇ ◇


 俺は視線を向ける。


   ◇ ◇ ◇


 自然に。


   ◇ ◇ ◇


 もう。


   ◇ ◇ ◇


 意識するまでもない。


   ◇ ◇ ◇


「お花、好き?」


   ◇ ◇ ◇


 質問。


   ◇ ◇ ◇


 ……わからない。


   ◇ ◇ ◇


 花そのものは、好きではない。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 嫌いとも言い切れない。


   ◇ ◇ ◇


 理由は明確。


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアが絡んでいるからだ。


   ◇ ◇ ◇


 つまり。


   ◇ ◇ ◇


 これは花の問題ではない。


   ◇ ◇ ◇


 関係性の問題。


   ◇ ◇ ◇


 ……そして。


   ◇ ◇ ◇


 そこまで分析して。


   ◇ ◇ ◇


 俺は、気づいた。


   ◇ ◇ ◇


 前世の俺は。


   ◇ ◇ ◇


 “人”を中心に物事を考えていなかった。


   ◇ ◇ ◇


 価値。

 結果。

 効率。


   ◇ ◇ ◇


 基準は、常にそこだった。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 今は違う。


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアがいるから。


   ◇ ◇ ◇


 花の意味が変わる。


   ◇ ◇ ◇


 声の意味が変わる。


   ◇ ◇ ◇


 応答の意味が変わる。


   ◇ ◇ ◇


 ……厄介だ。


   ◇ ◇ ◇


 極めて。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 完全に否定もできない。


   ◇ ◇ ◇


「ルーク、きれいなお花見つけたら、また持ってくるね」


   ◇ ◇ ◇


 笑う。


   ◇ ◇ ◇


 その顔を見て。


   ◇ ◇ ◇


 俺は。


   ◇ ◇ ◇


 ほんの少しだけ。


   ◇ ◇ ◇


 思ってしまった。


   ◇ ◇ ◇


 ——また、見てもいい。


   ◇ ◇ ◇


 花を。


   ◇ ◇ ◇


 ……いや。


   ◇ ◇ ◇


 たぶん。


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアの、その顔を。

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