表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/32

Ep27. 欲しがる資格

欲望には、資格が必要だ。


 ——前世の俺は、そう考えていた。


   ◇ ◇ ◇


 力のない者は奪われる。

 価値のない者は捨てられる。


   ◇ ◇ ◇


 だから。


   ◇ ◇ ◇


 欲しがるなら、証明しろ。


   ◇ ◇ ◇


 実力を。

 価値を。

 必要性を。


   ◇ ◇ ◇


 それができない人間に。


   ◇ ◇ ◇


 何かを求める資格はない。


   ◇ ◇ ◇


 ……そう、思っていた。


   ◇ ◇ ◇


 だから前世の俺は。


   ◇ ◇ ◇


 与えられることを信用しなかった。


   ◇ ◇ ◇


 理由が必要だった。


   ◇ ◇ ◇


 成果。

 対価。

 交換条件。


   ◇ ◇ ◇


 そういうものがなければ。


   ◇ ◇ ◇


 受け取れなかった。


   ◇ ◇ ◇


 ——いや。


   ◇ ◇ ◇


 怖かったのだ。


   ◇ ◇ ◇


 理由もなく与えられることが。


   ◇ ◇ ◇


 理解できなかった。


   ◇ ◇ ◇


「ルーク?」


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアの声。


   ◇ ◇ ◇


 俺は、花を握っている。


   ◇ ◇ ◇


 小さな白い花。


   ◇ ◇ ◇


 価値は低い。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 捨てる気になれない。


   ◇ ◇ ◇


 ……最悪だ。


   ◇ ◇ ◇


 理由は、理解している。


   ◇ ◇ ◇


 これは。


   ◇ ◇ ◇


 “オリヴィアがくれたもの”だからだ。


   ◇ ◇ ◇


 物そのものではない。


   ◇ ◇ ◇


 意味の問題。


   ◇ ◇ ◇


 関係の問題。


   ◇ ◇ ◇


 ……非合理だ。


   ◇ ◇ ◇


 極めて。


   ◇ ◇ ◇


「気に入ってくれた?」


   ◇ ◇ ◇


 質問。


   ◇ ◇ ◇


 答えられない。


   ◇ ◇ ◇


 気に入る。


   ◇ ◇ ◇


 その定義が曖昧だ。


   ◇ ◇ ◇


 花に価値はない。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 手放したくない。


   ◇ ◇ ◇


 ……矛盾。


   ◇ ◇ ◇


 俺は。


   ◇ ◇ ◇


 そこで、ふと思った。


   ◇ ◇ ◇


 なぜ。


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアは、これを俺に渡した。


   ◇ ◇ ◇


 理由は?


   ◇ ◇ ◇


 俺は何かしたか?


   ◇ ◇ ◇


 価値を示したか?


   ◇ ◇ ◇


 対価を払ったか?


   ◇ ◇ ◇


 ……違う。


   ◇ ◇ ◇


 何もしていない。


   ◇ ◇ ◇


 ただ。


   ◇ ◇ ◇


 応答しただけだ。


   ◇ ◇ ◇


 視線を返し。

 声を返し。

 存在を返した。


   ◇ ◇ ◇


 それだけ。


   ◇ ◇ ◇


 それだけで。


   ◇ ◇ ◇


 花を渡される。


   ◇ ◇ ◇


 笑いかけられる。


   ◇ ◇ ◇


 “好き”だと言われる。


   ◇ ◇ ◇


 ……理解不能だ。


   ◇ ◇ ◇


 そんな程度で。


   ◇ ◇ ◇


 何かを受け取っていいのか。


   ◇ ◇ ◇


 前世の俺なら。


   ◇ ◇ ◇


 絶対に認めない。


   ◇ ◇ ◇


 価値が足りない。


   ◇ ◇ ◇


 資格がない。


   ◇ ◇ ◇


 そう断定する。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 今の俺は。


   ◇ ◇ ◇


 完全には、否定できない。


   ◇ ◇ ◇


 なぜなら。


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアは。


   ◇ ◇ ◇


 “資格”など見ていないからだ。


   ◇ ◇ ◇


 実力も。

 成果も。

 価値も。


   ◇ ◇ ◇


 何も。


   ◇ ◇ ◇


 求めていない。


   ◇ ◇ ◇


 ……怖い。


   ◇ ◇ ◇


 それは。


   ◇ ◇ ◇


 前世の価値観を、崩す。


   ◇ ◇ ◇


 積み上げてきた理論を。


   ◇ ◇ ◇


 簡単に揺らす。


   ◇ ◇ ◇


 ——危険だ。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 その危険を。


   ◇ ◇ ◇


 完全には、拒絶できない。


   ◇ ◇ ◇


「ルーク、やさしいね」


   ◇ ◇ ◇


 突然の言葉。


   ◇ ◇ ◇


 俺は止まる。


   ◇ ◇ ◇


 ……何だ、それは。


   ◇ ◇ ◇


 誤認識だ。


   ◇ ◇ ◇


 俺は優しくない。


   ◇ ◇ ◇


 前世を知っていれば。


   ◇ ◇ ◇


 そんな評価は、絶対に出ない。


   ◇ ◇ ◇


 なのに。


   ◇ ◇ ◇


 オリヴィアは、そう言った。


   ◇ ◇ ◇


 理由は。


   ◇ ◇ ◇


 花を捨てなかったから。


   ◇ ◇ ◇


 ……それだけ。


   ◇ ◇ ◇


 それだけで。


   ◇ ◇ ◇


 “優しい”になる。


   ◇ ◇ ◇


 理解不能。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 胸の奥が。


   ◇ ◇ ◇


 少しだけ、揺れた。


   ◇ ◇ ◇


 否定したい。


   ◇ ◇ ◇


 否定すべきだ。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 その言葉を。


   ◇ ◇ ◇


 完全には、拒絶できなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ