Ep250. 白樺診療所、始動
アルバートの。
完全分離から。
三日後。
白樺診療所は。
ようやく。
建物らしい形になってきた。
柱。
壁。
屋根。
まだ。
扉も。
窓も。
完全ではない。
でも。
「診療所っぽい」
ノアが言う。
「前よりは」
「前」
「土だけ」
「それと比べる?」
「かなり進歩」
俺。
少し。
笑う。
「ルーク!」
トム。
遠くから。
「そこ!」
「板!」
「また?」
「軽いやつ!」
「なら」
持つ。
前より。
少し。
楽。
「筋力」
ノア。
「ついた?」
「少し」
「建築で?」
「たぶん」
「便利」
「それ」
「もう」
「いい」
◇ ◇ ◇
母。
診療所。
入口。
見る。
「ここ」
「段差」
「少し」
「高くない?」
エリシア。
第三の道。
王都から。
『義足』
『杖』
『車椅子』
「車椅子」
「村に」
「ほぼ」
「ない」
『今後』
『使う人』
『来るかもしれない』
「じゃあ」
「傾斜」
「つける」
トム。
「入口?」
「うん」
「面倒」
言う。
でも。
すぐ。
「分かった」
板。
追加。
傾斜。
作る。
「姉さん」
「何」
「こういうの」
「よく気づく」
『義肢』
『考えてたから』
「じゃあ」
「研究」
「役立ってる」
『良い』
「自分で」
「言う」
『ネイの』
『影響』
「強い」
ネイ。
少し。
『良い』
聞いてた。
「いる?」
『いる』
「仕事」
『水』
「今日」
「使う?」
『うん』
古代水路。
修復。
試験。
問題なし。
診療所。
建設中。
洗浄。
木材。
道具。
水。
必要。
「村長」
「送水」
「同意」
「する」
「診療所側」
俺。
「同意」
ネイ。
『同意』
水。
細く。
流れる。
「すごいな」
トム。
「泉」
「本当に」
「働いてる」
『働く』
「聞こえる?」
俺。
「直接じゃない」
「でも」
「言ってる」
「何て」
「働く」
トム。
笑う。
「じゃあ」
「俺も」
「負けられんな」
『競争?』
「違う」
ネイ。
少し。
楽しそう。
◇ ◇ ◇
昼。
セラ。
今日は。
義足。
十歩。
「二桁」
リア。
嬉しそう。
「数字」
「大事?」
セラ。
「大事!」
「十」
「きれい」
「そう?」
俺。
傷。
確認。
「今日は」
「補助」
「二」
エリシア。
『前半』
『なし』
「五歩」
「自力」
『そう』
「後半」
「二」
セラ。
「行く」
一歩。
二歩。
三歩。
四歩。
五。
止まる。
「大丈夫?」
「うん」
六。
七。
八。
九。
十。
最後。
手すり。
強く。
握る。
でも。
立ってる。
「十!」
リア。
拍手。
ノアも。
拍手。
母。
笑う。
「もう」
「外」
「歩ける?」
セラ。
すぐ。
「まだ」
俺。
「地面」
「平らじゃない」
「方向転換」
「段差」
「練習」
「必要」
「分かってる」
「でも」
「嬉しい」
「うん」
セラ。
義足。
見る。
「これ」
「私の足」
前。
仮。
道具。
そんな。
感じ。
だった。
今。
少し。
変わった。
「そう」
エリシア。
『あなたの』
『足』
セラ。
少し。
笑う。
「完成型」
「いつ?」
『三日後』
「本当?」
『ベルンが』
『持って行く』
「姉さんも?」
『行く』
「また」
『帰る』
その言い方。
自然。
「分かった」
◇ ◇ ◇
午後。
俺。
特例試験。
勉強。
今日は。
倫理。
嫌。
でも。
必要。
「問題」
ダグラス。
「患者が」
「治療を」
「拒否」
「した」
「でも」
「放置すれば」
「命の危険」
「どうする」
俺。
少し。
考える。
「意識」
「ある?」
「ある」
「判断能力」
「ある」
「ある」
「なら」
「説明」
「する」
「それでも」
「拒否?」
「原則」
「治療しない」
「前世の」
「お前なら」
「どうした」
「気絶させて」
「治療」
ノア。
「最悪」
「前世」
「だから」
「でも」
ダグラス。
「本当に」
「目の前で」
「死にそうでも?」
難しい。
「本人が」
「理解して」
「拒否」
「なら」
「勝手に」
「治療」
「できない」
「感情として」
「納得できる?」
「できない」
「でも」
「本人の」
「身体」
「本人」
ダグラス。
頷く。
「次」
「子ども」
「本人」
「治療希望」
「保護者」
「拒否」
「命」
「危険」
「それ」
「難しい」
「だから」
「試験」
嫌。
本当に。
「医術」
「だけなら」
「簡単」
「簡単って」
ノア。
「言う」
「前世」
「腕」
「あった」
「今」
「倫理」
「難しい」
「良い」
母。
横。
「何が」
「難しいと」
「思えること」
「前なら」
「思わなかった?」
「たぶん」
「なら」
「成長」
「それ」
「禁止」
皆。
言う。
◇ ◇ ◇
夕方。
王都。
アルバート。
正式保存体。
制作。
開始。
エリシア。
エレナ。
セオドア。
三人。
担当。
『外見』
エリシア。
「本人」
「希望」
『若い頃』
「何歳」
『三十前後』
「今」
「本来」
「何歳」
『六十以上』
「若返る?」
『保存体』
『だから』
「本人」
「いいの?」
アルバート。
直接。
『鏡で』
『六十代の自分を』
『見た記憶がない』
「じゃあ」
「知ってる」
「自分」
「三十?」
『そうだ』
「分かった」
『ただ』
「何」
『髪』
「白?」
『少し』
「こだわる?」
『何となく』
「本人」
「決める」
『ああ』
良い。
「服」
『白衣』
「研究」
「する気」
『ある』
「村」
「来たら」
「まず」
「研究?」
少し。
間。
『診療所』
「見る」
『その後』
「休む」
『……努力する』
「そこ」
まだ。
苦手。
◇ ◇ ◇
その夜。
ネイ。
『アルバート』
「保存体」
「作ってる」
『見た』
「怖い?」
『少し』
「会える」
『うん』
「触れる?」
『第三の道』
「直接」
「身体」
『分からない』
保存体。
村。
来る。
中央泉。
地下。
物理的に。
離れている。
「ネイ」
「アルバート」
「村」
「来たら」
「何話したい」
長い。
間。
『何も』
「何も?」
『普通』
「何話す」
『分からない』
「じゃあ」
「それで」
「良い」
『鳥肉』
「また?」
『普通』
「それ」
「普通?」
『私には』
そう。
媒介層。
食卓。
鳥肉。
ネイ。
普通。
「じゃあ」
「アルバート」
「来た日」
「鳥肉」
『約束』
「母さん」
遠く。
「聞いています」
『母』
「強い」
『強い』
「二人で」
「言うな」
◇ ◇ ◇
三日後。
村の入口。
また。
王都から。
馬車。
一台。
「来た!」
リア。
走る。
「姉さん?」
「エリシア」
俺。
「ベルン」
「義足」
馬車。
止まる。
最初。
職人。
ベルン。
降りる。
荷物。
大きい。
「完成」
短い。
セラ。
椅子。
薬師小屋。
前。
目。
輝く。
「本物?」
「本物」
ベルン。
「試す」
「今!」
「先」
「傷」
俺。
「確認」
「分かってる」
次。
エリシア。
馬車。
降りる。
「ただいま」
自然。
「おかえり」
俺。
母。
「おかえりなさい」
ノア。
「おかえり」
姉。
少し。
笑う。
そして。
最後。
もう一人。
馬車。
中。
人影。
「誰」
リア。
俺。
止まる。
予定。
聞いてない。
エリシア。
「驚かせた」
「何を」
「本人」
「完成」
「え」
人影。
ゆっくり。
降りる。
男。
三十代。
くらい。
灰色。
少し。
白。
混じる髪。
白衣。
顔。
俺。
記録で。
見た。
「アルバート?」
男。
自分の。
手。
見る。
次。
村。
見回す。
「これが」
「村か」
声。
第三の道。
ではない。
空気。
震える。
本物。
外から。
聞こえる。
「来るの」
「今日?」
「昨日」
エリシア。
「保存体」
「安定した」
「聞いてない」
「驚かせる」
「覚えた」
「誰に」
「ノア?」
ノア。
「僕じゃない」
姉。
少し。
笑う。
◇ ◇ ◇
アルバート。
自分の。
足。
一歩。
出す。
ふらつく。
「危ない」
俺。
支える。
「身体」
「慣れてない」
「ああ」
「三十二年ぶりだ」
「保存体だけど」
「歩ける?」
「一応」
「でも」
もう一歩。
遅い。
「思ったより」
「難しい」
セラ。
遠くから。
「私と」
「同じ?」
アルバート。
セラ。
見る。
「君が」
「セラ?」
「そう」
「義足」
「今日」
「完成」
「なら」
「私より」
「先輩」
「何の」
「歩く練習」
セラ。
少し。
笑う。
「じゃあ」
「一緒」
「練習する?」
アルバート。
一瞬。
驚く。
それから。
「お願いしたい」
何か。
変。
でも。
悪くない。
◇ ◇ ◇
まず。
セラ。
完成義足。
確認。
革。
濃い茶。
足部。
細い。
交換式。
そして。
赤い靴。
「これ!」
セラ。
声。
上がる。
「履ける?」
ベルン。
「そのために」
「作った」
義足。
装着。
前より。
軽い。
「どう」
俺。
「痛くない」
「重さ」
「少し」
「でも」
「仮より」
「楽」
エリシア。
「立つ?」
「立つ」
セラ。
手すり。
持つ。
立つ。
赤い靴。
両方。
床。
つく。
リア。
もう。
泣く。
「また」
セラ。
「だって」
「靴」
「履いてる」
「うん」
セラ。
自分。
足。
見る。
「かわいい」
それ。
一番。
大事。
「歩く?」
俺。
「今日は」
「五歩」
「何で」
「新しい義足」
「慣らす」
「分かった」
ちゃんと。
待つ。
一。
二。
三。
四。
五。
安定。
「どう」
「良い」
セラ。
笑う。
「これ」
「好き」
ベルン。
少し。
頷く。
「なら」
「完成」
◇ ◇ ◇
次。
アルバート。
歩行。
練習。
手すり。
持つ。
「保存体」
エリシア。
「筋力」
「模造」
「でも」
「感覚」
「本人」
「ずれ」
「ある」
「何歩」
アルバート。
「五」
俺。
「セラと」
「同じ?」
「新しい身体」
「だから」
「分かった」
一。
二。
三。
四。
五。
最後。
少し。
疲れた。
「身体」
アルバート。
「重い」
「普通」
セラ。
「私も」
「最初」
「そうだった」
「そうか」
「明日」
「休む?」
セラ。
「必要なら」
「待つ練習」
俺。
セラ。
見る。
「私が」
「言うのは」
「良い」
「何で」
「先輩」
皆。
笑う。
◇ ◇ ◇
夕方。
白樺診療所。
建設現場。
アルバート。
初めて。
見る。
「これが」
「診療所」
「まだ」
「途中」
俺。
「だから」
「見たかった」
柱。
半分。
壁。
一部。
古代水路。
仮設。
流れる。
「この水」
アルバート。
しゃがむ。
「中央泉?」
「ネイ」
「三者同意」
「必要」
「単独」
「なし」
アルバート。
少し。
笑う。
「本当に」
「変わったな」
「誰が」
「皆」
「俺も?」
「かなり」
その言葉。
前。
なら。
腹立った。
今。
少し。
嬉しい。
「アルバート」
「何したい」
「ここで」
男。
診療所。
見る。
「まず」
「見る」
「研究」
「後?」
「ああ」
「珍しい」
「私も」
「そう思う」
◇ ◇ ◇
その時。
第三の道。
ネイ。
『アルバート』
本人。
止まる。
「ネイ」
『外』
「ああ」
『どう』
「怖い」
『うん』
「でも」
「良い」
ネイ。
少し。
『良い』
「君は?」
『寂しい』
「……すまない」
『嫌』
アルバート。
少し。
笑う。
「ありがとうも」
「駄目?」
『少し』
「では」
「また」
『また』
直接。
会ってない。
でも。
距離。
ある。
関係。
続く。
◇ ◇ ◇
夜。
約束。
鳥肉。
食卓。
今日は。
多い。
母。
俺。
ノア。
オリヴィア。
ゲイル。
リア。
セラ。
エリシア。
アルバート。
ベルン。
マリア。
「多すぎ」
ノア。
「狭い」
「でも」
俺。
「良い」
アルバート。
椅子。
座る。
食事。
見る。
「食べられる?」
俺。
「保存体」
「味覚」
「ある」
エリシア。
「試験済み」
「本人に」
「聞いて」
「ある」
アルバート。
笑う。
「鳥肉」
一口。
止まる。
「どう」
「……美味い」
ネイ。
『匂い』
「届く?」
『うん』
『良い』
「ネイ」
「アルバート」
「食べてる」
『知ってる』
「どう」
『良い』
食卓。
昔。
媒介層。
作った。
偽物。
今。
本人。
外。
座る。
ネイ。
中。
いない。
でも。
話せる。
それ。
大きい。
◇ ◇ ◇
食後。
アルバート。
少し。
外。
出る。
俺。
ついていく。
夜。
村。
静か。
「どう」
俺。
「何が」
「外」
「三十二年ぶり」
「空」
「本物」
「ああ」
「風」
「ああ」
「怖い?」
「かなり」
「戻りたい?」
少し。
間。
「今は」
「戻りたくない」
良い。
「でも」
「自分が」
「何者か」
「分からない」
「元研究者」
「父親」
「保存体」
「全部」
「そう」
「でも」
アルバート。
診療所。
方向。
見る。
「明日」
「何か」
「手伝えるか」
「建築?」
「力」
「まだ」
「無理」
「なら」
「水路」
「研究?」
少し。
考える。
「まず」
「村長に」
「聞く」
俺。
止まる。
「アルバート」
「何」
「それ」
「良い」
「何が」
「勝手に」
「始めない」
「……学んだ」
「マティアス」
「ネイ」
「皆から」
「かなり」
「遅かった」
「でも」
男。
夜空。
見る。
「遅くても」
「覚えられるなら」
「それで」
「いいのかもしれない」
「うん」
◇ ◇ ◇
翌朝。
村長。
アルバート。
正式。
挨拶。
「アルバート・グレイ」
「研究者です」
「元?」
「今も」
「研究者で」
「いたい」
「そうか」
「ただし」
「勝手な研究は」
「しません」
「ルークから」
「聞いてる」
「怖い?」
アルバート。
自分から。
聞く。
村長。
少し。
考える。
「少し」
「当然です」
「でも」
「話せるなら」
「それでいい」
「ありがとうございます」
「何したい」
「古代水路」
「見たい」
「触る?」
「許可が」
「出れば」
「じゃあ」
「ルーク」
「エリシア」
「井戸職人」
「一緒」
「それなら」
「良い」
簡単。
でも。
条件。
ある。
「一人で」
「しない」
アルバート。
「分かっています」
◇ ◇ ◇
その日の午後。
アルバート。
エリシア。
俺。
古代水路。
見る。
親子。
いや。
父。
娘。
俺。
変な。
組み合わせ。
「ここ」
アルバート。
「術式」
「古い」
「ナエル時代」
「なるほど」
エリシア。
「改良するなら」
「三重遮断」
「私も」
「同じ」
似てる。
二人。
研究。
話。
早い。
「姉さん」
「何」
「アルバート」
「何」
「二人」
「似てる」
「どこが」
「研究」
「早い」
二人。
同時。
「普通」
俺。
笑う。
「やっぱり」
「似てる」
アルバート。
少し。
止まる。
「エドワードの」
「娘だったな」
「そう」
「私は」
「彼と」
「よく」
「研究で」
「争った」
「父と?」
「ああ」
「負けた?」
「半分」
「父は」
「自分が」
「全部」
「勝ったと」
「思ってた」
エリシア。
少し。
笑う。
「それ」
「父らしい」
「そうなのか」
「かなり」
父。
いない。
でも。
こういう。
話。
残る。
◇ ◇ ◇
そして。
夕方。
王立医術院から。
試験用。
書類。
届く。
『特例医術師資格試験』
『二十四日後』
「減った」
ノア。
「日数」
「当たり前」
「勉強」
「進んだ?」
アルバート。
「倫理」
「難しい」
「医術師が?」
「前世」
「そこ」
「弱かった」
「なら」
アルバート。
少し。
考える。
「私も」
「手伝う」
「倫理?」
「反面教師」
「何」
「自分の」
「失敗」
「話せる」
俺。
止まる。
研究。
事故。
息子。
泉。
かなり。
材料。
ある。
「それ」
「かなり」
「役立つ」
「嬉しくない」
「でも」
「使う」
「同意」
「する」
アルバート。
笑う。
◇ ◇ ◇
夜。
白樺診療所。
まだ。
完成。
してない。
でも。
人。
集まり始める。
俺。
母。
ノア。
エリシア。
セラ。
リア。
アルバート。
ネイ。
遠く。
マティアス。
監視下。
ラドウィン。
その先。
皆。
別。
過去。
ある。
役割。
失った。
人も。
いる。
新しい。
役割。
見つけた。
人も。
いる。
でも。
今。
少し。
分かる。
役割は。
誰かに。
与えられるものではない。
自分で。
選んで。
嫌なら。
変えて。
それでも。
いい。
俺も。
前世。
天才医魔術師。
今世。
第三鍵。
その二つ。
もう。
どちらでもない。
これから。
白樺診療所の。
医術師に。
なるかもしれない。
でも。
それも。
永遠に。
同じである必要はない。
まず。
二十四日後。
試験。
受ける。
受かったら。
ここで。
始める。
誰かに。
決められた人生ではなく。
自分で。
選んだ。
仕事を。




