Ep237. 第三の道を作り直す
翌朝。
王都。
第零研究室。
俺は。
久しぶりに。
その地下へ戻った。
前に来た時は。
父の保存体。
零号。
マティアス。
中央の泉。
全部。
危険しかなかった。
でも。
今日は。
違う。
「第三根」
エリシアが。
保存盤を見ながら言う。
「再構築」
「始める?」
「その前に」
俺。
「全員」
「そろってる?」
研究室。
俺。
エリシア。
セオドア。
ダグラス。
ノア。
ゲイル。
母。
遠隔。
村から。
セラ。
リア。
紫の石。
別の保存核。
ナエル。
王城監察房。
ラドウィン。
監視付き。
そして。
中央の泉。
ネイ。
多い。
本当に。
多い。
「今までなら」
ノアが。
周囲を見る。
「研究室に」
「こんなに人」
「入れなかった?」
「前世の俺なら」
「邪魔って」
「言ってた」
「今は?」
「必要」
エリシアが。
少し。
口元を動かす。
「父とは」
「本当に違う」
「悪い?」
「いいえ」
その言い方。
少し。
柔らかくなった。
◇ ◇ ◇
「まず」
俺は。
保存盤の前へ。
紙を広げる。
「第三根で」
「残す機能」
一。
遠隔対話。
二。
緊急時の。
救難信号。
三。
医術補助用の。
限定魔力伝達。
「消す機能」
ノア。
紙。
読む。
「強制接続」
「生命力吸収」
「人格保存」
「記憶転写」
「所有権の」
「単独固定」
「全部」
俺。
頷く。
「勝手に」
「つなげない」
「勝手に」
「取れない」
「勝手に」
「残せない」
セオドア。
「技術的には」
「可能だ」
「問題は」
「管理権」
そこ。
今日。
一番。
難しい。
「五人?」
ノア。
「ネイ」
「ナエル」
「セラ」
「リア」
「エリシア」
「ラドウィンも」
俺。
「六人」
「多い」
紫の欠片。
ネイ。
『多い』
「でも」
「良い」
『良い』
もう。
そこ。
慣れた。
「全員一致?」
ダグラス。
「それだと」
「緊急時」
「遅い」
「多数決?」
ゲイル。
「危険な操作を」
「多数だけで」
「通すのも」
「怖い」
エリシア。
「権限を」
「三段階に」
「分ける」
「どういうこと」
「通常対話」
「救難」
「強制停止」
紙。
書く。
「通常対話は」
「二者同意」
「話したい側と」
「受ける側」
「だけでいい」
「それなら」
俺。
「ネイと」
「俺が」
「話す時」
「他の全員へ」
「許可」
「取らなくていい」
「そう」
「救難は?」
「送信側のみ」
「命の危険がある時」
「許可を」
「待てない」
「でも」
「受ける側へ」
「強制的に」
「魔力を入れない」
「信号だけ」
「良い」
セオドア。
頷く。
「強制停止」
「ここだけ」
「管理者の」
「複数承認」
「何人」
ラドウィン。
遠隔。
「三人」
「少ない」
母。
すぐ。
「六人中三人では」
「半分です」
「なら」
エリシア。
「四人」
ネイ。
『四』
「本人も」
「一票?」
俺。
『私も』
「当然」
ラドウィン。
少し。
間。
「それでいい」
「泉自身が」
「停止に」
「反対する場合も」
「四人で止められる?」
「そうする」
ネイ。
すぐ。
『良い』
「怖くない?」
『怖い』
「でも?」
『必要』
自分を。
止める権限を。
他人へ。
渡す。
簡単。
ではない。
「ネイ」
俺。
「もし」
「四人が」
「間違ったら?」
『話す』
「停止された後?」
『うん』
「解除は?」
エリシア。
「別条件」
「五人承認」
「厳しい」
ノア。
「止めるより」
「戻す方が」
「難しい?」
「安全側」
ダグラス。
「それでいい」
ラドウィン。
「私も賛成だ」
ネイ。
『私も』
「決まり」
◇ ◇ ◇
「セラ」
俺。
紫の石へ。
「聞こえる?」
『聞こえる』
「リアも?」
『いる』
少し。
遠い。
でも。
声。
はっきり。
「第三流路」
「管理者として」
「二人」
「入る?」
セラ。
間。
『入る』
リア。
『私も』
「理由」
エリシアが。
あえて。
聞く。
『私たちの』
『流路だから』
セラ。
『また』
『誰かに』
『勝手に』
『使われたくない』
「良い理由」
エリシア。
すぐ。
『でも』
リア。
『ネイと』
『話せる道は』
『残したい』
「どうして」
『友達だから』
研究室。
静か。
ネイ。
少し。
反応。
『友達』
「嫌?」
俺。
『違う』
「嬉しい?」
『……うん』
リア。
遠隔。
笑う。
『じゃあ』
『友達』
『うん』
ネイ。
少し。
声。
小さい。
『良い』
◇ ◇ ◇
「ナエル」
次。
『はい』
「管理」
「参加する?」
『します』
「ネイが」
「また」
「人を」
「離せなくなったら」
「止められる?」
長い。
沈黙。
『止めます』
ネイ。
何も。
言わない。
『嫌われても』
ナエル。
『止めます』
ネイ。
少し。
影。
揺れる。
『嫌うかも』
『それでも』
『止めます』
正しい。
たぶん。
でも。
痛い。
『でも』
ネイ。
『後で』
『話す』
ナエル。
声。
柔らかく。
『はい』
「それでいい」
俺。
◇ ◇ ◇
「エリシア」
「私は」
「参加する」
「もう」
「決めた?」
「昨日」
「考えた」
「理由」
姉。
少し。
考える。
「ネイを」
「まだ」
「完全には」
「信用していない」
ネイ。
『知ってる』
「でも」
「消す以外の方法が」
「あるなら」
「それを」
「確かめたい」
「研究として?」
「それも」
「他は」
少し。
間。
「自分で」
「何かを」
「選ぶ練習」
俺。
少し。
笑う。
「練習」
「悪い?」
「良い」
エリシア。
今度は。
少し。
笑う。
◇ ◇ ◇
「ラドウィン」
最後。
老人。
遠隔。
「参加する」
「理由」
「監視」
「短い」
「十分だ」
「ネイを」
「止めるため?」
「必要なら」
「そうだ」
「でも」
老人。
続ける。
「人間側が」
「また」
「泉を」
「利用しようとした時」
「止める役も」
「必要だ」
全員。
少し。
黙る。
「自分も」
「含めて?」
エリシア。
厳しい。
「含めて」
「本当に?」
「私が」
「第三鍵を」
「作ろうとした」
「その事実は」
「消えない」
「なら」
「私だけを」
「監視側へ」
「置くのも」
「危険だ」
ラドウィン。
自分。
対象。
入れた。
「それなら」
俺。
「六人」
「全員」
「互いを」
「止められる」
「そうしろ」
「命令?」
「提案だ」
「少し」
「成長」
「黙れ」
ノア。
笑う。
◇ ◇ ◇
「では」
セオドア。
保存盤へ。
両手。
「第三根」
「再構築開始」
『旧構造』
『読み込み』
紫。
研究室の。
床。
広がる。
『強制接続機構』
『削除』
一つ。
『生命吸収機構』
『削除』
二つ。
『人格固定機構』
『削除』
三つ。
『記憶転写機構』
『削除』
ノア。
小さく。
息。
吐く。
自分へ。
使われたもの。
消える。
「大丈夫?」
俺。
「うん」
「良かった?」
「すごく」
『単独所有権』
『削除』
リア。
セラ。
二人。
共同。
でも。
これから。
六人。
管理。
『対話経路』
『再構築』
紫。
細く。
柔らかい。
前みたいな。
脈。
ではない。
糸。
『救難信号経路』
『追加』
『医術補助経路』
『制限付き追加』
エリシア。
「補助上限」
「低く」
「最初は」
「どれくらい」
「通常魔力の」
「五パーセント」
「少ない」
「だから」
「安全」
「セラの」
「義足」
「足りる?」
「最初は」
「これでいい」
「足りなければ」
「本人の同意で」
「再調整」
「分かった」
◇ ◇ ◇
『管理者登録』
『一』
『ネイ』
『二』
『ナエル』
『三』
『セラ』
『四』
『リア』
『五』
『エリシア』
『六』
『ラドウィン』
表示。
一人ずつ。
「ルーク」
ノア。
「入らない?」
「入らない」
「いいの?」
「俺」
「第三鍵」
「終わった」
「第三根まで」
「管理しなくていい」
「でも」
「話す」
「使う側」
「それで十分」
父。
ずっと。
研究。
管理。
鍵。
全部。
俺へ。
つながっていた。
でも。
今。
外れる。
少し。
寂しい。
少し。
軽い。
両方。
『管理者登録』
『完了』
『名称』
『第三根』
ネイ。
『変えたい』
「名前?」
『うん』
「何に」
少し。
間。
『第三の道』
俺。
止まる。
「それ」
「名前?」
『分かりやすい』
ラドウィン。
「技術名称として」
「曖昧すぎる」
ネイ。
『嫌?』
「……正式名は」
「別にしろ」
『第三の道』
「通称なら」
「認める」
ノア。
「折れた」
「うるさい」
「正式名」
エリシア。
紙。
書く。
「相互同意型」
「遠隔魔力対話流路」
「長い」
俺。
「正確」
「でも長い」
ダグラス。
「通称」
「第三の道でいい」
セオドア。
諦め。
『正式登録』
『相互同意型遠隔魔力対話流路』
『通称』
『第三の道』
決定。
ネイ。
『良い』
満足。
◇ ◇ ◇
「試験」
エリシア。
「最初」
「誰」
リア。
『私』
「相手」
『ネイ』
「同意」
ネイ。
『する』
第三の道。
起動。
紫。
静か。
リア。
村。
ネイ。
地下。
『聞こえる?』
『聞こえる』
ただ。
それだけ。
魔力吸収。
なし。
記憶混入。
なし。
生命負荷。
なし。
「数値」
セオドア。
「安定」
「異常なし」
次。
セラ。
ナエル。
『聞こえますか』
『聞こえる』
「異常なし」
次。
エリシア。
ラドウィン。
「聞こえる?」
『聞こえる』
「嫌」
『私もだ』
「切る?」
『まだ』
「じゃあ」
「少し」
ノア。
笑う。
「そこ」
「本当に」
「家族みたい」
二人。
同時。
「違う」
息。
合う。
「似てる」
俺。
エリシア。
睨む。
「あなたも」
「少し」
「腹立つ」
「ラドウィンに?」
「違う」
「弟に」
弟。
また。
少し。
胸。
動く。
◇ ◇ ◇
「強制停止」
最後。
試験。
ネイ。
「わざと」
「無許可接続」
「試す?」
ネイ。
『嫌』
「試験だけ」
『嫌』
「じゃあ」
俺。
「無理に」
「やらない」
ラドウィン。
「それでは」
「機能確認が」
「できん」
「模擬で」
エリシア。
「実接続は」
「必要ない」
「そうしろ」
模擬信号。
『強制接続違反』
発生。
管理者。
六人。
判断。
「停止賛成」
ラドウィン。
「賛成」
エリシア。
『賛成』
ナエル。
『賛成』
セラ。
四。
『強制停止』
『成立』
ネイ。
『私』
「賛成しなくても」
「止まった」
『怖い』
「でも」
「必要」
『うん』
続いて。
解除。
五人。
承認。
『再開』
「成功」
セオドア。
「第三の道」
「稼働可能」
誰も。
歓声。
上げない。
でも。
空気。
明らかに。
変わる。
父たちが。
恐れ。
封じ。
支配しようとした。
第三の根。
それが。
今。
初めて。
人と泉が。
互いに。
同意して。
使う道へ。
変わった。
◇ ◇ ◇
「ネイ」
俺。
「どう?」
『軽い』
「何が」
『道』
「前は?」
『引っ張る』
『たくさん』
「今」
『話すだけ』
「良い?」
『良い』
少し。
間。
『寂しい』
「根」
「二つ」
「なくなったから?」
『たぶん』
「第三の道」
「ある」
『うん』
「ナエル」
『いる』
「リア」
『いる』
「セラ」
『いる』
「皆」
『外』
「でも」
「話せる」
『うん』
ネイ。
少し。
静か。
『これ』
『良い』
「うん」
◇ ◇ ◇
作業。
終わる。
俺。
椅子。
座る。
思ったより。
疲れた。
「何も」
「してないのに」
ノア。
「頭」
「使った」
「それ」
「疲れる」
母。
水。
渡す。
「飲んで」
「はい」
エリシア。
横。
設計図。
閉じる。
「ルーク」
「何」
「第三根」
「終わった」
「うん」
「次」
何。
「義足」
「早い」
「セラの」
「設計」
「昨日」
「途中」
「今日は」
「休みます」
母。
「でも」
エリシア。
「明日」
「なら」
母。
少し。
考える。
「午前だけ」
「分かった」
俺。
笑う。
「許可」
「取るの」
「慣れた?」
エリシア。
少し。
不満そう。
「必要なら」
「取る」
「良い」
「また」
「言った」
ノア。
「何」
「やっぱり」
「姉弟」
「うるさい」
今度。
二人。
同時。
また。
ノア。
笑う。
◇ ◇ ◇
その時。
セオドアの。
伝令板。
光る。
王城。
監察局。
『マティアス・グレイ』
『第一回審理』
『明後日』
「早まった?」
俺。
「当初」
「十日後」
セオドア。
「予備審理だ」
「罪状確認」
「証人」
「呼ばれる?」
「ルーク」
「ノア」
「エリシア」
「そして」
少し。
間。
「村から」
「セラとリアの」
「遠隔証言を」
「王城が認めた」
「本人たち」
「知ってる?」
「今」
「正式通知を」
「送る」
「選べる?」
「証言拒否も」
「可能」
「なら」
「本人たちに」
「決めてもらう」
「もちろん」
審理。
罪。
許し。
それ。
第三の道を。
作り直したからといって。
消えない。
マティアスが。
何をしたか。
ノア。
セラ。
リア。
そして。
俺。
向き合う。
必要。
◇ ◇ ◇
夕方。
村。
リアから。
第三の道。
初めて。
正式な。
連絡。
『ルーク』
「聞こえる」
『すごい』
「紫の欠片」
「なくても?」
『うん』
「負担」
『ない』
成功。
『お姉ちゃん』
「証言」
「する?」
少し。
間。
『するって』
「リアは」
『私も』
「怖い?」
『怖い』
「無理なら」
「止められる」
『でも』
『聞きたい』
「マティアスに」
『どうして』
『私たちだったのか』
セラと。
同じ。
「分かった」
『ルークも』
「証言する」
『ノアも?』
「たぶん」
隣。
ノア。
「する!」
聞こえる。
『聞こえた』
「声」
「大きい」
『元気』
「そう」
少し。
笑い。
第三の道。
今。
こうして。
普通の。
会話。
できる。
それが。
何より。
成功。
「リア」
「ネイ」
「今」
「話せる?」
『あとで』
「何してる」
『ナエルと』
『歌』
「そう」
昔。
閉じ込めた。
相手。
今。
離れた場所で。
歌う。
関係。
残る。
◇ ◇ ◇
夜。
宿。
エリシアは。
今日は。
来ない。
第零研究室。
正式記録。
整理。
俺。
少し。
寂しい?
分からない。
「明日」
会う。
それで。
いい。
母。
食事。
ノア。
向かい。
ゲイル。
ダグラス。
オリヴィア。
「明後日」
ノア。
「マティアス」
「うん」
「僕」
「何言うか」
「決まってない」
「決めなくていい」
「審理で?」
「思ったこと」
「そのまま」
「でも」
「怒るかも」
「怒っていい」
「泣くかも」
「いい」
「許さないって」
「言うかも」
「それも」
「ノアが」
「決める」
少年。
少し。
頷く。
「ルークは」
「何言う」
「事実」
「あと」
「俺が」
「どう思ったか」
「許す?」
「まだ」
「分からない」
「便利」
「うん」
食事。
続く。
そして。
夜。
寝る前。
第三の道。
小さな。
信号。
『ルーク』
「ネイ?」
『話す?』
「今日は」
「少しだけ」
『良い』
「何話す」
『第三の道』
「できた」
『うん』
「嬉しい?」
『うん』
「怖い?」
『少し』
「俺も」
『なぜ』
「便利すぎるものって」
「また」
「誰かが」
「悪く使うかも」
『止める』
「皆で」
『うん』
「それで」
「十分?」
『分からない』
「でも」
「今」
「できること」
「した」
『うん』
ネイ。
少し。
間。
『ルーク』
「何」
『鍵』
『なくなった』
「うん」
『道』
『できた』
「うん」
『違う』
「何が」
『鍵』
『一人』
『道』
『皆』
俺。
止まる。
たぶん。
それ。
この話。
全部。
そうだった。
鍵。
一人へ。
集中。
誰か。
背負う。
第三の道。
皆で。
管理。
皆で。
使う。
「ネイ」
「それ」
「覚えておいて」
『覚える』
「俺も」
『約束』
「約束」
通信。
終わる。
明後日。
マティアス。
審理。
次は。
道を作る話ではない。
壊したものへ。
どう責任を取るか。
その話。
助けられたから。
終わり。
ではない。
変わったから。
罪が。
消えるわけでもない。
それでも。
人は。
変わった後。
どう生きるのか。
俺自身も。
これから。
答えなければならない問いだった。




