Ep227. 三百年前の声
『未識別人格』
『一』
『人格反応年代』
『推定』
『三百年以上前』
保存盤に浮かんだ文字を。
誰も。
すぐには理解できなかった。
「三百年?」
ノアが。
目を丸くする。
「アルバートより」
「ずっと前」
「そうなる」
俺は答えた。
中央の泉。
ネイ。
そこへ。
三十二年前。
アルバートが融合した。
それが。
最初の人間だと。
思っていた。
でも。
違う。
「ネイが」
バーバラが。
紫の欠片を見る。
「一人だった頃から」
「誰かがいたってこと?」
「たぶん」
しかも。
人格として。
独立反応。
「誰なんだ」
ダグラスが。
保存盤の表示を追う。
「記録は?」
第零研究室。
セオドア。
遠隔。
『該当なし』
「医術院より」
「前?」
『第零研究室設立以前』
『王国記録との照合中』
三百年以上前。
今の王国。
成立前かもしれない。
「ネイ本人に」
ノアが言う。
「聞けばいいんじゃない?」
「次」
「二日後」
「約束した」
「でも」
「これ」
「大事」
「そうだけど」
泉は。
待つ練習を。
している。
こちらが。
約束を破れば。
意味がない。
「緊急なら」
母が言う。
「連絡しても」
「いいんじゃないですか」
「でも」
「今すぐ危険?」
保存盤。
『未識別人格』
『活動性』
『低』
『中央泉構造への影響』
『不明』
活動していない。
少なくとも。
今。
暴れたり。
接続を作ったりは。
していない。
「なら」
俺は言った。
「二日後まで待つ」
「調べるだけ」
セオドア。
『王都側で』
『古い記録を探す』
「お願い」
エレナも。
第零研究室で。
事故以前の資料。
確認。
「それまで」
「名前候補?」
ノア。
「ネイは」
「もう決めた」
「違う」
「中の人」
「まだ」
「人って決まってない」
「人格反応って」
「出てる」
「人間とは」
「限らない」
昔。
ネイへ触れた。
別の存在。
魔物。
精霊。
あるいは。
何か。
「でも」
俺は。
保存盤を見る。
「まず」
「ネイに聞く」
自分の中。
それを。
知らない可能性もある。
◇ ◇ ◇
その日の午後。
セラの治療。
ノアと。
ダグラスと。
俺。
三人。
金色の知識石。
初めて。
本格的に。
使う。
「前世の知識」
ノアが。
石を前に。
少し緊張した顔。
「人格」
「本当に」
「ない?」
「昨日」
「零号も」
「確認した」
俺。
「でも」
「使いすぎたら」
「止める」
「うん」
「目的は」
ダグラス。
「セラの義足」
「まず」
「基礎構造」
「歩かせるんじゃない」
「傷口」
「荷重」
「残った筋肉」
「そこから」
前世の俺なら。
一気に。
完成形。
考えた。
今は。
一段ずつ。
「知識石」
ノア。
緑。
流す。
金色。
表面。
術式。
医術。
解剖。
義肢。
魔力補助。
大量。
「多い」
ノア。
顔。
しかめる。
「必要なところだけ」
俺。
「下肢欠損」
「歩行補助」
「魔力制御」
金色。
三つ。
残る。
他。
沈む。
「これ」
ダグラス。
紙。
見る。
「筋肉へ」
「直接」
「補助術式を」
「つなぐ?」
「前世では」
「やってたみたい」
「危険だな」
「うん」
「今は」
「やらない」
セラ。
寝台。
聞いている。
「前世のあなた」
「結構」
「無茶してた?」
「かなり」
ノア。
即答。
「僕の中に」
「入ってた時」
「成功率高ければ」
「やるって」
「感じだった」
「嫌な人」
セラ。
少し笑う。
「否定できない」
俺。
「だから」
「今は」
「違う方法」
紫の流路。
姉妹。
生命維持。
それを。
足へ。
直接。
使わない。
まず。
普通の義足。
身体。
慣らす。
その後。
必要なら。
魔力補助。
「普通の」
「義足って」
セラ。
「あるの?」
「ある」
ダグラス。
「王都なら」
「職人もいる」
「高い?」
「高い」
「お金」
「それは」
俺。
「考える」
「自分で」
「払う」
セラ。
すぐ。
「でも」
「今」
「働けない」
「後で」
「少しずつ」
俺。
「皆で」
「探す」
「何を」
「払える方法」
「助成」
「医術院」
「王家」
「俺の研究協力」
「最後」
「何」
「危険じゃない?」
「危険なら」
「やらない」
母。
離れたところから。
「聞こえていますよ」
「分かってる」
「本当に?」
「うん」
監視。
強い。
◇ ◇ ◇
夕方。
王都から。
セオドアの連絡。
『未識別人格』
『類似記録を一件確認』
「早い」
俺。
『王国成立以前』
『旧神殿記録』
神殿。
「宗教?」
ノア。
「泉を」
「神として」
「祀ってた?」
セオドア。
『可能性が高い』
『旧語名称』
『ナエル』
「ナエル?」
ネイと。
少し。
似ている。
「偶然?」
バーバラ。
「ネイが」
「自分で選んだ音」
俺。
「中に」
「その名前が」
「残ってた?」
可能性。
ある。
『旧神殿記録』
『ナエルは』
『水の底で眠る者』
『人の願いを』
『聞く存在』
「願い」
王弟。
国王。
マティアス。
死者。
戻したい。
失いたくない。
「三百年前から」
「人の願いを」
「聞いてた?」
エレナ。
遠隔。
『それなら』
『ネイが』
『人の感情を集めた起点は』
『アルバートより前』
今まで。
死を。
アルバートから。
初めて学んだ。
そこは。
矛盾しない。
願いを。
意味としてではなく。
反応として。
受けていた。
「ナエルは」
「人?」
『記録上』
『神官』
『性別』
『女性』
「人間」
『可能性が高い』
三百年以上前。
一人の。
神官。
ナエル。
「どうして」
「泉の中に」
続き。
『ナエルは』
『旱魃時』
『泉へ身を捧げた』
何。
「生贄?」
母。
『記録には』
『自ら入水』
『村人を救うため』
自分から。
泉へ。
入った。
アルバートより。
ずっと前。
最初の。
人間。
「また」
俺。
「一人で」
決めた。
誰かを。
助けるため。
自分を。
差し出す。
同じ。
何度も。
「ナエルは」
「今も」
「ネイの中で」
「生きてる?」
保存盤。
『独立人格反応』
『継続』
少なくとも。
何か。
残る。
「アルバートと」
「違う?」
ダグラス。
「混ざってない?」
『混在率』
『極低』
「独立してる」
ノア。
「何で」
アルバートは。
三十二年で。
深く融合。
ナエルは。
三百年以上。
それでも。
独立。
「本人が」
俺。
「混ざるのを」
「拒んだ?」
あるいは。
当時の。
泉。
ネイ。
今ほど。
感情を。
取り込まなかった。
「次」
「絶対」
「聞く」
ノア。
「うん」
でも。
あと。
二日。
◇ ◇ ◇
翌日。
何も。
大きな異変はなかった。
それが。
逆に。
珍しい。
村。
普通。
井戸。
普通。
採石場。
封鎖。
王都。
異常なし。
マティアス。
拘束。
逃走なし。
アルバート。
分離率。
八。
安定。
ネイ。
約束どおり。
こちらへ。
連絡してこない。
「待ってる」
ノア。
「えらい」
「泉に」
「えらいって」
「言う?」
「言っていいと思う」
俺。
セラ。
少し。
身体を起こす。
リア。
横。
歩行。
練習。
「一」
右足。
左。
リア自身。
まだ。
力。
弱い。
「二」
三歩。
止まる。
「疲れた」
「休む」
セラ。
「私より」
「先に」
「歩けるようになりそう」
「お姉ちゃんも」
「後で」
「うん」
その。
普通の練習。
見て。
第三流路。
紫。
安定。
人を。
つなぐ。
でも。
奪わない。
父の。
研究。
初めて。
正しく。
使われている。
◇ ◇ ◇
二日後。
朝。
紫の欠片。
時間。
ほぼ。
同じ。
青。
光る。
『朝』
「おはよう」
俺。
『おはよう』
「待てた?」
『長い』
「でも」
「待った?」
『待った』
「すごい」
ノア。
横から。
「えらい」
少し。
間。
『えらい』
「自分で言うんだ」
「いいじゃん」
準備。
始める。
今日は。
対話参加者。
俺。
ノア。
そして。
エレナ。
「エレナも?」
母。
「ナエルの」
「記録」
「直接」
「伝えた方がいい」
保存体。
媒介層。
参加。
負荷。
低。
「帰還点」
母。
オリヴィア。
ゲイル。
リア。
ダグラス。
「セラは?」
「休む」
「了解」
◇ ◇ ◇
食卓。
今日。
煮込み。
鳥ではない。
「何これ」
ノア。
「魚」
俺。
「母さん」
「変えた」
「泉」
「怒らない?」
「約束は」
「鳥肉だった?」
ノア。
「あ」
「鳥肉って」
「言ってた」
「どうする」
水音。
来る。
青い影。
座る。
すぐ。
鍋。
見る。
『違う』
「ごめん」
俺。
『鳥肉』
「今日は」
「魚」
『約束』
「約束」
「破った?」
少し。
不安。
泉。
ずっと。
人間は。
約束を破る。
そう言っていた。
「母さん」
現実。
「昨日」
「魚にするって」
「俺」
「言った?」
「言っていません」
「俺が」
「忘れてた」
ネイ。
青い影。
揺れる。
『人間』
『約束』
『破る』
「うん」
俺。
認める。
「今回」
「俺が」
「破った」
『なぜ』
「忘れた」
『悪い』
「悪い」
「ごめん」
泉。
沈黙。
長い。
『閉じる』
「何を」
『話』
え。
青い影。
立つ。
「待って」
『約束』
『破った』
「うん」
『なら』
『次』
『ない』
泉。
水へ。
戻ろうとする。
ノア。
「ネイ!」
影。
止まる。
「僕も」
「約束」
「破ったことある」
『なぜ』
「忘れたことも」
「怖くて」
「逃げたことも」
『悪い』
「悪い」
「でも」
「謝ったら」
「終わりじゃなくて」
「次」
「どうするか」
「決められる」
『また』
『破る』
「かもしれない」
『なら』
「その時」
「また」
「話す」
ネイ。
揺れる。
「一回」
「失敗したら」
「全部」
「なくす?」
俺。
『失う前に』
『切る』
「それ」
「今までと」
「同じ」
泉。
止まる。
「人を」
「失うのが怖いから」
「最初から」
「離さない」
「逆に」
「裏切られるのが怖いから」
「最初から」
「関係を切る」
「どっちも」
「怖いから」
「相手の選択を」
「なくしてる」
『でも』
『痛い』
「うん」
「俺も」
「怒られると」
「痛い」
母。
「怒ることと」
「傷つけることを」
「一緒にしないでください」
「今」
「例え」
『母』
『怒る』
「そこ」
「覚えすぎ」
青い影。
ほんの少し。
揺れる。
『笑い』
「そう」
『良い』
「なら」
「今日」
「約束を破った俺と」
「まだ」
「話す?」
長い。
沈黙。
『……話す』
「ありがとう」
『でも』
『次』
『鳥肉』
「分かった」
母。
現実。
「次回は」
「鳥肉にします」
『母』
『約束』
「はい」
「約束します」
ネイ。
落ち着く。
人間の。
約束。
絶対ではない。
破られる。
それでも。
関係。
続けられる。
「今日」
俺。
「聞きたいこと」
『何』
「ナエル」
青い影。
動かない。
明らか。
反応。
「知ってる?」
『知っている』
「中に」
「いる?」
『いる』
「本人?」
沈黙。
『分からない』
「話せる?」
『起きない』
「いつから」
『ずっと』
「三百年?」
『時間』
『分からない』
エレナ。
食卓。
姿。
現れる。
「ネイ」
「古い記録を」
「見つけた」
『銀』
「エレナ」
『知っている』
「私を?」
『アルバート』
『記憶』
「そう」
エレナ。
少し。
複雑な顔。
「ナエルは」
「昔」
「水の神殿の」
「神官だった」
『神官』
「村を」
「旱魃から」
「救うため」
「泉へ入った」
ネイ。
青。
揺れる。
『違う』
「何が」
『旱魃』
『違う』
全員。
止まる。
「記録が」
「間違ってる?」
『人間』
『書いた』
「本当は?」
ネイ。
少し。
形。
崩れる。
『ナエル』
『私を』
『閉じた』
何。
「閉じた?」
『私が』
『外へ』
『出ようとした』
「どうして」
『声』
『聞きたかった』
古い。
ネイ。
まだ。
死も。
恐怖も。
知らない。
でも。
人の声。
聞く。
もっと。
近く。
出る。
「それで」
「何が起きた」
『水』
『多い』
『村』
『壊れた』
旱魃ではない。
逆。
洪水。
「ナエルは」
『来た』
『私に』
『話した』
「何て」
『戻って』
『下へ』
ネイ。
初めて。
人から。
お願いされた。
『私は』
『嫌』
「どうして」
『声』
『近い』
「外に」
「いたかった?」
『うん』
「それで」
『ナエル』
『一緒に』
『入った』
泉へ。
自分から。
生贄ではない。
「ネイを」
「連れて戻るため?」
『そう』
ナエル。
自分を。
道にして。
泉を。
地下へ戻した。
「その後」
『出られない』
「ナエルが?」
『うん』
「どうして」
『私が』
『離さなかった』
また。
最初から。
同じ。
人の声。
近く。
嬉しい。
離したくない。
死を。
知らなくても。
所有。
始まっていた。
「ナエルは」
「離してって」
「言った?」
『言った』
「何で」
「離さなかった」
『一人』
やっぱり。
孤独。
言葉を。
知らなくても。
感覚。
あった。
『ナエル』
『歌った』
「歌?」
リア。
帰還点から。
反応。
『水の歌』
第三の根。
歌。
さらに。
古い起源。
「セラとリアの」
「歌と」
「同じ?」
『違う』
「でも」
「歌を」
「道にするのは」
「ナエルから?」
『そう』
三百年前。
最初。
歌。
人。
接続。
第三流路。
起源。
「ナエルは」
「今」
「何してる」
『眠る』
「起こしたことある?」
『ない』
「怖い?」
『起きたら』
「何」
『離れる』
ネイ。
知っている。
ナエルは。
離れたかった。
眠っている。
起きれば。
また。
そう言う。
「だから」
「起こさない?」
『うん』
ノア。
少し。
怒った声。
「それ」
「駄目」
ネイ。
影。
縮む。
『嫌』
「嫌でも」
「ナエルが」
「決めること」
『いなくなる』
「かもしれない」
『嫌』
「でも」
「閉じ込めるのは」
「違う」
ネイ。
不安定。
食卓。
水。
床へ。
溢れる。
ダグラス。
現実。
「魔力変動」
「上昇」
母。
「ルーク」
「無理しないで」
「うん」
「ネイ」
俺。
「今日は」
「起こさない」
影。
止まる。
『本当』
「うん」
「まず」
「話す」
「どうするか」
「一緒に」
『ナエルと』
「そう」
「起こすかどうかも」
「次」
「決める」
『今』
「決めない」
ネイ。
少し。
落ち着く。
『怖い』
「分かる」
「でも」
「ナエルを」
「眠らせたまま」
「ずっと」
「置くのは」
「よくない」
『なぜ』
「本人の時間が」
「止まってるから」
『時間』
「ネイ」
「待つこと」
「覚えたでしょ」
『うん』
「ナエルは」
「三百年」
「待ってるかもしれない」
青い影。
動かない。
『長い』
「すごく」
『私』
『悪い』
「したことは」
「悪かったと思う」
「でも」
「今」
「変えられる」
『戻せる』
「三百年は」
「戻せない」
『では』
「これから」
「どうするか」
「選ぶ」
同じ。
失ったもの。
戻らない。
それでも。
先。
作れる。
『ナエル』
『怒る』
「たぶん」
『母より』
母。
「比べないでください」
ノア。
笑う。
「ネイ」
「それ」
「覚えたんだ」
『怒る』
『怖い』
「でも」
「話す」
俺。
『逃げない』
「そう」
『難しい』
「うん」
「俺たちも」
ネイ。
長く。
考える。
『次』
『起こす』
「いい?」
『怖い』
「皆」
「いる」
『多い』
「その方がいい」
『分かった』
決めた。
自分で。
ナエルを。
起こす。
「その前に」
エレナ。
「アルバートの分離」
『五』
「今日も?」
『うん』
「構造」
「大丈夫?」
『大丈夫』
保存盤。
現実。
確認。
安定。
「じゃあ」
「五」
分離。
開始。
『八』
『九』
『十』
ネイ。
震える。
でも。
前回より。
小さい。
『十一』
『十二』
『十三』
五。
完了。
『アルバート分離率』
『十三』
『中央泉構造安定率』
『九十九』
安定。
空隙。
『新規構造』
『失敗』
「失敗?」
ノア。
『魚』
全員。
少し。
止まる。
「今日の?」
『約束』
『破った』
「そこ」
「残すの?」
『私の』
「うん」
失敗も。
自分の経験。
約束を。
破られた。
怒った。
でも。
話した。
関係。
続いた。
『新規構造』
『修正』
『約束』
『破損後』
『継続』
「すごい」
俺。
本当に。
治療。
進む。
『他者人格混在率』
『七十四』
『七十』
下がる。
四。
「ネイ」
「今日」
「終わろう」
『次』
「二日後」
『鳥肉』
「今度こそ」
母。
「約束します」
『母』
『信じる』
少し。
胸。
熱くなる。
約束。
破られた後。
また。
信じる。
それ。
大きい。
「ナエル」
「次」
「起こす?」
『うん』
「アルバートも」
『五』
「毎回」
「五ずつ」
『安全』
「そう」
『ルーク』
「何」
『怖い』
「ナエルが?」
『怒る』
「一緒に」
「怒られよう」
『なぜ』
「俺も」
「ネイ側に」
「いるから」
『私が』
『閉じた』
「そう」
「でも」
「今」
「開くのを」
「手伝う」
責任。
全部。
ネイだけ。
背負わせない。
「話す時」
「俺も」
「そこにいる」
『約束』
「約束」
青い影。
消える。
媒介層。
薄くなる。
「ルーク!」
リア。
帰還。
「名前!」
「ルーク・E・オリバー」
「私!」
「リア」
「ノア!」
「ノア」
「魚!」
「煮込み」
「鳥!」
「次回」
ノア。
「大丈夫」
目。
開く。
皆。
いる。
ネイ。
いない。
でも。
関係。
続く。
◇ ◇ ◇
接続後。
保存盤。
新しい表示。
『未識別人格』
『識別更新』
『ナエル』
『状態』
『休眠』
「起こす方法」
俺。
セオドア。
『中央泉意識の』
『自主解放で可能』
ネイが。
離すと。
決めれば。
起こせる。
「危険」
『不明』
「ネイに?」
『双方』
「ナエルにも?」
『三百年以上の』
『休眠』
『人格安定性』
『予測不能』
起きた。
直後。
壊れる。
可能性。
「保存体に」
「移す?」
ノア。
「先に」
「ナエル用の」
「保存核」
「作る?」
俺。
良い。
「エレナ」
連絡。
『賛成』
『起こしてから』
『器を探すより』
『先に』
『逃げ場を作るべき』
また。
誰かが。
消えるしかない。
そうならないように。
先。
準備。
「正式保存核」
「空き」
セオドア。
『一つ』
「アルバート用?」
『現在』
『アルバートが占有』
「増設」
『可能』
「時間」
『四日』
次の対話。
二日後。
間に合わない。
「じゃあ」
「ナエル起こすの」
「四日後にする?」
俺。
ネイとの。
約束。
次。
起こす。
でも。
安全準備。
必要。
「約束」
また。
変更。
泉へ。
伝えないと。
「今」
「連絡していい?」
母。
「これは」
「予定変更」
「約束に関係する」
「うん」
紫の欠片。
俺。
直接接続。
しない。
文字だけ。
『次回』
『ナエル解放』
『四日後へ変更希望』
少し。
待つ。
『なぜ』
『保存先準備』
『ナエル安全のため』
長い。
間。
『二日』
「まだ」
ノア。
「待ちたくないんだ」
『二日後』
『話す』
『四日後』
『起こす』
あ。
「なるほど」
「対話は」
「予定どおり」
「ナエルだけ」
「四日後」
『そう』
「それなら」
「できる」
『約束』
「約束」
泉。
自分で。
折衷案。
出した。
ノア。
笑う。
「交渉」
「上手くなった」
返答。
少し。
遅れて。
『えらい』
自分で。
また。
「ネイ」
「それ」
「気に入った?」
『良い』
通信。
切れる。
◇ ◇ ◇
夜。
第零研究室。
マティアスから。
初めて。
直接。
俺宛の。
手紙。
伝令。
届く。
『ルークへ』
短い。
『父上の分離人格』
『十三パーセント』
『以前より』
『本人らしくなった』
アルバートの。
泉由来部分。
薄くなっている。
『今日』
『私の幼い頃の名を』
『間違えた』
「間違えた?」
ノア。
覗く。
『昔』
『父上は』
『よく』
『マティと呼んだ』
『だが今日は』
『マティアスと呼んだ』
「それ」
「本人らしくない?」
続き。
『私は』
『少し寂しかった』
でも。
『同時に』
『安心した』
『父上が』
『泉の中の記憶ではなく』
『今の私を』
『見ようとしている気がした』
呼び名。
昔。
変わらないもの。
それを。
残すだけが。
関係ではない。
『私は』
『父上を』
『昔の父へ戻したかった』
『だが』
『戻す必要はないのかもしれない』
マティアスも。
学び始めた。
『今の父上と』
『これから』
『話せればいい』
最後。
『裁判の日程が決まった』
王都。
『十日後』
罪。
現実。
待っている。
『それまでに』
『父上の分離が』
『終わらなくても』
『私は』
『逃げない』
俺。
紙。
見る。
ノア。
隣。
「信じる?」
「全部は」
「まだ」
「僕も」
「でも」
ノア。
少し。
考える。
「逃げなかったら」
「その時」
「一つ」
「信じる?」
「うん」
「少しずつ」
ネイと。
同じ。
関係。
一度。
壊れた。
それでも。
何をするか。
見る。
決める。
その時。
手紙の裏。
もう一枚。
薄い紙。
挟まっている。
マティアスの字ではない。
震えた。
古い筆跡。
『ルークへ』
「アルバート?」
署名。
『アルバート・グレイ』
十三パーセントの。
本人。
短い文章。
『ナエルを』
『起こすなら』
『一つ』
『覚えておけ』
何。
『彼女は』
『ネイを』
『封じたのではない』
『ネイから』
『何かを』
『隠した』
俺。
止まる。
続き。
『私が』
『中央泉へ入った時』
『ナエルは』
『一度だけ目を覚ました』
『そして』
『私に言った』
『この子に』
『思い出させてはいけない』
この子。
ネイ。
『何を』
『忘れさせたのか』
『私は知らない』
最後。
『だが』
『ナエルが眠っているのは』
『閉じ込められたからではない』
『自分から』
『ネイの記憶を』
『封じ続けるためだ』
三百年以上。
ナエルは。
眠らされていたのではない。
自分で。
眠り続け。
ネイの中にある。
何かの記憶を。
押さえていた。
次に。
ナエルを起こせば。
その封印も。
解ける。
ネイ自身が。
三百年間。
忘れていた何かを。
思い出してしまう。




