Ep224. 泉が失うもの
『進行率』
『二』
『構造安定率』
『九十八』
数字が。
ゆっくり動いている。
中央の泉は。
アルバートを。
自分から切り離そうとしていた。
だが。
そのたびに。
泉自身の構造が。
少しずつ崩れていく。
「このまま」
バーバラが。
保存盤を見る。
「進めても大丈夫なの?」
「分からない」
俺は答えた。
さっき。
泉へ。
失う練習をしようと言った。
でも。
本当に。
泉そのものが死ぬなら。
話が違う。
「停止できる?」
セオドアが。
遠隔側から。
保存盤へ命令を送る。
『自発分離』
『一時停止要求』
返答。
『拒否』
「拒否?」
ノア。
「泉が?」
「そうだ」
セオドアが。
険しい顔。
『理由』
『約束』
約束。
俺との。
「次に」
「アルバートを」
「連れてくる」
そのために。
分離を進めている。
「でも」
俺は言う。
「死ぬとは」
「言ってない」
『理解不能』
保存盤。
文字。
『分離』
『必要』
『約束』
『実行』
単純。
決めたから。
やる。
俺たちが。
止めるべきか。
「ルーク」
ダグラスが。
こちらを見る。
「どうする」
「止めたい」
「理由は」
「泉が」
「分離の危険を」
「ちゃんと理解してない」
死。
失う。
知った。
でも。
自分が。
今。
どこまで壊れるのか。
分かっていない。
「それなら」
エレナが言う。
「もう一度」
「話すしかない」
「すぐ?」
「今の状態なら」
「対話経路を」
「再構築できる」
ただし。
さっき。
接続したばかり。
俺の身体。
魔力。
まだ。
完全には戻っていない。
「危険率」
「前より上がる?」
セオドア。
「接続者負荷」
「一・七倍」
「人格汚染率」
「最大九パーセント」
前より。
高い。
母。
すぐに。
嫌そうな顔。
「他の人は?」
俺が尋ねる。
「接続者を」
「変えられない?」
「中央泉が」
「今」
「ルークを」
「対話相手として認識している」
別の人間だと。
反応しない可能性。
「じゃあ」
「俺が行く」
「行くではありません」
母。
「話すだけ」
「それでも」
「分かってる」
「一人じゃない」
帰還点。
観測。
前より。
さらに強くする。
「帰還点」
「五人」
俺は言う。
「母さん」
「オリヴィア」
「ノア」
「ゲイル」
「ダグラス」
「俺も?」
ダグラスが。
少し意外そう。
「観測しながら」
「声も」
「かけられる?」
「できる」
「なら」
「入って」
「分かった」
アーヴィン。
外部警戒。
エレナ。
媒介層維持。
セオドア。
切断命令。
マティアス。
今回は。
アルバート情報。
「マティアス」
俺は見る。
「もし」
「泉が」
「分離を止めたら」
「勝手に」
「再開させない?」
「しない」
「父上を」
「出したいが」
「泉を」
「壊すことが」
「父上の望みではない」
約束。
受け入れる。
「じゃあ」
「もう一度」
◇ ◇ ◇
三重円。
光。
食卓。
さっきと。
同じ場所。
母の煮込み。
湯気。
パン。
椅子。
人数。
たくさん。
『媒介層』
『再構築』
「ルーク」
母。
「名前」
「ルーク・E・オリバー」
「帰る場所」
「村」
「食べるもの」
「鳥肉」
「祭り」
「行く」
「冬」
「歩く」
「春」
「王都」
「薬草園」
「ノア」
「ノア」
「ゲイル」
「止める役」
「ダグラス」
「うるさい薬師」
「何だと」
「大丈夫そう」
オリヴィア。
笑い。
その声。
現実。
固定。
『中央泉』
『対話要求』
水音。
前より。
早い。
青い影。
空いた椅子へ。
すぐ座る。
『来た』
「うん」
『アルバート』
『まだ』
「それより」
「止めて」
泉。
形。
揺れる。
『何を』
「分離」
『約束』
「約束は」
「破らない」
「でも」
「今」
「泉が壊れてる」
『壊れる』
「分かってる?」
『少し』
「どれくらい」
『分からない』
「じゃあ」
「止める」
『嫌』
「どうして」
『アルバートを』
『連れてくる』
「次じゃなくていい」
『約束』
「約束は」
「いつまでって」
「決めてない」
泉。
止まる。
『確かに』
「だから」
「先に」
「泉が死なない方法を」
「探す」
『死』
影。
縮む。
『嫌だ』
「うん」
『でも』
『アルバートを』
『離す』
「うん」
『両方』
「できる方法」
「探す」
『あるのか』
「まだない」
『人間は』
『ないものを』
『約束する』
「それは」
「できるって」
「約束じゃない」
「探すって」
「約束」
影。
考える。
『違い』
「結果を」
「決めてない」
「やることだけ」
「決めてる」
泉。
少し。
静かになる。
『探す』
「うん」
『見つからない』
「その時」
「また話す」
『また』
「何回でも」
『多い』
「大丈夫」
『私は』
『時間が』
『分からない』
「なら」
「俺たちが」
「教える」
『朝』
「うん」
『昼』
「うん」
『夜』
「うん」
『次』
「明日」
泉。
言葉。
止まる。
『明日』
初めて。
時間を。
未来として。
理解しようとしている。
「明日」
「また」
「ここで話す」
『鳥肉』
「また?」
『約束』
「分かった」
外。
オリヴィア。
笑う声。
「ルーク」
「毎日」
「煮込みになるよ」
「母さん」
「大丈夫?」
現実の母。
「作ります」
「本当に?」
「泉のためではなく」
「あなたたちのために」
「多めに」
青い影。
少し。
揺れる。
『多め』
「皆で食べるから」
『皆』
「うん」
『私は』
『食べられない』
「匂い」
「覚えられるでしょ」
『記憶』
「それでいい」
泉。
静か。
そして。
『分離』
『止める』
「ありがとう」
『礼』
『なぜ』
「聞いてくれたから」
『私は』
『お前を』
『傷つけた』
「うん」
『それでも』
『礼』
「間違ったら」
「全部」
「嫌いになるわけじゃない」
『分からない』
「俺も」
「前世で」
「かなり」
「間違った」
『知っている』
「見た?」
『一部』
「恥ずかしい」
『女』
「そこは」
「見なくていい」
オリヴィア。
「何の話?」
「後で」
「絶対聞く」
「嫌」
青い影。
一瞬。
形。
揺れる。
『笑い』
「何?」
『これは』
『笑い』
「そう」
『良い』
泉。
人の。
笑いを。
知る。
『アルバート』
『よく』
『笑わなかった』
エレナ。
外から。
「研究中はね」
「料理の時は」
「笑ってた?」
俺。
泉。
『炭』
「覚えてる?」
『卵』
マティアス。
現実。
息を呑む。
泉の中に。
アルバートの記憶。
やっぱり。
ある。
「アルバートを」
「少しだけ」
「出せる?」
『今は』
『危険』
「分かった」
『明日』
「明日?」
『練習』
「分離を」
「壊れない範囲で?」
『そう』
泉が。
自分で。
学び始める。
無理に。
全部切らず。
少し。
戻す。
少し。
離す。
『私は』
『失うのが』
『下手』
「皆」
「最初は」
「下手だと思う」
『お前は』
『下手』
「かなり」
『母』
『もっと』
何。
「母さんが?」
『お前を』
『離すの』
現実。
バーバラ。
「聞こえていますよ」
少し。
怒った声。
泉。
影。
小さくなる。
『怖い』
「母さん」
「怒ると」
「怖い」
『覚えた』
「そこ覚えなくていい」
初めて。
泉と。
会話。
会話らしい。
もの。
成立。
それだけで。
少し。
空気が変わる。
「今日は」
「終わる」
『なぜ』
「俺が」
「疲れる」
『死ぬ』
「死なない」
「でも」
「休む」
『休む』
「また話すために」
『分かった』
泉。
立つ。
青い水。
椅子から。
落ちる。
『明日』
「うん」
『鳥肉』
「しつこい」
『約束』
「分かったって」
影。
消える。
『中央泉意識』
『媒介層離脱』
その瞬間。
保存盤の声。
『自発分離』
『一時停止』
成功。
『アルバート分離率』
『三』
『構造安定率』
『九十七』
止まった。
これ以上。
今は。
崩れない。
俺。
目を開く。
研究室。
全員。
いる。
「戻った」
俺が言う。
「名前」
ダグラス。
「ルーク」
「母」
「バーバラ」
「煮込み」
「鳥肉」
「泉」
「しつこい」
「何」
「鳥肉の話」
「なら大丈夫だ」
基準。
よく分からない。
「止まった」
セオドア。
保存盤を見る。
「本当に」
「自分から」
「分離を止めた」
マティアス。
表示。
三。
その数字から。
目を離さない。
「父上」
小さく。
呼ぶ。
「まだ」
「いる」
エレナ。
答える。
「三パーセント」
「分離できた」
「その部分は」
「どこ?」
マティアス。
「保存されてる?」
セオドア。
確認。
『分離領域』
『中央泉内』
『独立保持』
まだ。
外へは。
出ていない。
でも。
泉本体から。
少し。
離れている。
「なら」
エレナが言う。
「練習を続ければ」
「完全分離できるかもしれない」
「泉を」
「壊さずに」
「可能性は」
セオドア。
計算。
「現時点」
「三十八パーセント」
「低い」
ノア。
「でも」
「昨日まで」
「ゼロだった」
俺は言う。
遠回り。
話す。
練習。
一度で。
解決しない。
「時間は?」
マティアス。
「父上は」
「あと」
「どれくらい保てる」
エレナ。
保存盤。
確認。
『アルバート人格保持率』
『四十一』
低い。
「昔は?」
マティアス。
「二十年前」
「八十三だった」
半分。
削れている。
時間。
無限ではない。
「でも」
俺は言う。
「焦って」
「また」
「誰かを壊したら」
「同じ」
「分かっている」
マティアス。
今度は。
反論しない。
「だから」
「明日まで」
「待つ」
たった一日。
でも。
彼には。
長いかもしれない。
◇ ◇ ◇
その後。
俺たちは。
第零研究室を。
一度閉じることにした。
保存盤。
記録。
そのまま。
マティアスの。
旧権限。
セオドアが。
完全削除。
『第二権限』
『マティアス・グレイ』
『失効』
表示。
消える。
「これで」
ゲイルが言う。
「勝手に」
「研究室を動かせない?」
「そうだ」
セオドア。
「ただし」
「本人が」
「物理的に」
「装置へ触れれば」
「再認証の可能性」
「だから」
「マティアスは」
「村へ」
「連れて帰らない」
母。
当然。
「私も」
「その方がいいと思う」
マティアス自身。
「どこに」
「いる」
アーヴィン。
「王都へ戻る」
「拘束状態で」
「は?」
ノア。
マティアス。
両手。
前へ。
「私は」
「犯罪者だ」
「何をしたか」
「分かっている」
「逃げるつもりはない」
「今さら」
ノアの声。
冷たい。
「そうだな」
「今さらだ」
「裁判?」
俺が尋ねる。
アーヴィン。
「王家霊廟侵入」
「第二鍵窃盗」
「王立医術院警護官への傷害」
「禁制術式の人体使用」
「重大です」
「死刑?」
母。
表情。
硬い。
アーヴィン。
「可能性はあります」
ノア。
少し。
動く。
自分を。
壊した人。
死ぬ。
どう思う。
分からない顔。
「マティアス」
俺。
「怖い?」
男。
少し。
笑う。
「怖い」
泉と。
同じ。
死。
怖い。
「でも」
「逃げない?」
「父上に」
「人を頼れと言われた」
「なら」
「法にも」
「自分を渡す」
「それが」
「正しいかは」
「分からないが」
「少なくとも」
「もう」
「自分だけで」
「判決を決めない」
変化。
遅い。
でも。
ある。
「アルバートと」
「次」
「話せるまで」
「拘束したまま」
「立ち会える?」
アーヴィン。
「王都側の」
「許可が必要です」
「セオドア?」
「私が」
「申請する」
「できる限り」
「立ち会わせる」
マティアス。
頭。
下げる。
「感謝する」
◇ ◇ ◇
礼拝堂。
外。
日。
傾き始めている。
俺たちは。
村へ戻る。
マティアスは。
アーヴィンと。
警護官。
ゲイル。
三人の監視。
両手。
封魔具。
歩く。
逃げない。
ノアは。
俺の横。
「許す?」
少年が。
突然。
尋ねる。
「誰を」
「マティアス」
「まだ」
「僕も」
「許さなくていい」
「うん」
「でも」
ノア。
少し。
考える。
「死んでほしいか」
「分からなくなった」
「それも」
「今」
「決めなくていい」
「ルークも?」
「うん」
「生きてから」
「決める?」
「そう」
ノア。
少し笑う。
「それ」
「便利」
「便利だから」
「使う」
森。
夕方。
道。
村へ。
帰る。
遠く。
煙。
家。
日常。
「母さん」
「今日」
「煮込み?」
「またですか」
「泉が」
「約束って」
「泉は食べないでしょう」
「匂い」
「記憶にするらしい」
母。
溜息。
「では」
「多めに作ります」
「やった」
「あなたのためではありません」
「俺も食べる」
「そこは」
「食べてください」
少し。
笑う。
だが。
村へ。
あと少し。
紫の欠片。
俺のポケット。
淡く。
光った。
リアから。
預かった。
第三流路の。
小さな欠片。
「何」
俺が。
取り出す。
光。
紫。
強く。
一度。
二度。
「リア?」
母。
「危ない?」
分からない。
でも。
これは。
警告。
村。
走る。
ゲイル。
アーヴィンも。
マティアスを。
連れたまま。
速度を上げる。
薬師小屋。
見える。
人。
集まっている。
「何が」
玄関。
開く。
リア。
顔。
青い。
でも。
泉ではない。
泣いている。
「ルーク!」
「どうした」
「お姉ちゃんが」
セラ。
寝台。
意識。
ない。
ダグラスの弟子。
村の薬師助手。
脈。
確認。
「急に」
「魔力が」
「なくなった」
「何?」
紫の石。
共同所有。
その本体。
セラの胸元。
色を失っている。
透明。
リアの紫も。
弱い。
「第三流路?」
俺が近づく。
マティアス。
入口で。
止まる。
セラ。
両脚の傷。
止血。
安定していたはず。
でも。
魔力。
急減。
「どうして」
ノアが。
セラへ触れる。
緑。
診る。
「流路が」
「吸ってる」
「どこへ」
紫の石。
その中心。
細い。
線。
南でも。
王都でもない。
上。
いや。
遠い。
第零研究室。
中央の泉。
「泉?」
母。
「違う」
俺は。
線を見る。
色。
紫。
青ではない。
「アルバート」
マティアスが。
低く言った。
「何」
「父上の」
「分離された三パーセント」
「第三流路へ」
「移っている」
セラとリアの。
人と人を。
つなぐ道。
中央の泉が。
アルバートを。
壊さずに。
自分から離す場所として。
そこを選んだ。
「でも」
ノア。
「何で」
「セラの魔力を」
「使うの」
「独立した人格を」
「維持するため」
ダグラス。
すぐ。
理解。
「器が必要」
「泉の外へ」
「まだ出せない」
「だから」
「第三流路を」
「仮の器にしている」
セラ。
リア。
二人の生命を。
支えるための流路。
そこへ。
アルバート。
第三者。
入れば。
負荷。
「止める」
俺が言う。
「でも」
リア。
泣く。
「止めたら」
「アルバートさん」
「消える?」
「分からない」
「セラは」
「このままだと?」
ノア。
顔。
険しい。
「魔力枯渇」
「危ない」
また。
選択。
誰かを。
助ければ。
誰かが。
危険。
父の言葉。
『泉を閉じる方法と』
『誰かを助ける方法が違うなら』
『助ける方を選べ』
でも。
誰を。
「皆で」
俺は言う。
「決める」
セラ。
意識。
ない。
本人。
選べない。
共同所有者。
リア。
「リア」
「どうしたい」
少女。
泣きながら。
姉を見る。
「お姉ちゃんを」
「助けたい」
「うん」
「でも」
「アルバートさんも」
「消したくない」
「じゃあ」
「第三の方法」
また。
探す。
ノア。
金色の白石。
前世医術知識。
ダグラス。
紫の石。
マティアス。
アルバート。
セオドア。
遠隔。
皆。
いる。
「器を」
俺は言った。
「セラとリアじゃないものに」
「変える」
「何へ」
マティアス。
俺たち。
顔を見合わせる。
保存体。
魂模造核。
人格。
第三流路。
「第零研究室に」
俺は。
思い出す。
「エレナの」
「個別保存石がある」
人間の記憶を。
人格のまま。
短時間。
保持できる。
「アルバートを」
「保存体にする?」
マティアス。
声。
震える。
「本物を?」
「一時的に」
「完全な身体じゃない」
「でも」
「第三流路から」
「外せるかもしれない」
「エレナなら」
ダグラス。
「方法を知っている」
「今」
「連絡」
紫の欠片。
第三流路。
研究室。
これを。
使えば。
エレナへ。
短い。
信号。
送れる可能性。
「泉へ」
「つながらない?」
母。
「第三流路だけ」
「姉妹のもの」
「今は」
「アルバートが」
「入ってる」
「危険」
「うん」
「だから」
「俺は触らない」
リア。
共同所有者。
本人。
「リアが」
「エレナへ」
「助けてって」
「送る」
少女。
涙。
拭く。
紫の石へ。
両手。
「どうやって」
「分からない」
「でも」
「お姉ちゃんを」
「助けてって」
「思って」
リア。
目。
閉じる。
紫。
弱い。
それでも。
光る。
「エレナさん」
「聞こえる?」
沈黙。
セラ。
呼吸。
浅い。
ノア。
魔力。
支える。
「エレナさん!」
「お願い!」
「お姉ちゃんを」
「助けて!」
紫の石。
一瞬。
白。
そして。
声。
遠い。
『聞こえる』
エレナ。
「来た!」
ノア。
『状況は』
俺たち。
説明。
短く。
アルバート。
三パーセント。
第三流路。
セラ。
魔力枯渇。
『なるほど』
エレナ。
『泉が』
『自分なりに』
『考えたのね』
「助けられる?」
リア。
『できる』
即答。
全員。
息。
止める。
『アルバートの分離人格を』
『私の保存石へ』
『一時移送する』
「危険は?」
『私が』
『消える可能性』
何。
「エレナが?」
『保存石の容量は』
『一人格分』
『二人は入らない』
「じゃあ」
「あなたを消して」
「アルバートを」
「入れる?」
『そう』
また。
誰かが。
誰かのために。
消える。
「駄目」
俺が言う。
『でも』
「他の方法」
『今はない』
「探す」
『セラが』
『持たない』
時間。
短い。
『私は』
『保存体』
『本物のエレナは』
『もう死んでいる』
だから。
消えてもいい。
零号と。
同じ。
「それ」
「自分で」
「決めた?」
俺。
『え?』
「エレナ自身が」
「消えたい?」
沈黙。
『……いいえ』
「じゃあ」
「勝手に」
「消える方を」
「選ばないで」
『でも』
「皆で考える」
父。
アルバート。
マティアス。
何度も。
一人で。
決めて。
失敗。
「保存石」
「増やせない?」
ノア。
知識。
「複製」
ダグラス。
「短時間なら」
「空の保存石を」
「作れるかもしれない」
「材料」
母。
「白石」
「紫の欠片」
「金色の知識石」
三つ。
魔力記憶。
人の流路。
保存知識。
組み合わせる。
「前世の俺の」
「保存術式」
ノア。
金色の白石。
「ある」
「人格なしの」
「知識だけ」
「それを」
「使う」
エレナ。
遠く。
『可能性』
「何パーセント」
『五十四』
「半分以上」
俺。
「やる」
「皆」
見る。
「賛成?」
リア。
「やる」
ノア。
「僕も」
ダグラス。
「時間がない」
「試す価値はある」
母。
「セラさんを」
「助けられるなら」
マティアス。
「父を」
「奪わない方法なら」
「頼む」
「決まり」
白石。
紫の欠片。
金色の知識石。
三つ。
机。
並べる。
ノア。
緑。
リア。
紫。
ダグラス。
術式。
母。
セラ。
生命維持。
俺。
触れない。
見る。
指示。
一人ではない。
『簡易保存核』
『構築開始』
白石。
金。
紫。
三色。
混ざる。
新しい石。
透明。
中心。
小さな。
金紫の点。
「できた?」
ノア。
息。
荒い。
エレナ。
遠隔。
『まだ』
『人格定着層』
『不足』
「何が必要」
『本人の』
『自己認識』
アルバート。
自分が。
誰か。
確認する。
「話しかける」
マティアス。
セラ。
第三流路。
そこ。
薄い。
アルバート。
三パーセント。
「父上」
男。
震える声。
「聞こえますか」
紫の石。
反応。
『……マティアス』
「父上」
「あなたを」
「泉から」
「少しだけ」
「出します」
『エレナ』
「います」
遠く。
声。
『ルーク』
「いる」
『泉』
アルバート。
「今は」
「中央」
『一人』
何。
アルバート。
分離された。
三パーセント。
その瞬間。
泉。
少し。
一人。
それを。
心配している。
「戻す?」
俺が尋ねる。
『いや』
「じゃあ」
「どうする」
『明日』
『話せ』
「うん」
『約束』
「約束」
『なら』
『私は』
『少し』
『外へ』
自己認識。
強くなる。
『私は』
『アルバート・グレイ』
『医術研究者』
『父』
『愚かな男』
エレナ。
笑う。
『最後は余計』
『必要だ』
マティアス。
泣きながら。
少し。
笑う。
「父上らしい」
透明の石。
光。
『自己認識』
『固定』
『簡易保存核』
『成立』
「今!」
エレナ。
第三流路。
紫。
セラから。
細い。
青紫。
流れ。
透明の石へ。
移る。
セラ。
呼吸。
少し。
深くなる。
ノア。
「魔力」
「戻ってる」
リア。
泣く。
「お姉ちゃん」
紫の石。
色。
回復。
透明の簡易保存核。
中。
小さな。
青い光。
『アルバート分離人格』
『三パーセント』
『一時保存』
成功。
エレナ。
『私』
『消えてない』
「よかった」
俺。
皆。
息。
吐く。
セラ。
まだ。
意識ない。
でも。
魔力。
戻る。
ノア。
「危険域」
「抜けた」
母。
目。
閉じる。
「よかった」
マティアス。
透明の石。
見つめる。
「触らないで」
俺。
「分かっている」
父。
三パーセント。
目の前。
でも。
手を。
伸ばさない。
「父上」
小さく。
呼ぶ。
石。
青。
一度。
光る。
『聞こえる』
マティアス。
顔。
崩れる。
泣く。
声。
出さない。
ただ。
立つ。
その時。
透明の石。
表示。
『簡易保存限界』
『十二刻』
「十二刻?」
明日まで。
ギリギリ。
「それまでに」
エレナ。
『正式な保存先を』
『作る必要がある』
「第零研究室?」
『可能』
「でも」
俺。
「アルバートを」
「保存体にするのが」
「最終じゃない」
『そう』
「泉から」
「全部」
「離した後」
「本人が」
「どうしたいか」
「聞く」
マティアス。
頷く。
「父上が」
「終わりを望むなら」
「今度こそ」
「止めない」
エレナ。
「私も」
「泉は?」
ノア。
「明日」
「鳥肉」
「また話す」
「そこ」
「本当に毎回?」
「約束だから」
リア。
小さく。
笑う。
緊張。
少し。
抜ける。
でも。
俺は。
透明の石を見る。
アルバート。
三パーセント。
中央の泉。
残り。
九十七。
全部。
切り離す。
泉を。
壊さず。
人も。
失わず。
その方法。
まだ。
ない。
けれど。
今。
一つ。
証明できた。
誰かが。
消えるしかない。
そう思った時でも。
他の方法は。
探せる。
少なくとも。
今回は。
見つかった。
そして。
保存盤。
遠く。
第零研究室から。
新しい記録が届く。
『中央泉』
『構造安定率』
『九十七』
『自発学習反応』
『新規』
「学習?」
俺が。
見る。
『項目』
『喪失以外による』
『関係維持』
何。
続き。
『記憶』
『約束』
『再会』
泉が。
学んでいる。
誰かを。
自分の中へ。
閉じ込めなくても。
関係は。
残せる。
離れても。
また。
話せる。
『中央泉』
『質問』
文字。
一つ。
『離れても』
『戻るか』
俺は。
思わず。
笑う。
「戻る」
ここから。
届くか。
分からない。
それでも。
答える。
「明日」
「また」
「話しに行く」
保存盤。
少し。
間。
『了解』
中央の泉が。
初めて。
誰かを。
つなぎ止めずに。
待つことを。
選んだ。




