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222/226

Ep222. 同じ目的、違う方法

「私は」


「父を」


「泉から」


「死なせてやりたい」


 鉄の扉の向こう。


 マティアスの声は。


 驚くほど静かだった。


「中央の泉を」


「開かなければならない」


 誰も。


 すぐには返事をしない。


 父を取り戻すためではない。


 終わらせるため。


 それなら。


 俺たちと。


 目的は近い。


 だが。


「じゃあ」


 俺は扉へ向かって言う。


「どうして」


「ノアやリアを」


「器にした」


 静寂。


「中央の泉を」


「開くためだ」


「それは分かってる」


「何で」


「人を壊してまで」


「やった」


 マティアスは。


 すぐには答えなかった。


「時間が」


「なかった」


「誰の?」


「父の」


 アルバート。


 三十二年間。


 中央の泉へ。


 融合したまま。


「泉の中で」


「父の人格は」


「削れ続けている」


「あとどれくらい」


「完全に消えるまで」


「分からない」


「数年かもしれない」


「数日かもしれない」


 だから。


 急いだ。


 誰かを。


 犠牲にしてでも。


「ノアは」


「何も悪くない」


「分かっている」


「リアも」


「分かっている」


「セラも」


「……分かっている」


「それでもやった」


「そうだ」


 否定しない。


 言い訳もしない。


「最低」


 ノアが。


 扉へ向かって言った。


「そうだな」


 返事。


 あっさり。


 ノアの顔が。


 逆に。


 困ったように歪む。


「僕の名前」


「消した」


「そうだ」


「前世のルークを」


「入れた」


「そうだ」


「何とも思わなかったの」


「思った」


「じゃあ」


「何で」


「父を」


「終わらせるために」


 同じ答え。


「それしか」


「見えなかった」


 俺は。


 父の記録を思い出す。


『私は』


『一人なら』


『誰も巻き込まないと思っていた』


 マティアスは。


 逆。


 一人では。


 間に合わない。


 だから。


 他人を。


 道具にした。


 どちらも。


 人を見失った。


「扉を開けるな」


 ゲイルが言う。


「話だけなら」


「このままでいい」


「私も」


「その方がいい」


 マティアス。


 今まで。


 泉の身体強化を使った。


 警護官を負傷させ。


 第二鍵を盗み。


 逃げた。


 目的が同じでも。


 信用はできない。


「マティアス」


 俺は尋ねる。


「アルバート本人と」


「話したことある?」


「ああ」


 全員が。


 僅かに反応する。


「中央の泉を」


「開けずに?」


「完全には開けていない」


「どうやって」


「幼い頃」


「父が」


「夢へ出てきた」


「泉主の偽物じゃない?」


「違う」


「何で分かる」


「父しか知らないことを」


「話したからだ」


 王弟のリディアにも。


 同じことがあった。


 記憶を持つ影なら。


 本人しか知らないことを。


 再現できる。


「それだけじゃ」


「本物って言えない」


 俺が言う。


「知っている」


「だから」


「何十年も調べた」


 マティアス。


 父の人格反応。


 魔力波形。


 魂の痕。


 記憶。


 全部。


 検証した。


「結論は」


「泉の中に」


「父はいる」


「本人として?」


「少なくとも」


「完全な模造ではない」


「エレナ」


 俺は。


 銀髪の保存体を見る。


「同じ?」


「私も」


「そう考えている」


 アルバート。


 身体はない。


 魂。


 人格。


 泉と。


 混ざっている。


 だが。


 消えてはいない。


「本人は」


「何を望んでる」


 マティアスへ。


 最も重要な問い。


 扉の向こう。


 長い沈黙。


「分からない」


 意外。


「話したんでしょ」


「昔は」


「戻りたいと言った」


「今は?」


「今は」


「何も言わない」


「どうして」


「父と」


「泉の声を」


「区別できなくなった」


 長い年月。


 融合。


 どこまでが。


 アルバート。


 どこからが。


 中央の泉。


 分からない。


「だから」


 マティアスは言う。


「一度」


「切り離す必要がある」


「切り離して」


「本人に聞く?」


「そうだ」


 俺が。


 さっき。


 言ったこと。


 同じ。


「じゃあ」


「何で」


「俺たちに」


「最初から言わなかった」


「信じると思ったか?」


 即答。


 その通り。


「ノアやリアを」


「器にした人が」


「父を助けたいって言っても」


「信じない」


「だから」


「私は」


「先に結果を作ろうとした」


「中央泉を開き」


「父を切り離し」


「その後で」


「全て説明するつもりだった」


「それ」


「父さんと同じ」


 俺は言った。


「何?」


「一人で決めた」


「終わってから」


「説明すればいいって」


 マティアス。


 黙る。


「結果が正しければ」


「途中で」


「誰を傷つけても」


「いいと思った?」


「よくはない」


「でも」


「やった」


「そうだ」


 矛盾。


 本人も。


 分かっている。


「もう」


「ノアとリアは」


「器じゃない」


「知っている」


「セラも」


「第三の根から切れた」


「知っている」


「なら」


「偽物の第三鍵は」


「完成しない」


「そうだ」


「次は」


「父さんを」


「鍵にする?」


 扉の向こう。


 また。


 沈黙。


「その予定だった」


「だった?」


「零号が」


「自壊した」


「今は」


「別の方法を探している」


 まだ。


 諦めてはいない。


「俺?」


「お前は」


「できれば使いたくない」


 意外。


「どうして」


「エドワードの息子だから?」


「それもある」


「他は」


「お前を」


「本物の第三鍵にすれば」


「成功率は高い」


「同時に」


「父より先に」


「お前が消える可能性がある」


「それは」


「目的に反する」


 父を。


 死なせてやるため。


 別の子どもを。


 消す。


 それでは。


 アルバートが。


 望むとは思えない。


「やっと」


「そこは考えたんだ」


 ノアの声。


「遅かった」


「そうだな」


 マティアス。


 受け入れる。


 扉の内側。


 誰も。


 警戒を解かない。


 でも。


 少し。


 敵の輪郭が変わった。


   ◇ ◇ ◇


「一つ」


 エレナが。


 扉へ近づく。


「マティアス」


 声。


 震えていない。


 だが。


 長い時間を。


 越える名前。


「久しぶりね」


 扉の向こう。


 息を呑む気配。


「……エレナ?」


「保存体だけど」


「記憶は」


「あなたが子どもの頃まで」


「残ってる」


「そうか」


 マティアスの声が。


 初めて。


 年齢より。


 少し若く聞こえた。


「父上は」


「あなたのことを」


「最後まで」


「忘れなかった」


 エレナ。


 表情。


 揺れる。


「それ」


「誰が言ったの」


「父本人だ」


「いつ」


「二十年前」


 マティアスが。


 中央の泉へ。


 短く接続した時。


 アルバート。


 エレナの名を。


 呼んだ。


「何て」


「言った?」


「謝りたいと」


 エレナの瞳が。


 少しだけ。


 伏せられる。


「また」


「謝るのね」


「知っていたのか」


「アルバートは」


「困ると」


「すぐ謝る人だった」


 父。


 エドワードも。


 同じ。


 似ている。


 研究者。


 医術師。


 一人で決め。


 失敗し。


 謝る。


「エレナ」


 俺は。


 彼女を見る。


「アルバートに」


「何を言いたい?」


「今?」


「うん」


「もし」


「話せるなら」


 保存体。


 過去のエレナ。


 三十二年前の記憶。


 本人ではない。


 それでも。


「馬鹿」


 短い。


 全員。


 少し驚く。


「それだけ?」


「まずは」


「馬鹿って言う」


「その後」


「聞く」


「何を」


「今も」


「生きたいか」


 核心。


 泉と融合し。


 三十二年。


 生きる。


 それを。


 本人が。


 望んでいるか。


「マティアス」


 俺は言う。


「それ」


「聞きたい?」


「ああ」


「じゃあ」


「一緒に」


「方法を探す」


 母が。


 すぐに俺を見る。


「ルーク」


「扉は」


「開けない」


「まだ」


 俺は続ける。


「まず」


「エレナの記憶で」


「呼びかける」


「成功率二割」


「それで」


「駄目なら」


「次を」


「皆で考える」


「マティアスも?」


「条件つき」


「何だ」


「ノアと」


「リアと」


「セラに」


「謝って」


 部屋。


 静か。


「それで」


「信用すると思うか」


「しない」


「でも」


「謝るかどうかで」


「話を続ける価値は」


「分かる」


 マティアス。


 長く。


 黙る。


 扉越し。


 何を考えているか。


 見えない。


 やがて。


「ノア」


 名前。


 少年が。


 身体を強張らせる。


「聞こえているか」


「聞こえてる」


「私は」


「お前の名前を奪った」


「記憶を壊し」


「他人の人生を」


「押しつけた」


「目的のために」


「必要だと」


「判断した」


「今は」


「間違いだったと思っている」


 ノア。


 何も言わない。


「すまなかった」


 声。


 ただ。


 それだけ。


 ノアの拳。


 震える。


「許さない」


「当然だ」


「絶対」


「許さない」


「それでいい」


「でも」


 ノアの目。


 涙。


「もう」


「僕をルークって」


「呼ぶな」


「分かった」


「僕は」


「ノア」


「ああ」


「覚えて」


「忘れない」


 次。


 マティアス。


「リアとセラには」


「本人へ」


「直接言う」


「村に来るの?」


 ゲイル。


「今」


「行けば」


「殺されても文句は言えない」


「それは」


「分かっている」


「なら」


「後」


 俺は言う。


「まず」


「アルバート」


「それでいい」


 謝罪。


 何も。


 解決していない。


 でも。


 少し。


 次へ進む。


   ◇ ◇ ◇


「扉」


 ゲイルが。


 俺を見る。


「開けるか」


「まだ」


「マティアスを」


「中へ入れない?」


「入れたら」


「保存盤が危険」


 ダグラス。


「そう」


「なら」


 エレナが言う。


「私が」


「外へ出る」


「出られる?」


「この研究室から」


「私は」


「二百歩まで」


「零号より長い」


「どうして」


「私は」


「施設ではなく」


「個別保存石に」


「核がある」


 エレナの胸。


 白い光。


 小さな石。


「それを」


「持てば」


「さらに遠くへ?」


「可能」


「どれくらい」


「半日」


「距離は」


「不明」


 保存石の。


 魔力が尽きるまで。


 姿を保てる。


「エレナが」


「礼拝堂で」


「マティアスと話す」


「それなら」


「保存盤へ」


「触れさせずに済む」


 アーヴィン。


 頷く。


「護衛は」


「私が」


「俺も」


 ゲイル。


「いや」


 エレナ。


「マティアスは」


「私を攻撃しない」


「何で分かる」


「彼は」


「父親と」


「私を話させたい」


 そうか。


 アルバート。


 エレナ。


 最後。


 会わせたい。


 息子。


「でも」


「一人では行かない」


 俺が言う。


 父の言葉。


 徹底。


「私」


「保存体よ?」


「それでも」


「一人は駄目」


 エレナが。


 少し。


 驚く。


 それから。


 柔らかく笑う。


「エドワードが」


「あなたを」


「見たかった理由」


「少し分かる」


「何」


「人を」


「研究対象じゃなく」


「人として見るから」


 それ。


 前世の俺には。


 なかった。


「じゃあ」


「誰が行く」


 ゲイル。


 アーヴィン。


 二人。


 エレナ。


 三人。


「十分」


 母も頷く。


「ルークは」


「ここ」


「分かってる」


「珍しい」


 オリヴィア。


「またそれ言う」


   ◇ ◇ ◇


 エレナ。


 ゲイル。


 アーヴィン。


 三人が。


 鉄の扉から。


 階段へ出る。


 今度は。


 礼拝堂へ。


 つながっている。


 俺たちは。


 研究室。


 扉を。


 完全には閉めない。


 声が。


 届く程度。


 上。


 足音。


 しばらく。


 静寂。


 そして。


「エレナ」


 マティアス。


 今度は。


 遠く。


 礼拝堂の中。


「大きくなったね」


 エレナの声。


「あなたは」


「変わらない」


「保存体だから」


「そうか」


 少し。


 笑う気配。


「父上に」


「会いたい?」


 マティアス。


「会いたい」


 エレナ。


 即答。


「でも」


「戻したくはない」


「分かっている」


「あなたは?」


「私も」


「戻したくない」


「なら」


「同じじゃない」


「方法が違う」


「ええ」


 エレナ。


 強い。


「あなたは」


「多くの人を壊した」


「知っている」


「アルバートが」


「喜ぶと思う?」


 沈黙。


「思わない」


「なら」


「ここで」


「止まりなさい」


「止まれない」


「なぜ」


「父が」


「消える」


「消える前に」


「本人の意思を」


「聞かなければ」


「私は」


「一生」


「何をしても」


「決められない」


 マティアス。


 父の意思。


 それだけ。


「分かった」


 エレナ。


「じゃあ」


「一緒に聞きましょう」


「方法が」


「あるのか」


「二割」


「低いな」


「あなたの方法より」


「人を壊さない」


 静寂。


「……それで」


「父上へ」


「届かなければ」


「その時」


「次を」


「皆で考える」


 俺が。


 下から。


 大声で言う。


「聞こえてる?」


「ああ」


 マティアス。


「ルーク」


「勝手に」


「次へ行くな」


「一人で」


「決めるな」


「それが」


「条件」


 長い。


 沈黙。


「分かった」


 初めて。


 マティアスが。


 こちらの条件を。


 受け入れた。


   ◇ ◇ ◇


 エレナが。


 礼拝堂の中央へ立つ。


 保存石。


 光。


「アルバート」


 名前を呼ぶ。


「聞こえる?」


 何もない。


 風。


 崩れた屋根。


 鳥。


「中央の泉へ」


 エレナが。


 自分の記憶を。


 細く。


 第三流路ではなく。


 第零研究室の。


 旧観測回路へ流す。


 父と。


 彼女が。


 事故の日。


 最後につながった。


 道。


「アルバート」


「私」


「エレナ」


 一度。


 二度。


 三度。


 反応なし。


「二割」


 ノアが。


 小さく言う。


「難しい」


「まだ」


 俺は。


 月の白石ではなく。


 研究室の観測盤を見る。


 何も。


 表示されない。


 エレナ。


「あなたに」


「まず」


「言いたいことがある」


 少し。


 息を吸う。


「馬鹿」


 観測盤。


 一瞬。


 青。


 点。


「反応!」


 俺が叫ぶ。


 エレナ。


 続ける。


「一人で」


「全部決めて」


「勝手に泉へ入って」


「三十二年も」


「待たせて」


「本当に」


「馬鹿」


 青い点。


 大きくなる。


 礼拝堂。


 空気。


 揺れる。


 マティアスの。


 息。


「父上?」


 エレナ。


「まだ」


「呼ばないで」


「どうして」


「私が」


「先」


 少し。


 笑い。


 昔の。


 関係。


「アルバート」


「あなた」


「今も」


「生きたい?」


 核心。


 青。


 止まる。


 静寂。


 長い。


 そして。


 観測盤。


 文字ではない。


 音。


 低い。


 掠れた。


 男の声。


『……エレナ』


 マティアス。


 息を呑む。


「アルバート?」


『久しいな』


「三十二年よ」


『そんなに』


「あなたには」


「分からなかった?」


『時間が』


『ない』


 泉の中。


 時間感覚。


 違う。


「聞きたい」


 エレナの声。


 震える。


「あなた」


「今」


「どうしたい?」


 長い。


 沈黙。


 その向こう。


 無数の。


 声。


 中央の泉。


 アルバート。


 混ざる。


『私は』


 男の声。


『死にたい』


 マティアス。


 動かない。


 エレナ。


 目を閉じる。


 やはり。


 父は。


 終わりを望んでいた。


 だが。


 続き。


『だが』


 全員。


 顔を上げる。


『泉を』


『殺すな』


 何。


『あれは』


『私のせいで』


『死を知った』


『恐怖を知った』


『生きたいと』


『願うようになった』


「アルバート」


 エレナ。


「なら」


「どうすればいい」


『私だけ』


『切り離せ』


『泉には』


『別の生き方を』


『教えてやってくれ』


 俺の胸。


 何かが。


 強く。


 動く。


 泉を消すか。


 残すか。


 その二つではない。


 人を。


 泉から切り離し。


 泉そのものには。


 別の生き方を。


 選ばせる。


「できる?」


 俺が。


 零号の残した記録を見る。


 第三鍵。


 分離。


 中央核。


 そこに。


 まだ。


 書かれていない道。


 アルバートの声。


 最後。


『ルーク』


 俺の名前。


 中央の泉の中にいる。


 最初の接続者が。


 俺を知っている。


『お前なら』


『泉と』


『話せる』


 母の手が。


 すぐ。


 俺の肩へ。


「ルーク」


「うん」


「一人で」


「行かない」


 俺は答える。


 もう。


 迷わない。


「今度は」


「泉を」


「閉じるためじゃない」


「泉と」


「話す方法を」


「皆で探す」


 礼拝堂。


 マティアスが。


 初めて。


 膝をつく音。


「父上」


 声。


 子どものように。


 震える。


「やっと」


「聞けた」


『マティアス』


 アルバート。


『すまなかった』


「謝らないでください」


 息。


 嗚咽。


「今度は」


「私が」


「あなたを」


「出します」


『一人でやるな』


 マティアス。


 黙る。


 父から。


 同じ言葉。


 俺。


 父。


 アルバート。


 何度も。


 同じ失敗。


『人を』


『頼れ』


 マティアスが。


 長く。


 頭を下げる。


「……はい」


 中央の泉。


 青い反応。


 少しずつ。


 薄れる。


 アルバートの声も。


 遠くなる。


『ルーク』


「何?」


『泉は』


『悪ではない』


『ただ』


『怖がっている』


 最後。


『怖いものを』


『一人にするな』


 声が。


 消えた。


 観測盤。


 青い点。


 消失。


 接触終了。


 俺たちは。


 何も言わない。


 泉は。


 孤独を道にする。


 ずっと。


 そう思っていた。


 でも。


 違う。


 泉自身も。


 孤独だった。


 死を知り。


 怖くなり。


 誰かを。


 つなぎ止め続けた。


 その結果。


 人を。


 傷つけた。


「次」


 俺は。


 静かに言った。


「何をするか」


 皆を見る。


「中央の泉を」


「消さない」


「アルバートだけ」


「切り離す」


「それから」


「泉へ」


「人を奪わなくても」


「存在できる方法を作る」


 ダグラス。


 眉を寄せる。


「そんな方法」


「あるのか」


「まだ」


「ない」


 俺は答える。


「だから」


「探す」


「皆で」


 マティアスも。


 礼拝堂の上から。


 低く答えた。


「私も」


「手伝う」


 敵だった男。


 許したわけではない。


 罪も。


 消えない。


 それでも。


 今。


 同じ目的へ。


 初めて。


 一緒に向かう。


 そして。


 第零研究室の保存盤に。


 新しい文字が。


 静かに浮かんだ。


『中央泉』


『対話経路』


『未登録』


『新規構築を許可』


 今まで。


 封じる。


 切る。


 閉じる。


 それしか。


 考えてこなかった。


 初めて。


 中央の泉へ。


 話すための道を。


 俺たちは。


 作ろうとしていた。


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