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Ep135. 初めての薬棚

道具は持ち主を映す。

前世の研究室もそうだった。整理された机。整列した薬瓶。必要な物が必要な場所にある。それだけで、仕事の質は変わる。

   ◇ ◇ ◇

朝、バーバラは薬棚の前で困った顔をしていた。

「うーん……昨日作った薬草、どこに置いたかしら」

棚には小さな壺が並んでいる。布袋もある。乾燥させた束も吊るされている。量が増えてきた。そのせいで少し分かりにくくなっている。

俺は棚を眺めた。熱冷まし。傷薬。咳止め。種類ごとではなく、作った順に置かれているらしい。効率が悪い。

いや、母一人なら覚えていられるのだろう。だが患者が増えれば話は別だ。

俺は棚を指差した。「う?」

「どうしたの?」

俺は傷薬の壺を持ち、一番下へ置く。次に咳止めを真ん中へ。熱冷ましを一番上へ。同じ種類を並べる。

「……あ」バーバラが目を瞬かせた。「種類ごと?」

頷く。

「なるほど、それなら探しやすいわね」

母は笑いながら並べ替え始めた。俺も手伝う。一つ、二つ、三つ。薬棚が少しずつ整っていく。

   ◇ ◇ ◇

その時だった。玄関が勢いよく開いた。

「バーバラ! 子供が転んだ!」

男が慌てて飛び込んできた。母は立ち上がる。だが、以前と違った。迷わず棚へ向かい、傷薬の段からすぐに目的の壺を取り出す。

「あら、探さなくて済んだ」

母は少し驚いたように俺を見た。「これ、便利ね」

当然だ。必要な物は、必要な時に取り出せなければ意味がない。

バーバラは薬箱を持ち、村人と一緒に走っていく。

   ◇ ◇ ◇

俺は薬棚を見上げた。ほんの少し変えただけ。それだけで仕事が速くなった。

前世で培った知識は、魔法の治療法ではない。だが、こういう小さな工夫なら、この村でも役に立てる。俺は少しだけ笑った。

治療技術だけが医術ではない。誰もが働きやすくなる仕組みを作ることも、また一つの医術なのだと。

そしてその小さな薬棚は、未来の医魔術師ルーク・E・オリバーが、この世界で初めて残した「形ある改善」だった。

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