表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/22

Ep13. それは依存という名前の罠

人に頼る、という行為は。


 どこからが許容で、どこからが過剰か。


 その境界は、曖昧だ。


   ◇ ◇ ◇


 昨日のこと。


 バーバラが戻ってこなかった時間。


 そして、戻ってきた瞬間。


   ◇ ◇ ◇


 あの感覚が、頭から離れない。


   ◇ ◇ ◇


 不安。


 そして。


 安堵。


   ◇ ◇ ◇


 どちらも。


 前世の俺には、不要なものだった。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


 今の俺には。


   ◇ ◇ ◇


 無視できない。


   ◇ ◇ ◇


 ……面倒だ。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


 ひとつ、わかったことがある。


   ◇ ◇ ◇


 あの不安は。


   ◇ ◇ ◇


 原因がある。


   ◇ ◇ ◇


 ——バーバラがいない。


   ◇ ◇ ◇


 単純な話だ。


 対象が消えることで、不安が発生する。


 ならば。


   ◇ ◇ ◇


 消えなければいい。


   ◇ ◇ ◇


 ……簡単な理屈だ。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


 現実はそう単純ではない。


   ◇ ◇ ◇


 バーバラは外に出る。


 必ず。


 毎日ではないにせよ。


 一定の頻度で。


   ◇ ◇ ◇


 それは止められない。


 俺には。


   ◇ ◇ ◇


 ならば。


   ◇ ◇ ◇


 どうする。


   ◇ ◇ ◇


 結論は、ひとつだ。


   ◇ ◇ ◇


 “慣れる”。


   ◇ ◇ ◇


 不在に。


 不確定に。


 不安に。


   ◇ ◇ ◇


 それが合理的だ。


   ◇ ◇ ◇


 ……はずだった。


   ◇ ◇ ◇


「ルーク、ちょっと行ってくるね」


   ◇ ◇ ◇


 バーバラの声。


 すぐ近く。


   ◇ ◇ ◇


 俺は、反応した。


   ◇ ◇ ◇


 無意識に。


   ◇ ◇ ◇


 手を伸ばした。


   ◇ ◇ ◇


「……ぁ」


   ◇ ◇ ◇


 止めるつもりはなかった。


 引き留めるつもりもなかった。


   ◇ ◇ ◇


 ただ。


   ◇ ◇ ◇


 “いなくなる”という事実に。


   ◇ ◇ ◇


 反応した。


   ◇ ◇ ◇


「……ルーク?」


   ◇ ◇ ◇


 バーバラが止まる。


 動きが、止まる。


   ◇ ◇ ◇


 しまった。


   ◇ ◇ ◇


 これは。


   ◇ ◇ ◇


 良くない。


   ◇ ◇ ◇


 明確に。


 良くない方向だ。


   ◇ ◇ ◇


 これは何だ。


   ◇ ◇ ◇


 確認か?


 違う。


   ◇ ◇ ◇


 観測か?


 違う。


   ◇ ◇ ◇


 ——引き留めだ。


   ◇ ◇ ◇


 意図していない。


 だが。


 行動としては、そうだ。


   ◇ ◇ ◇


 非合理。


 極めて非合理。


   ◇ ◇ ◇


「すぐ戻るからね」


   ◇ ◇ ◇


 同じ言葉。


 昨日と同じ。


   ◇ ◇ ◇


 信用していない。


 はずだった。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 “戻ってきた”という実績がある。


   ◇ ◇ ◇


 それが。


   ◇ ◇ ◇


 判断を鈍らせる。


   ◇ ◇ ◇


 ——危険だ。


   ◇ ◇ ◇


 これは。


   ◇ ◇ ◇


 依存だ。


   ◇ ◇ ◇


 対象の存在に。


 安心を求める。


   ◇ ◇ ◇


 消えれば、不安になる。


   ◇ ◇ ◇


 ——非合理の極致。


   ◇ ◇ ◇


 前世の俺が、最も避けたもの。


   ◇ ◇ ◇


 なぜなら。


   ◇ ◇ ◇


 壊れたとき。


   ◇ ◇ ◇


 致命的だからだ。


   ◇ ◇ ◇


 失えば。


 立て直せない。


   ◇ ◇ ◇


 だから。


   ◇ ◇ ◇


 持たない。


   ◇ ◇ ◇


 それが正解だった。


   ◇ ◇ ◇


 ……はずだ。


   ◇ ◇ ◇


 だが。


   ◇ ◇ ◇


 今の俺は。


   ◇ ◇ ◇


 その“正解”に。


   ◇ ◇ ◇


 従えない。


   ◇ ◇ ◇


 理由は、単純だ。


   ◇ ◇ ◇


 ——知ってしまったからだ。


   ◇ ◇ ◇


 温度を。


 声を。


 戻ってくるという事実を。


   ◇ ◇ ◇


 それを知って。


   ◇ ◇ ◇


 何も感じないままでいることは。


   ◇ ◇ ◇


 もう、できない。


   ◇ ◇ ◇


「……いい子にしててね」


   ◇ ◇ ◇


 バーバラが、少しだけ迷ってから言う。


   ◇ ◇ ◇


 迷い。


   ◇ ◇ ◇


 それは。


   ◇ ◇ ◇


 俺のせいだ。


   ◇ ◇ ◇


 引き留めたから。


   ◇ ◇ ◇


 判断を鈍らせた。


   ◇ ◇ ◇


 ——面倒だ。


   ◇ ◇ ◇


 自分が。


   ◇ ◇ ◇


 極めて面倒な存在になっている。


   ◇ ◇ ◇


 それでも。


   ◇ ◇ ◇


 手は、下げなかった。


   ◇ ◇ ◇


 下げられなかった。


   ◇ ◇ ◇


 理由は、明確だ。


   ◇ ◇ ◇


 ——不安だからだ。


   ◇ ◇ ◇


 それ以上でも。


 それ以下でもない。


   ◇ ◇ ◇


 バーバラは、ゆっくりと俺の手を外した。


 優しく。


 無理にではなく。


   ◇ ◇ ◇


 そして。


   ◇ ◇ ◇


 出ていった。


   ◇ ◇ ◇


 扉が閉まる。


   ◇ ◇ ◇


 静寂。


   ◇ ◇ ◇


 俺は。


   ◇ ◇ ◇


 残された。


   ◇ ◇ ◇


 胸の奥に。


   ◇ ◇ ◇


 嫌な感覚が残る。


   ◇ ◇ ◇


 ——これが。


   ◇ ◇ ◇


 依存だ。


   ◇ ◇ ◇


 わかっている。


   ◇ ◇ ◇


 わかっていて。


   ◇ ◇ ◇


 止められない。


   ◇ ◇ ◇


 それが。


   ◇ ◇ ◇


 最も厄介だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ