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104/125

Ep104. 初めての本

知識は力だ。これは前世でも今世でも変わらない。才能よりも、運よりも、知識は裏切らない。少なくとも、俺はそう信じている。

問題は、現在の俺が一歳にも満たない幼児だということだ。非常に問題である。

読みたい。本を読みたい。文字を確認したい。この世界の言語を調べたい。歴史も知りたい、地理も知りたい、医学も魔術も知りたい。だが今の俺に許されている本は、動物の絵本だけだった。

   ◇ ◇ ◇

「わんわん!」

オリヴィアが犬の絵を指差す。

「わん!」

俺は答える。

「すごーい!」

何がだ。犬くらい知っている。前世で犬型魔獣の解剖もした。だが赤子としては優秀らしい。

「じゃあこれは?」

猫。

「にゃ」

「きゃー!」

なぜそんなに喜ぶ。理解できない。

いや、最近は少し理解できる。成長を喜んでいるのだ。オリヴィアも、バーバラも。それ自体は悪くない。問題は、俺がもっと高度な本を読みたいことだった。

   ◇ ◇ ◇

転機は意外なところから訪れた。

数日後、バーバラが棚を整理していた。古い箱を開けると、そこから数冊の本が出てきた。

「懐かしい」とバーバラが微笑む。「お父さんの本だわ」

父。この人生の父親。既に亡くなっている人物。詳しくはまだ聞いていない。だが今はそれより、本である。本だ。文字だ。知識の塊だ。

俺は全力で近づいた。ハイハイで、凄まじい速度で。

「わっ」とバーバラが驚く。「興味あるの?」

ある。非常にある。

俺は本に手を伸ばした。表紙を撫でる。革装丁で、かなり使い込まれている。開くと、文字、文章、図が並んでいた。

読める。完全ではない。だが読める。言語体系は前世の記憶にあるものとは違う。しかしこれまで聞いてきた会話のおかげで推測できる。なるほど、この世界の共通語か。

胸が高鳴る。久しぶりだった、新しい知識に触れる感覚が。

「好きなの?」とバーバラが笑う。「お父さんに似たのかしら」

父も本好きだったらしい。それは初耳だった。

「よし」バーバラは一冊を取り出した。「これはルークにあげる」

絵本ではない。子供向けの簡単な読み物だ。文字も大きい。だが俺にとっては宝物だった。

ようやく始まる。知識を集める時間が、世界を知る時間が。

窓の外では雪が少しずつ溶け始めていた。冬は終わりへ向かっている。そして俺の新しい人生も、ようやく本当の意味で動き始めようとしていた。

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