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103/132

Ep103. 小さな冒険者

失敗は貴重な経験である。前世の俺はそう考えていた。

失敗する。原因を分析する。改善する。次は成功する。極めて合理的だ。

だから、今回の脱走失敗も無駄ではない。むしろ有益だった。問題点が明確になったからだ。

一、オリヴィアの存在。二、目立ちすぎること。三、ハイハイは思った以上に遅い。

致命的である。

つまり、まず必要なのは歩行能力だ。

「んっ……!」

俺は椅子に掴まり、踏ん張り、足に力を込める。

立つ。

成功。

数か月前なら考えられなかったことだ。今では十秒、二十秒なら安定して保てるようになった。成長。素晴らしい。人間の身体は実に興味深い。

「ルーク!」

オリヴィアが叫んだ。「立った!」

大袈裟である。研究成果でもあるまいし。

「バーバラさーん!」

また呼んだ。この少女は本当にすぐ報告する。

「えっ!?」バーバラが飛んでくる。「本当!?」

本当である。

だがその瞬間、足がふらついた。

「おっと」

転倒。尻もち。痛い。少し痛い。

一瞬静かになる。そして。

「きゃー!」「大丈夫!?」

大騒ぎである。転んだだけだ。骨折もしていない。出血もない。診断終了。

だが抱き上げられ、頭を撫でられ、頬をつつかれ、最終的におやつまで貰った。

……赤子とは得な生き物だな。

その日の夕方、窓の外を眺めていた時だった。見慣れない男が通った。村人ではない。服装が違う。荷車を引いている。

「行商人さんだ」オリヴィアが言う。「月に一回くらい来るの」

なるほど。初めて聞く情報だった。

男は村の中心へ向かう。荷車には様々な品が積まれていた。布、道具、薬草らしきものまで見える。

その瞬間、胸の奥が少し高鳴った。

外の世界。村の外。まだ見たことのない場所。

前世の知識はある。だが今の世界を知らない。国も、情勢も、医療技術も、魔術の発展も、何もかも。

知りたい。確かめたい。学びたい。

久しぶりだった。人との繋がりとは別の意味で、純粋な知的好奇心が湧き上がるのは。

歩けるようになったら、この村を調べよう。村を知ったら、今度は外を知ろう。

人生はまだ始まったばかりだ。ようやく俺は、最初の一歩を踏み出そうとしていた。

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