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Ep101. 数か月後の景色

時間は平等だ。前世の俺はそう思っていた。一日二十四時間、一年三百六十五日、誰にでも同じだけ与えられる。だからこそ、どう使うかが重要なのだと。


 だが、赤子にとって時間は違う。一日でできることが増える。一週間で世界が変わる。一か月も経てば別人だ。


 そして、数か月が過ぎた。


 まず言っておこう。ハイハイという移動手段は革命だった。本当に革命だった。以前の俺は、寝かされる、待つ、以上。囚人と大差なかった。しかし今は違う。移動できる。好きな場所へ行ける。探索できる。素晴らしい。人類の進歩である。


「ルークー?」


 バーバラの声がした。俺は机の下にいた。暗い。落ち着く。そして、家の構造がよく分かる。


「またそこ!」


 見つかった。抱き上げられる。解せぬ。


「本当に目が離せないわね」


 それは失礼だ。俺は調査していただけである。学術的探究心だ。……まあ、机の脚を舐めていた件については反論できないが。


 もう一つ変わったことがある。言葉だ。まだ文章は無理だが、単語なら少し出る。


「まー」


「はいはい、お母さんね」


 バーバラが嬉しそうに笑う。実際は違う。発音練習である。偶然近かっただけだ。だが、あまりにも嬉しそうなので訂正できない。そもそも訂正する言語能力もない。


「まー!」


「うんうん」


 抱き締められる。……まあ、悪くない。


 そして、一番大きな変化は魔力制御だった。以前は身体が未発達すぎた。だが今は違う。神経も成長した。感覚も鋭くなった。


 夜、誰も見ていない時間、俺は毛布の中で集中する。魔力を一か所へ集める。循環させる。流れを整える。前世の感覚が戻ってきている。まだ弱い。だが確実に。


 もし今後に備えるなら、まず必要なのは力だ。知識はある。経験もある。足りないのは肉体だけ。そして、今度は間違えない。力だけの人生にはしない。だが、力そのものは必要だ。


 守りたいものができたから。


 バーバラ。オリヴィア。この家。この日々。失いたくない。そのために、俺は再び力を求める。今度は孤独のためではなく、誰かのために。


 そんなことを考えていた時だった。窓の外から、小さな雪玉が飛んできた。こん、と窓に当たる。


「ルークー!」


 聞き慣れた声。オリヴィアだ。


「見てー!」


 窓の向こう、彼女の隣には、以前よりさらに巨大化した雪だるまが立っていた。ユキまる二号。いや三号かもしれない。春まで残す計画は、まだ継続中らしい。


 俺は思わず笑った。もちろん声にはならない。だが、確かに笑っていた。


 物語は少しずつ動き始める。赤ん坊だった俺は、もうただ守られるだけの存在ではなかった。これから先、自分の足で世界へ近づいていくのだから。

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