【第48話】ウミの目覚め
「ウミ、起きたの?」
母親が心配そうにこちらを見ている。
岩田ウミは自分が病院のベッドに寝かされていることに気づいた。
体を起こすと、隣のベッドに兄のリクが寝かされている。
「あれ?ウミ、目が覚めたのか。
もっと休んだほうがいいんじゃないか?」
父親が病室に入ってきた。
「お父さん、来てくれてたんだ。」
「……寝ぼけてるのか?お前が入院して、すぐ来たじゃないか。」
父親は自分が入院した準決勝の翌日から仕事を休んで、
病院の近くに泊まり込んで様子を見てくれていたらしい。
離婚した両親がこうして一緒にいるのを見ると、
夫婦ではなくなっても自分たちの親なのだと感じる。
「失礼します。」
ドアをノックして、今度は江波ツキ子が入ってきた。
「ツキ子ちゃん、悪いけど部活の話ならもう……」
「待って、お母さん。あたし、聞きたい。」
ツキ子を遮ろうとした母親をさらに止める。
自分が意識を失ってからどうなったのか。
話を聞いておきたかった。
「今日は、ウミちゃんにお見舞いを預かってきました。」
「え?」
「これまでの対戦相手の皆さんからです。
ウミさんが倒れたと聞いて、心配してくれたみたいですよ。」
「破羅受苦」とプリントされたTシャツ。
ゲームセンターの景品のぬいぐるみ。
プロテイン。
ツキ子は持っていた紙袋から次々に見舞いの品を取り出した。
「……あたしはこのダサいTシャツを着て、プロテインを飲んで、
ぬいぐるみを抱いて寝たらいいのかな?」
「あはは。まあ、大事なのは気持ちですから。
それと……」
ツキ子はウミのほうに近づくと、紙袋をベッドの脇に置きつつささやいた。
「袋の中にリクくんからの手紙が入っています。
後で読んでください。」
「お兄から、あたしに……?」
話しづらそうな雰囲気を察してくれたのか、
両親は病室から出て行った。
ドアが閉まると、ツキ子はいすに腰掛けてウミに向き直る。
「決勝戦は明日です。
出るか出ないか、リクくんはウミちゃんに決めて欲しいみたいです。」
「手紙って…… ヘッドセットは?」
「今は…… ヘッドセットでリクくんと話すことはできません。
本来のツキカゲのAIに戻りました。
実は、準決勝の途中から昨日まで、あなたの体で意識がリクくんになってたんですよ。」
「ええっ、それってどういうこと!?」
ウミは思わずツキ子の肩をつかむ。
「私も…… 誰も、これ以上はわかりません。
ただ、これからどうなるかわからないからこそ、
リクくんはウミちゃんに手紙を書いたんだと思います。」
ツキ子はうつむきがちに目をそらして言った。




