【第49話】手紙
俺がエロサイトにアクセスしたときのことを覚えているか?
お兄の手紙は衝撃的な書き出しで始まっていた。
ツキ子姉に怒られた時のやつね……
正直忘れかけてたけど、思い出しちゃったよ!
実はあのとき、俺は何も感じなかった。
興奮とか衝動とか、そういうものが全然なかった。
疲れてるのかなとか思ったけど、違うんだ。
性癖が変わったとか、そういう話が来るんだろうか。
あたしは何を読まされているんだ?
ウミ、俺は死んでるのかもしれない。
コンピューターに入ってた時もすごい変な感じだったけど、
今はコンピューターなしでお前の体に入って、お前の体で手紙書いてる。
幽霊が取り付いてるみたいじゃないか?
エロサイトで興奮しなかったのも、俺が死んで、幽霊になってたからかもしれない。
ふざけてるのか真面目なのか、はっきりしてよ。
気持ちの行き場がないじゃない……
決勝戦だけど、出るかどうかはお前が決めて欲しい。
ここまで巻き込んでおいて悪いと思ってる。
でも準決勝の後のお前の体、ボロボロだったし、
俺、たぶん…… もう元には戻れないから。
「何なのよ、もう!」
あたしはお兄の手紙を読むのをやめると、くしゃくしゃに丸めて投げ捨てた。
違う。こんなのは違う。
あたしが欲しかった言葉じゃない。
あたしが信じたかった未来じゃない。
あたしはこんなことのために戦ってきたんじゃない。
「ずるいじゃん…… 勝手にあきらめないでよ。」
「うむ、まったくけしからんな。岩田リク2年生よ。」
「うわああっ!いつの間に…… 勝手に部屋に入ってきてるのよ!」
ワガハイ部長が、いつの間にか部屋にいて、
お兄の手紙を広げて読んでいた。
「真黒くん、ダメですよ。女の子の病室に黙って入ってきたりして……」
「まあ、固いことを言うな。我々の中ではないか。」
「あたし、ロボコン部の正式な部員ですらないんですけど……」
「そんな口をきいていいのかな?岩田ウミ1年生、貴様の兄の命の恩人に。」
「真黒くん、何か知ってるんですか?」
「いや…… だが、元より異常な状況ではあった。
異常の中身がSFではなくオカルトだとわかっただけのことだ。
ならばその方向で解決策を考えるまでよ。」
眼鏡の真ん中を中指でくいと押しながら語る。
「そんな都合のいいこと…… 」
「まあこれは、我輩の都合だ。」
ワガハイ先輩があたしの弱音をさえぎって続ける。
「我輩は野望のため、貴様ら手駒を最大限利用する。
そのために必要なことなら何でもしよう。」
「あたしがあなたの手駒として決勝戦に出るかなんて、もうわかりませんよ?」
「まあ…… そうだな。もはや貴様自身にゆだねるしかあるまい。
わかった上での言動だ。」
「恩に着せよう…… ってことですか?」
「そう取ってもらっても構わん。」




