【第47話】航ジン
「えっ、ゲッコウ、壊しちゃったんですか!?」
電話口で江波ツキ子は、珍しく大きな声を出した。
「うむ、そういうわけで至急、部室に来てくれ。」
「決勝までに直せるかなんて、わかりませんよ?」
「直すのではなく、ゲッコウのデータを取り出してツキカゲに使うのだ。
せっかく航ジン一年生が取ってくれたデータだ。」
「…… 一年生を自分の都合で利用したりして、罰が当たりますよ。」
「いや、奴自身の意思で、最終的に自らの機体が壊れるまで戦ったのだ。
そこまでとは我輩も思っていなかった。」
「えっ……!」
岩田リクにあこがれてパイロットを志望した彼。
その妹のウミに負けて県大会に一戦も出場できなかった彼。
しばらく自分たちに姿を見せなくなっていたが、ゲッコウの操作練習をしていたのは知っていた。
いわば捨て石のような役回りは本意ではなかっただろう。
「そういうことなら…… 使わないわけにはいきませんね。」
「ああ、決勝に向けてこれ以上ない手向けだろう?」
「真黒さん、江波さん、なんかいい感じでまとめてますけど、
俺普通に真黒さんの横にいますんで!」
思わず割り込んできた航ジンの声に、江波ツキ子は笑った。
なんとたくましい、頼もしい後輩なのだろう。
その気持ちに応えるため、自分もできることをしなければなるまい。
とはいえ、リクとウミたち兄妹のことは心配だった。
心身ともダメージが残っているのは明らかだ。
(今回はさすがに…… 真黒くんよりリクくんとウミちゃんの気持ちが大事ですね。)




