【第45話】AIじゃない
ウミはリクと隣合った病室に兄妹そろって入院となった。
準決勝後に会場で倒れたきりだ。
「リクくんだけでなくウミちゃんまでこんなことになるなんて……。」
機堂高校ロボコン部の部室。
江波ツキ子のつぶやきに応えるものはいない。
関わった生徒が兄妹そろって意識不明になったため、ロボコン部は準決勝の翌日から活動休止になっていた。
ツキ子は部室で一人、壊れたヘッドギアを直していた。
ツキ子が岩田リクに声をかけたのは、年下の幼なじみを励ましたい気持ちからだった。
彼が幼いころからやっていた空手と装着型ロボットの相性は思いのほかよく、強かった。
自分が作ったロボットと彼が試合に勝つのがうれしかった。誇らしく思った。
自分がいつしか彼自身にも惹かれ始めていたことを自覚した矢先、あの事故があった。
部長の真黒に相乗りするように妹のウミをロボコンに誘ったのは間違いだったのではないか。
リクとロボコンに対するエゴのために、彼の妹を利用してしまったのではないか。
AIでも超常現象でも何でもいい。
自分の迷いに対する答えが欲しい一心でヘッドギアを直した。
ヘッドギアの起動音。直ったか。
すかさずスイッチオン。
「こんにちは、マスター。私はツキカゲです。」
思わずヘッドギアを机に置いて後ずさる。
聞こえてきた音声はリクのものではなかった。
いや、だが、これだ。
これが本来、自分が作成したAIの音声だったのだ。
では、先日までのアレはいったい何だったのか?
リクは今、どういう状態なのだろうか?
衝動を抑えきれずツキ子は病院に向かった。
病院に着くと、ウミが目覚めていた。
ベッドの脇に立ち、眠り続けるリクを眺めている。
「ウミ…… ちゃん?」
いや、違う。
呼びかけてすぐ、こちらを振り向いたウミの雰囲気でわかった。
強烈な違和感。
「ツキ子さん、こうして自分を見下ろすのは不思議だね。」
リクの人格がウミの体に宿っていた。
ヘッドギアなしで。
「ウミの体、こんなボロボロに…… 俺の責任ですね。
特にこないだの試合は無茶しすぎました。」
ウミは手足を痛めて包帯を巻いていた。
西の攻撃を受けてではない。
自分の攻撃の反作用が原因だ。
女子の体ではあの戦いかたに耐えられなかった。
「あのときはウミのためと思ったけど、全然ですね。
ロボコンをやるにしても、あいつ自身がやらないとだめだ。」
「リクくんの体に…… 戻れないんですか?」
そしてまた、自分の体でロボコンをやればいいじゃないか。
「そもそも、今の俺は何なんでしょう?
岩田リクの魂が妹に宿ったのか、岩田ウミが作り出した兄みたいな別人格なのか……。」




