【第39話】見舞い
「いや、久しぶりにお母さんから連絡があったと思ったら、リクが意識不明だなんてなあ。」
主治医の先生の説明を聞き終えて、父が言った。
お兄の入院している病院とはいえ、家族で集まるのは久しぶりだ。
「とりあえず命には別条がないものの、いつ目が覚めるかはわからないらしい。」
淡々とした口調で絶望的なことを言う。
こういうところは相変わらずだ。
「で、それがリクと会話ができるっていうヘッドギアなのか?」
私がうなずいてツキカゲのヘッドギアを渡すと、
父はそれをかぶってお兄と会話し始めた。
その様子を見ながら、母が私に話しかけてくる。
「これで何かわかるといいんだけど……。」
確かに、私も少し期待する。
父の仕事はロボット設計者だ。お兄の状況についてあたしたちよりはわかるはず。
「いや、これダメだ。全然わからないな。」
ヘッドギアを外した父はあたしたちの期待をあっさり否定した。
曰く、似たような現象というのは世界中を見てもないらしく、理屈も通らないらしい。
やはりお兄の精神がヘッドギアに宿ったとか、超常現象の類ではないかということになった。
「まあとりあえず、今はそのヘッドギアだけが頼みの綱だ。大切にしろ。」
病院で両親と別れてから、あたしは空手部の稽古に顔を出す。
自分の都合で休部扱いにしてもらっておいて勝手だが、ここ数日は男子部員とのスパーリングをさせてもらっている。
西アスナさんとの準決勝に備えてのことだ。
(ウミ、大丈夫か?)
休憩していると、ヘッドギアのお兄が話しかけてきた。
今、ツキカゲはヘッドギア以外ロボコン部の部室だ。
ツキ子姉とワガハイ先輩が準決勝までに何か考えてくれるらしい。
「いや、きついよ……。」
息を切らしながらあたしは返事をする。
スパーリングということでかなり手加減してくれているはずだけど、男子相手はやはりきつい。
「お兄、去年は西さんに勝ってるんだよね。
あたしでも勝てそうな秘策とかないの?」
(……色仕掛けとか?いや、無理か。)
「アホか!できてもしないわ!」
妹に何をさせようとしてるんだ、この兄は。
(あとは…… できるだけ空手のルールで戦わないほうがよいかもな。
ほら、ロボコンってわりと何でもありだし。)
「プロレスの技かけろ、とかって言うんじゃないでしょうね?」
(そこまでは言わないけど、例えばさ……。)




