【第35話】県大会3回戦 その3
前後左右に重心を動かし続け、狙いを定めさせない。
リクの助言通りウミはステップを刻み続けていたが、この戦いかたは疲れる。
一方で、ハイロウを操作するユウホも焦り始めていた。
「バッテリーが減り始めたっスね……。」
ドローン型のハイロウは戦闘中飛び続ける。
軽量化の工夫はしているが、それでもバッテリー消費が激しい。
それにゴム弾にも限りがある。
戦いは短期決戦の様相を呈してきていた。
「岩田ウミちゃん、ちょっと痛い思いさせちゃうっスけど、
これ試合なんで、ごめんね。」
ハイロウからゴム弾が放たれる。
上ではなく下に。
頭のコアではなく、足を狙ったショットだ。
ヒット。ヒット。
数発がウミの足をかすめる。
「きゃっ!」
ダメージはそれほどでもないが、ステップのリズムを崩され、
ウミは足元の岩につまずいた。
倒れてしりもちをついたところにハイロウが迫る。
「ちゃちゃちゃ…… チャーンス!」
だが、一瞬後に大きなダメージを受けたのはハイロウのほうだった。
ユウホのヘッドギアの映像表示がブラックアウトする。
「魔神くん!?」
「…… やられた!美少女だと思ってたのに恐ろしい相手っス……。」
かろうじてコアは守ったものの、取り付けられていたカメラが壊されていた。
岩山に模した試合会場にはいくつも石が落ちていた。
ウミは転んだとき、たまたま近くにあった石を拾い、ハイロウに向かって投げたのだ。
「魔神……。」
「くそっ!負けかよ。
レーザーセンサーだけじゃ、もう……。」
紅蓮台のロボコン部員たちにあきらめムードが広がる。
「魔神くん…… ユウホくん。
あなた、ドローンの天才でしょ?」
「え?そりゃ……。」
「だったら、行けるわ。
レーザーセンサーだって周りの地形と対戦相手をとらえられる。」
なんてこと言うんだ、この女は。
「いや、カメラ映像なしでドローン操作をして戦えなんて、
無茶もいいところ……。」
「戦えなんて言ってない。勝って!」
ユウホの体に冷たい稲妻が走った。
中学三年生の冬、初めてサユキが家を訪ねてきたときと同じ、いやそれ以上の感覚。
「サユキ先輩……。」
そこまで俺に賭けてくれるんですね。
「だったら、あんたが俺を勝たせてください。」
「それ、どーゆーこと?」
「俺が勝ったら先輩のパンツ見せてください。」
「…… いいよ。勝ったらね!」




