【第30話】模擬戦 その4
岩田さん、よけるのがうますぎる。
県大会で見てはいたが、思っていた以上だ。
航ジンはあせっていた。
攻撃を出し続けていればいつか当たるのか。
たぶんノーだ。
県大会で論弩高校がそれをやったが、当たったのは結局、
ロケットパンチの一発だけだった。
普通のパンチやキックじゃ、岩田さんには当たらないな。
少し危険かもしれないけど……!
ゲッコウが動いた。
ウミとの距離をまた詰めて手を伸ばしパンチ…… ではない。
ウミの腕をつかんで体を持ち上げた。
「ケガさせちゃったらごめんね。」
ゲッコウはそのままウミを投げる。
ウミはダメージをさけるため体をひねり、肩から地面に落ちる。
「痛っ!」
「今がチャンス!」
ゲッコウはすかさず手を伸ばし、ウミの後頭部のボタンを押そうとしたが、
ウミは地面に倒れたまま体を回転させ、それをかわした。
起き上がって距離を取る。
「今のはうまくいったと思ったんだけど、押させてくれないんだね。」
「…… びっくりしたし痛かったよ。」
「それはごめん…… ね!」
ゲッコウがまた動いた。距離を詰めて腕を伸ばしてくる。
さっきは少し思っていた動きと違って驚いたが、掴みも突きも基本的には同じだ。
ウミは冷静にゲッコウの腕を外側からパリイして軌道をそらす。
それなら、とゲッコウは足を後方にスライドさせる。蹴りを放つ予備動作だ。
それにはもう慣れた。予備動作が大きすぎだよ。
ウミは先ほど投げを受けて、もう攻撃を受けたくない気持ちから、
相手の動きに対する集中力が上がっていた。
「見切った!」
ゲッコウの足が後方にスライドしきった瞬間、
ウミはそこで空いたゲッコウの足の付け根のスペースに自分の前蹴りを差し込んだ。
ゲッコウは足が戻せずバランスを崩すと、
そのまま背中から後ろに倒れた。
「くそっ!」
航ジンは反射的にゲッコウの首を曲げさせて受け身を取り、後頭部のボタンは死守する。
だが、ウミはそこに追撃を仕掛けた。
ゲッコウの体に飛び乗り、そのまま顔面を踏み抜く。
ゲッコウの頭が地面に叩きつけられ、ボタンが押されてゲームセットとなった。




