【第28話】模擬戦 その2
「あわわわわ…… 航くん、なんてことを……。」
「はっはっはっ、言うではないか。
面白いぞ、航ジン一年生!」
あわてるツキ子と真黒。
航くん、本気なんだ。
それに比べて、あたしはどうなんだろう。
ゲッコウとつかみ合いながら、
ウミは考えていた。
(航くん、強くなったんだなー。
でもまだまだ。)
ウミの、というかツキカゲの足が勝手に動いた。
お互いにつかみ合っている状態からゲッコウの腹に鋭く前蹴りを放つ。
当たった。
ゲッコウは手を放して後退。
「つかみ合った状態からの前蹴り…… 岩田先輩ですね。」
航がすぐに気が付いた。
ウミも見たことがある。前に兄のリクが試合で見せた動きだ。
(ウミ、チカラ勝負だと不利だ。技を使っていこう。)
「お兄、この試合は手出ししないで。」
(お?)
「航くん、本気なんだ……。
でもあたしは本気じゃなかった。今でもわからない。
けど、この試合は自分のチカラで戦わなくちゃいけない気がする!」
(お、燃えてきたなー。
でもチカラじゃなくて技で戦うんだぜ。がんばれ。)
体の感覚が変わる。
ツキカゲのサポートレベルが下がったのだ。
無意識のうちに兄が自分を助けてくれていたことを感じる。
「航くん、この試合に勝ったほうが県大会3回戦に出る。
それでいい!?」
「岩田さん…… そうこなくちゃね!」
ウミが言うと、航が笑った。
そしてまたゲッコウが加速し、距離を詰めてくる。
打撃戦でまともに戦ったら、空手黒帯のウミに勝ち目がない。
距離を詰めて、あくまでチカラ勝負に持ち込むのが航の作戦だった。
「おおおおお…… いいぞ!
航ジン一年生、考えているな!
我輩は貴様に過去イチ感動しているぞ!」
「感動している場合ですか!
このままだとウミちゃんとリクくんが……。」
「はんっ、何をあわてておるのだ。
航ジン一年生が岩田ウミ一年生を上回るなら、航ジン一年生を使うだけのこと。
A案とB案が入れ替わるだけの話だ。」
「…… それも勝利のためですか。」
「そうだ!勝ってこその勝負。
勝つためのロボコン部だ。」
本当にそうなんだろうか。
もちろん試合には勝って欲しい。優勝したらうれしいだろう。
でも、勝つことだけが目的なのか。
みんな同じ気持ちなのだろうか。




