【第27話】模擬戦 その1
機堂高校の校庭で二体のロボットが対峙していた。
岩田ウミがまとうツキカゲと、航ジンが操るゲッコウ。
県大会3回戦を次の週末に控え、部内での模擬戦をするのだ。
「お兄、準備はいい?」
ウミは兄のリクに話しかけた。
かぶっているヘッドセットから返事が聞こえる。
(いいんだけど、なんかさ……。)
「なんか、何?」
(ウミ、お前太った?太ってなくても筋肉落ちた?
サポーターから感じるんだけど、なんか…… お前の体柔らかい。
筋肉がイマイチ。)
「なっ…… お兄のバカ!エロ!」
兄のセクハラに怒るウミ。
通信で会話を聞いていた江波ツキ子がフォローした。
「リクくん、ウミちゃんは女の子ですから、
男子の空手選手みたいには筋肉付きませんよ。」
それにしても。
ツキ子は思う。
それにしても、ツキカゲのサポーターを通して体の筋肉を感じ取っているのかと。
リクはますますロボットと同化しているのではないか。
「はっはっはっ、さすがは岩田リク二年生だ!
我輩を飽きさせないな。」
部長の真黒が高らかに笑う。
元エースの岩田リクがロボットのツキカゲに宿るという異常事態だが、
この男は早くもそれを受け入れ、適応していた。
「素人同然の岩田ウミ一年生に実戦経験を積ませるための模擬戦だったが、
岩田リク二年生がおるなら遠慮は無用だ。
航ジン一年生、思い切りぶっ飛ばしてこい!」
「……おっす。」
真黒の檄に応える航は、若干緊張した面持ちだ。
先日の県大会2回戦に向けて特訓はしたが、本番は結局ウミに譲ったので、
彼こそ実戦経験という意味ではゼロだった。
「では始めいっ!」
真黒の掛け声で模擬戦が始まる。
ウミとゲッコウはお互いの間合いに入るやや手前まで距離を詰めた。
「航くん、確か隣のクラスだったよね。よろし…… わっ!」
ゲッコウが前蹴りを放った。
挨拶をさえぎられたウミは半歩後ろに下がって蹴りをかわす。
「ちょっと、今話してる途中だったでしょ!」
「へえ、あれでノーダメージとはさすが……。」
ウミの怒りなど意に介さず、航は感想を口にした。
「岩田さん、さすがだよ。さすが岩田先輩の妹だ。
でもさ、俺もロボコン部に入ってから練習してきたんだ。
特に岩田先輩が事故に遭ってからはね。」
「……航くん?」
「君の事情も、部長や江波先輩が君を推す気持ちもわかる。
でも、俺は納得してない。
俺だってロボコンで戦いたくてこの部に入ったんだ!」
ゲッコウが両手で掴みかかってきた。
ウミは同じようにそれを受け、つかみ合う姿勢になる。
だが、押される。じわじわと。
「ぐっ……!」
「パワー勝負なら俺に分がありそうだね。
岩田さん、君は本当はロボコンなんて興味ないんだろ?
だったら俺とゲッコウに、エースを譲ってくれよ。」




