【第23話】県大会2回戦 その3
「えっ、機堂の選手って、
ヌクドナルドで井出くんにジュースかけた子なの!?」
根緒は井出からの通信を聞いて笑った。
おっと、まずいまずい。
これから試合なのだ。気を引き締めないと。
相手は見たことのない女子選手だが、
岩田リクと同じようにツキカゲを身にまとって空手の構えを取っている。
ただ者ではなさそうだ。
「相手が…… 本当にロボットだ。
こんなの殴って大丈夫なの?」
岩田ウミは戸惑っていた。
対戦相手は搭乗式のヒト型ロボットと聞いていたが、
自分と同じ高校生が中に乗っているだけあって大きい。
とても頭に上段蹴りが当たる高さではなかった。
それに、金属のボディは堅そうだ。
こんなものを殴ったら骨折するんじゃないだろうか。
「来ないの、かな?
じゃあこっちから…… 井出くんのかたき取っちゃおうかな!」
根緒が動いた。ロンダートの巨大な右腕が上からウミに叩きつけられる。
だが当たらない。
ウミは腕で頭を守りつつ、半歩下がってロンダートの腕を避けた。
続いて左足の蹴り。
だが、これもウミは蹴りと反対方向に飛びながら腕でガードした。
避けられた。来る!
根緒は反撃を予想し、ロンダートの両腕を頭の前で交差させ、コアを守る姿勢を取った。
「……ん?」
だが、来ない。
根緒がロンダートのカメラに映る相手選手の姿を確認すると、
何故か蹴りを受けた位置からさらに下がって距離を取っていた。
二連撃を防いだのは見事だったが、攻撃の仕方がわからないのかもしれない。
代打の選手なのは明らか。
まさかロボコン素人なのか。
「わからないけど、チャンス!」
根緒もロボコン3年目にして、奇跡的に1回戦を勝ち抜いてここにいるのだ。
余裕はない。
相手が反撃してくる前に一気に押し切る。
パンチ、パンチ、キック、パンチ、パンチ、キック、パンチ、パンチ。
これだけ攻撃を続けてもロンダートはバランスを崩さない。
井出の調整は万全だ。
だが、当たらない。
反撃はしてこないが、機堂の女子選手はすべての攻撃を受け切っていた。
「ジュースちゃん…… それはちょっと、かわいくないんじゃない!?」
渾身の踏みつけ。
だが、ロンダートの足は床を踏みつけただけだった。
「ウミちゃん、すごい…… さすがリクくんの妹!」
相手の猛攻をすべてかわしたウミを称賛するツキ子。
「むう、まずいぞ。
岩田ウミ一年生、集中力を欠いていないか……」
対称的に、真黒は苛立たし気につぶやいた。




